第203話 VS.《呪王》 - Part8
瞼の裏の暗闇に浮かんだHPゲージが、完全に尽きていた。
HPゼロ。
人魂状態になった俺の身体は、しかし感覚だけは残っている。
手も、足も、動かせる。
しかしそれは他人には見えない、いわゆる幽霊みたいなもので、その場から動くこともまた、できなかった。
他の奴らは、どうなったんだろう。
瞼の裏の簡易ステータスに表示されているのは、俺の他には、かろうじてHPを残しているチェリーのもののみ。
巡空まいるはクランの生き残りとパーティを組み直してしまっていて表示されていない。
UO姫や火紹、ろねりあたちも言うに及ばず。
暗闇の中の無機質なステータス表示は、屍になった俺と、血のように赤く輝くチェリーのHPゲージしか、見せてくれない。
ひどく心細く感じた。
これは、何度となく得た感覚だ。
MAOのクロニクル・クエスト攻略では、何千、何万というプレイヤーが参加する。
そして、多少のマウントの取り合いはあるとはいえ、基本的にその全員が味方だ――その事実が、最前線に立つプレイヤーの背中を力強く押してくれる。
しかし、最終盤に至れば。
必ず、誰かが先頭に立たされる。
何の恣意もない、誰もが平等な世界であっても、やはり主人公はいるのだと言うように――何千何万ものプレイヤーの先頭に立たされ、この世界の行く末に、そして歴史に責を負わなければならない人間が現れる。
その責任だけは、プログラムではないのだ。
俺はそれを、目の前で初めて、この世界の命が失われたときに、知ったのだ。
――また今度も俺たちなのか、フレードリク?
それとも――
瞼が開いた。
俺は倒れていた。
漆黒の空に、パチパチと火花のようなものが、疎らに立ち上っていた。
瞼を閉じていたのは、どうやら一瞬だったらしい。
《マギシルド》のものと思しきバリアの破片が、空気に散り溶けるのが見えた。
視界の端から、チェリーの怒った顔がフェードインする。
「――先輩っ! なに死んでるんですかっ、もう!」
「……ああ、悪い!」
自分の声が出ていることに、どこか信じられなさを覚えながら、俺は立ち上がった。
手も足も動く。
HPゲージも半分まで回復している。
瞼を閉じていた一瞬の間に、チェリーが蘇生アイテム――《アバターリビルダー》を使ってくれたのだろう。
蘇生直後特有の違和感をアバターの中から追い出しながら、俺は手持ちのポーションを呷った。
すぐそばでチェリーもまたポーションを飲む。
おそらくこいつは《マギシルド》で一命を取り留めたのだろう――ウィザードとプリーストの複合職であるこいつの《マギシルド》は、MAOでもトップクラスの硬度を誇るはずだ。MDF――魔法防御力のステータスだってかなり高い。
それをこともなく貫き、あまつさえ全損ギリギリまでHPを削り取った、闇の柱の一撃。
その結果を、俺たちは目の当たりにする。
メタリックな装甲を漆黒に染め、頭上と背中で黄金の光輪を高速回転させる《堕天魔霊長ケセラシファー》。
それを中心に、ドーナツ状に浮遊する光の足場――そのそこかしこに、青白い人魂が散らばっている。
「ポニータさんっ! 生きてますか!?」
「さっきまで死んでたよ。……ショーコは?」
「死にました! 蘇生させに行きますのでお願いします!」
JK組は運良くろねりあだけ生き残ったらしく、蘇生のために奔走し、
「うわーんっ! 火紹くーんっ! ミミを庇って……!」
「……………………」
「ってまだ生きてるじゃんっ! 硬った! さっさとポーション飲んで! ホラあーん!!」
傷だらけで横たわった巨人騎士の口に、甘ロリファッションのUO姫がポーションの瓶を突っ込んでいる。
そして残る1パーティ、《赤光の夜明け》は――
「……《赤光の夜明け》が全滅してます……!」
「《リビルダー》はまだあるか!?」
「あとひとつだけ!」
「行けっ! 時間は俺が稼ぐ!」
「了解です……!」
去り際にバフを掛け直してから、チェリーは3人分の人魂が固まっているところに走っていく。
俺は魔剣フレードリクを握り直し、《呪王》が乗り込んだ漆黒のケセラシファーを見上げた。
時間を稼がなければならない。体勢を立て直すための時間を……!
