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最強カップルのイチャイチャVRMMOライフ  作者: 紙城境介
4th Quest - 最強カップルのVR学園生活

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第241話 浮気にならない裏技


 ――夜に(・・)()()()()()()()()()()()()()()()()()()って――言ったもんね!


 俺のアバターで、チェリーのアバターになった俺を壁ドンしながら告げたUO姫の意図に、俺はすぐに思い至った。

 思ってたんだ、怪しいなって……! 今回はずいぶん潔く引き下がるなって!

 このためか!? こうなるのを見越してチェリーを煽ったのか、あのとき!


「まさかあの時点で、今夜こうなることがわかってたってことですか!?」


 UO姫のアバターになったチェリーは、背後からUO姫(in俺)に詰め寄って、


「虚面伯の魔法で、私たちのアバターが入れ替わってしまうって! バリバリの黒幕側じゃないですか!!」


「人聞きが悪いなぁ。ミミはただ、二人を紹介する代わりに、アバターを入れ替える相手を指定させてって言っただけだよぉ?」


「それを黒幕と言わずして何と言うんですか!」


「っつーか俺の顔と声でその喋り方すんな! きっしょい!!」


 お前のアバターじゃねえと許されねえ喋り方なんだよそれは!

 俺はUO姫の顔(つまり自分の顔)をぐいぐいと押しやり、チェリーは背後から飛びついてUO姫の肩を引っ張った。

 が、UO姫のアバターは俺のもの――ステータスも俺が鍛え上げた、STRとAGIに大きく振ったものになっている。高レベルとはいえ後衛職のステータスしか持たない俺たちではビクともしなかった。

 UO姫はにまにま笑いながら、首の筋力だけで俺の手を押し返してくる。


「約束したもんね? 配信が終わった後はチューするんだもんね?」


「それを言ったのはあいつだっての!」


「今はキミだもんね~」


「アバターの話だろそれはぁ!!」


「――ちょ・う・し・にぃ――」


 そのときだった。

 背後でチェリーが杖を振りかぶった。


「――乗るなっ!!」


 聖杖エンマが勢いよくフルスイングされ、UO姫の顔面が横ざまに吹っ飛ばされた。

 ひえっ……。

 目の前で自分の顔がひしゃげるのを見せられるのは、そこそこの恐怖体験だった。さらに、小学生みたいに背が低い女の子が、顔を赤くし、凶器を手に持ち、はあはあと肩で息をしているのも、やっぱりそこそこの恐怖体験だった。

 が、今のところ、PK禁止の《法律》が解除されているという報告はないので、殺人事件が起こることはない。

 床に薙ぎ倒されたUO姫は、頭を押さえながらのそりと上体を起こした。


「痛いなぁ、もお。ミミは約束通りにしてるだけなのにぃ」


「恣意的解釈が過ぎますよ! 大体、あなたは私の顔とキスして楽しいんですか!?」


「……んー。まあ、確かに? チェリーちゃんとチューしても何も楽しくないかもねー」


 ……いや、お前本気だったろ。

 ノリノリでチェリーの顔とキスしようとしてただろ。

 結構頻繁に思うんだが、お前、俺よりチェリーのほうが好きじゃね?

 UO姫は立ち上がると、「仕方ないなあ」と呟いて、


「じゃあいいよ。しなよ、二人で」


「……は?」


「……へ?」


 UO姫は悪戯っぽく笑いながら、すすっと俺に近付いてくる。

 思わず仰け反る俺を捕まえて、耳元にそっと口を寄せる。


「(ケージ君。チャンスだよ?)」


「(は?)」


「(今なら、浮気じゃないよね?)」


「……………………」


 こいつっ……マジで、どういう頭してたらそんなこと思いつくんだ!?