続けざまにさっきの闇の柱を撃たれたら全滅は必至だったが、どうやらそれはできないらしい。
両手に巨大なビームソードを携えた機械堕天使は、ゆっくりと身体を回転させて獲物を探す。
回復中の味方を攻撃させるわけにはいかない。ヘイトを稼ぐんだ……!
ケセラシファーの駆体は、純白の巨大なバリアに覆われている。
俺はその表面を、光の床から半ば乗り出すようにして斬りつけた。
――ギィ! と金属が擦れるような音がする。
このバリアは《呪王》のそれだ。ヤツのバリアにはいつも明確なHPゲージは存在しない。亀裂の多さを破壊度の目安とする他にはないが――
「硬てえなっ、くそ!」
バリアには擦り傷がついただけ。
そもそもがレイドパーティで袋叩きにしてもしばらくは保つような耐久力だ。火力が高いほうとはいえ、俺だけで攻撃してもたかが知れている……!
黄金のビームソードがぐわっと持ち上げられる。
ケセラシファーの無機質なカメラが向く先は、ショーコに蘇生魔法を使っているろねりあだ……!
「くっ……!」
間に合わないと知りつつも駆け寄ろうとした俺だったが、そうするまでもなく、振り下ろされたビームソードは硬質な音と共に途中で静止した。
ポニータだ。
左腕に丸い盾を装備したポニーテールの少女騎士が、巨大なビームソードを一人で受け止めたのだ。
「ケージさん!! 今のうちにヘイトを引き剥がして!!」
JKらしからぬ凜とした声に叱咤され、俺は魔剣に魔力を叩き込む。
火炎と風刃が半ば混ざり合って純白のバリアを切り刻んだ。
《風鳴撃》から《焔昇斬》への体技魔法コンボ。ダメージエフェクトが散った点から、ビキリと小さなひび割れが走る。
これならどうだ、ロボット野郎……!!
ぐるり。
と、ケセラシファーの巨躯がこちらに向く。
よおし、いい子だ――お前はこっちだけ見てろ……!
左手のビームソードが逆袈裟に振るわれる。
大きさにそぐわない異常な速度でのそれを、俺はギリギリ横っ跳びで躱した。
反撃してやろうと前に踏み出しかけた足を、慌てて元に戻す。
右の剣での袈裟斬り!
逆向きに跳んで避けるものの、ひやりと冷感が背筋を撫でる。その攻撃範囲で連撃かよ……!
剣があまりに長すぎるため、ケセラシファーの斬撃はドーナツ状の足場の一番後ろまで射程範囲になっている。
だから後退して逃げるということはできない。避けるには剣筋を見切って横に逃げるしかないのだ。
一応、三撃目がないか確認してから、俺は間合いを詰めてバリアを斬りつけた。
もう体技魔法はそうそう使えない。MPの問題もあるし、何よりタゲられている状態でシステムアシストにアバターを任せるのは危険すぎる。身体が自動制御されているときに攻撃が来たら避けようがない。
二撃入れたところでいったん下がり、ケセラシファーの反撃に備えた。
しかし、機械仕掛けの堕天使はぐるりと別の方向を見てしまう。ポニータだ。俺がタゲられている間に攻撃していたポニータに標的が移った!
今度は俺がダメージを稼ぐ番である。バリアに手加減なしの連撃を見舞った。
この繰り返しであの斬撃には対処できるだろう。
問題は別の攻撃パターン……!
ケセラシファーの漆黒の翼が、視界を覆うほどに大きく広げられた。
――ブォウン――!!
巨大な羽ばたきが暴風を生み、俺を薙ぎ倒そうとする。それに踏ん張っているうちに、ケセラシファーの巨躯が空高く舞い上がった。
なんだ!?
見上げた先、高空のケセラシファーが両手の光剣を頭上に掲げる。
直後。
ガンガンガンガンガンッ!! と、何か細長いものが、ドーナツ状の足場全面に渡って突き刺さった。
すぐそばに突き刺さった1本を、俺は観察する。
光でできた杭だった。
光の足場に深々と食い込んだ――まるで、避雷針のような。
「まずいっ――」
警戒が思考になるよりも早く、俺は光の杭から距離を取った。
直後、想像通り。
光と轟音とが、目の前で炸裂する。
落雷だ。
空から雷が落ちてきて、それを杭が吸い寄せた……!
バヴァリッ!! と青白い稲妻が、杭の周囲の床に這う。
触れていれば大ダメージ。近いだけでもダメージと麻痺ってところか……!
他の味方を心配する余裕もなく、俺は林立する杭から離れるべく走り出す。
と。
まるで、俺の理解を待っていたかのようだった。
ガンガンガンガンガンッ!!
追加の杭が、さらに天から地に突き刺さる。
――多すぎる。
――隙間がない。
――避けきれない。
――減らすしかない!
一瞬のうちに方針を変えた俺は、近場の杭に魔剣を叩きつける。
1撃、2撃――3撃でようやくベキンとへし折れた。
……だが、俺を射程範囲に収めている杭は、あとどれほどあるだろう。
4本――いや、5本。
1本1秒としても、5秒。
まず間違いなく、雷はそれより早く落ちてくる――!!
ヴァリィッ!! という炸裂音がした。
予想よりもなお早いそれに、俺は思わず身を竦ませた。
だが、1秒経って違うと気付く。
ケセラシファーによる落雷じゃない。
横から飛来した幾筋もの雷撃――《デンダー》が、光の床に突き刺さった杭を次々と破壊しているのだ。
「少し死んでましたぁっ! ごめんなさいっ!!」
色とりどりの魔法が溢れ出る。
踊り子装束の薄い布を優美に揺らす、少女の全身から。
「こういうのはお任せくださいっ――大得意ですから!!」
巡空まいるの身体から、異種様々な下級魔法が噴火のように迸った。
全方位に飛び散ったそれらは、それぞれ正確に光の杭に着弾していく。
火球に雷、風刃に氷弾――美しく計算された一挙手一投足から生み出されるそれらは、互いに絡まり合うようにして広がり、まるで孔雀の翼のようだった。
「先輩っ!!」
巡空まいるによるマルチロックオン・ダンシング・マシンガンの弾雨を潜り抜け、チェリーが駆け寄ってくる。
「お待たせしました……! 二人脱落しましたが、なんとかこれで!」
「よっし……! 幸い火力は悪くない。短期決戦で行くぞ!!」
「はいっ!!」
巡空まいるがすべての杭を消し飛ばすと、上空のケセラシファーが翼を畳み、円環状の床の中心まで降りてくる。
それを待ち受けるのは、生き残った俺たち8人。
たった8人――されど8人。
「――オォオオオッ!!」
ケセラシファーが降りてくるや、火紹が猛然と突進した。
ゴオウン! とメイスが大気を割り、したたかにバリアを殴りつける。
効果は瞭然だった。MAO最強のSTRから繰り出された一撃は、ベキリと蜘蛛の巣のような亀裂をバリアに刻み込む……!
「えいやっ!」
「《ライツトン》……!!」
続いて、オモチャのような矢と純白の雷がバリアに突き刺さった。
各着弾点からピカリと真っ白な光が瞬いたかと思うと、漆黒のケセラシファーに青いデバフエフェクトが現れる。
「ふっふーん! やっぱりね!」
「……身体の色が、変わったから……案の定、光属性が弱点……!」
初見で弱点属性を見抜いたUO姫とショーコにより、ケセラシファーの耐久力が格段に下がった。
目ざとくそこに、声が重なる。
「「《グランバニッシュ》!!」」
太陽めいた光球が2箇所から射出され、純白のバリアに着弾した。
それらはこれまでで最も大きな亀裂を生む。ボロリとバリアの一部が剥がれて、遙か地上へと落下していった。
「ここまで来て出し惜しみはナシです!!」
「プリーストでも光魔法なら使えますっ!!」
それぞれの杖を掲げ、チェリーとろねりあはさらなる魔法を放つべくスペルブックを手繰る。
こうまで体勢が整えば、今までヘイト稼ぎに徹していた俺とポニータも本領を発揮できる……!