「(ミミの顔とか、腰とか、おっぱいとかぁ……どこを触っても、ほら、中身はチェリーちゃんなんだから)」


「(いや、でも見た目はお前だろ!)」


「(ケージ君は一途だもんね~? たとえチェリーちゃんがどんな姿になっても、きっちり愛してあげないとね~?)」


「(んな方便――)」


「(ほらっ!)」


「うわっ!?」


 どんっと背中を強く押された。

 虚弱なチェリーのアバターは簡単にふらついて、同じく虚弱なUO姫のアバター、つまりチェリーにぶつかった。


「きゃっ……!?」


 チェリーは可愛らしい悲鳴を上げながらたたらを踏み、俺もろとも背後のベッドに倒れ込む。

 何とか俺は手を突いたが、チェリーを組み伏せる形になってしまった。

 少し肘から力を抜けば、顔同士がぶつかる距離。

 肩で切り揃えられた黒髪が、さらりとシーツの上に流れている。桜色の唇がかすかに開き、薄く呼気を吐いている。

 赤ん坊のように柔らかそうな頬はほのかに赤く色づき、長い睫毛の向こうから、宝石のような瞳が俺を見つめていた。


 ……認めるのは癪だが、UO姫のアバターは本当に出来がいい。

 意思とは関係なく手が伸びてしまいそうなほどの吸引力がある。それでいて、誰のものにもなりそうにない神聖さがあり――そして同時に、あなたにだけは許してあげると、優越感と射幸心をくすぐってくる。

 いつもならチェリーの顔が脳裏を過ぎるが……今はこいつが、チェリー本人なわけで。


「ちょ……」


 誤魔化すように困り笑いをして、チェリーは弱々しく言う。


「さすがに……自分の顔に迫られると、気色悪い、んですけどぉ……」


「だったら目閉じてなよ」


 UO姫が隣に寝そべり、子供を眠らせるように手でチェリーの目元を覆った。

 それから、口を耳元に寄せて、


「……代わりに、ケージ君の声でサービスしてあげる♪」


「うえっ……?」


 UO姫はひそひそと何か囁き始める。

 俺にははっきりと聞き取れない。

 だけど、チェリーは見る見る顔を赤くして、「うう~!」と悶絶しながら身を縮こまらせた。


「や、やめっ……やめ~っ……!!」


「(本当にやめていいのか? 欲しいんだろ。素直に言えよ……)」


「あううう~っ……!!」


 チェリーが身をよじるたび、肉感的な身体のそこかしこがぷるぷると揺れる。

 俺は思わず喉を鳴らした。

 UO姫の見た目とチェリーの初心さが合わさって、言い知れようのない色気を醸し出していた。


「……ふふっ」


 その艶姿に視線を釘付けにされていると、UO姫が意味ありげにこっちに目を向けて――おもむろに、俺の手首を掴んだ。


「え? おいっ……!」


 抵抗は無駄だった。

 力ずくで手を動かされ、チェリーのセーラー服の中に潜り込んでいく。

 柔らかなお腹と、腰つきの曲線を指でなぞりながら、胸に向かって這い登らされる。


「……あっ……」


 なめらかな肌越しに、指先があばら骨に触れた。

 1本、2本……確認するようにゆっくりと触るたびに、チェリーはぴくっ、ぴくっとかすかに震えた。

 やがて、手が何かに阻まれて、止まる。

 仕様上、感触はない。けれどわかった。手のひらからこぼれるほどの乳房が、俺の指をむにりと食い込ませて、受け止めているのだと。


「……んっ……ふっ……」


 俺の手を取ったUO姫は、下乳に沿うようにして横に移動させた。

 手は腋の中に滑り込み、肌の薄い敏感な部位を無遠慮にまさぐる。


「あうっ……あーっ……くすぐった……ぁふ……」


 そうしているうちに、セーラー服はすっかりまくれ上がっていた。

 裾が胸のトップのところまでずり上がり、白い膨らみの下半分を、半月状に零れさせている。

 あと1センチでも裾を上げれば、規制の光が胸元を覆い隠していただろう。UO姫は自分の身体であるがゆえに、光が出ないラインを正確に見極め、ギリギリを攻めているのだ。

 ……あるいは。

 裾が引っかかるような、突起物が、……まさに、そこにあるのかも。


 これがリアルなら、心臓が鳴りすぎて苦しかったかもしれない。

 事実、息が荒くなっていた。現実の俺の身体の興奮が、アバターにまで影響しているに違いなかった。


 手で目隠しをされたチェリーも、顔を紅潮させて、曇りそうなくらい熱い呼気が零していた。

 そして――


「……先、輩……っ」


 切なげに揺れた、ただ一言。

 そのたった一言で――俺の中の、何かが切れる。

 吸い寄せられるようだった。

 かすかに濡れた唇に、自分の顔が近付いていき、




「でゅふっ……でゅふふっ……」




 気持ち悪い声が、横から聞こえた。


「……………………」

「……………………」


「あれ? もう、止まらないでよ! ほらほら、舌出して舌!」


「「キモい!!」」


 ベッドからUO姫を蹴り出した。


「気持ち悪いわ! できるかお前みたいなのが横にいて!」


「出る気分も出ませんよ! 男の声になってる分、尚更ただのキモオタでしたよ!」


「何よもう! 悪いっていうの!? リアル最強美少女と自分が考えた最強美少女がキスするのに興奮したら!」


「「悪いわ変態!!」」


「悪くないもん! 普通だもん! アバターなんてみんな、自分の性癖の塊でしょー!?」


 わからんでもないが! 自分の性癖に人を巻き込むなっつーの!


「こうなったら……」


 UO姫はゆらりと起き上がると、俊敏な動作でベッドに飛び乗ってきた。

 そして俺たちが対応できないでいるうちに、がばっと覆い被さってくる!


「うわっ……!」

「ちょおっ……!」


「ミミが二人とも食べちゃおっかな~? くふふふふ!」


 俺とチェリーを丸ごと組み伏せて、UO姫は両手をわきわきさせた。


「おいやめろSTRが勝ってるからって!」


「元のアバターに戻ったらケージ君にもできるよ? ふふふ。美味しいと思うな~? ミミとチェリーちゃんのどんぶり!」


「先輩はあなたみたいに下半身に脳があるわけじゃないんですよ!」


「そんなことないよぉ。ケージ君にもちゃぁんと立派なのが付いてるんだから! チェリーちゃんも見たいでしょ?」


「そ、それは……」


「やめろボケ! 反応に困る!」


 俺はUO姫の顔に枕を投げつける。

 このままだとマジでどえらいことになるぞ! この力を持ったサキュバスを、一体どうしたら――


 そのとき、ポコンと目の前に通知ウインドウが出た。

 配信の開始通知だ。

 配信者は――雨矢鳥フラン。


「は?」


「フランさん……?」


「ありゃ。始まっちゃった」


 UO姫は唇を尖らせ、


「まあそんなの気にしないで、ミミたちはいっぱい楽しも?」


「できるわけないでしょ! あなた、何を知ってるんですか!? フランさんと虚面伯は何をしようとしてるんですか!?」


「んもう。真面目だなあ、チェリーちゃんは。まあ喘ぎ声は聞けたし、時間切れかぁ」


「あえっ……いでないですよ!」


 いや、喘いでた……。めっちゃ喘いでた……。

 UO姫は「はあ~」と残念そうに溜め息をつき、俺たちの上からどく。


「あの二人が何をしようとしてるか、ねー。まあ、見たらわかるんじゃない? その配信をさ」


 俺はチェリーを見ると、真剣な顔でうなずいた。……まあ、表情が真剣なだけで、まだちょっと赤いままなんだが。

 通知をタップし、配信画面を開く。

 と、ちょうど映像が映り、声が聞こえてきた。


『映ったかい?』


『うん、今ちょうど』


 現れたのは、天初百花のアバター――つまり雨矢鳥フラン。

 そして、黒セーラーに漆黒の外套と帽子、真紅の髪を持つ女――虚面伯だった。

 こいつら……どこにいる?

 どこかの洞窟、か……?


『さて諸君、お騒がせしているところすまないね』


 虚面伯が前に出てきて、学帽を脱いで頭を下げた。


『ここはひとつ、真犯人であるところの僕たちが、説明枠を取るべきだろうと判断した次第だ』


 上がった顔には、胡散臭い笑みが浮かんでいる。

 何を考えているかわからない――仮面のような笑みが。


『これより、僕が施した魔法、《ジ・インフィニット・フェイス》についてご説明しよう』


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