「おおおおっ――――!!」
「やあああっ――――!!」
俺は体技魔法混じりのコンボでひたすらダメージを稼ぎ。
ポニータはろねりあの補助を受けてケセラシファーの攻撃を受け止めながら、堅実な剣捌きで反撃を加えていく。
漆黒の機体を覆う純白のバリアは、見る見るうちにひび割れていった。
やはり――人数こそ減ったが、俺たちの火力は決して低くない。
何より。
《呪王》のバリア自体、最初に比べると耐久度が下がっているように思える――疲弊しているんだ、きっと。《呪王》のほうも!
「あと少しですっ!!」
チェリーが叫んだ。言う通り、純白のバリアは今にも砕け散りそうだ……!
だが、やはり簡単にはいかせてくれない。
最後の試練だとばかりに――ケセラシファーは右手の剣を空に掲げる。
その刀身を、いくつもの光輪が取り巻いた。
「最初のやつかっ……!!」
たった一撃で俺たちを全滅寸前に追い込んだ、闇の柱を降り注がせる攻撃。
もう一度あれをやられて、また体勢を立て直せる保証はどこにもない……!
「二度も同じ手を食うものですか!!」
チェリーが気炎を吐いて、素早くろねりあたちのほうに向いた。
「ショーコさんっ!! 《ステルサイド》ですっ!!」
「えっ!? あ……は、はいっ!!」
「皆さん集まって!! ショーコさんのところへ!! ほら先輩も!」
叫びつつ、チェリーも俺の手を引いて走る。
どういうことだ? 《ステルサイド》は確か、モンスターから隠れられる結界を作る魔法……。
「先輩は死んじゃったから気付きませんでしたか。あの闇の柱の攻撃は、私たちのいる位置を正確に狙って降ってきたんです。ですから、たとえ闇の柱そのものを防げないとしても――」
「――そうか! 照準そのものを狂わせてしまえばいい!」
ミサイルを防ぐのに分厚い装甲などいらない。
照準システムのほうをジャミングすればいいのだから。
なるほど、言われてみれば至極単純……!
ショーコたちのいる場所が、薄黒い結界に覆われた。
俺とチェリーはその中に飛び込む。
続いて巡空まいるが、最後にUO姫と火紹が結界に滑り込んだ。
「ちょっとチェリーちゃん! 大丈夫なんだよね……!?」
「大丈夫じゃなかったらここで終わりです」
「ちょっとぉーっ!!」
俺たちは表情を硬くして、光輪に取り巻かれたビームソードを見上げる。
もしチェリーの仮説が間違っていれば、俺たちはまとめて闇の柱に飲まれて全滅する。
本来は幾度も挑戦して攻略法を調べるのだろう初見殺しだ。その可能性も充分にある。
だが、俺は信じよう。
チェリーのことさえ信じられないなら、他に何を信じられるんだって話だ。
――キィン、キィン、キィン――!!
氷を弾くような、高周波の音が空に響き渡った。
ビームソードの刀身を取り巻いていたいくつもの光輪が、切っ先のさらに先へと飛び出したかと思うと、砲身のように連なる。
そして。
切っ先から射出された闇色の光が、光輪でできた砲身を通り、遙か上空で幾筋にも分かれた。
降ってくる。
降り注いでくる。
闇色の、巨大な柱が、俺たちの人数と同じだけ。
果たして、それは――――
◆◆◆―――――――◆◆◆―――――――◆◆◆
――――純白のバリアが、ボロボロと崩れ去っていく。
まるでそれと連動したかのように、漆黒の機体もあちこちがショートし、爆発を起こした。
あれほど神々しかった駆体がバラバラに瓦解していく様は、どこか物悲しささえあった……。
機械仕掛けの堕天使が崩れ去り、地上へと墜落していくと……後には、一人の男だけが残される。
漆黒の光でできた翅――氷のような表情で俺たちを見下ろす《呪王》。
あまりにも孤独なその姿に……俺は問わずにはいられなかった。
「……満足か、おい。かつての仲間を使い捨てて……歪ませて……そこまでして、むやみに世界を破壊するのが、そんなに楽しいか?」
人間の中にだって、笑いながら破壊をする人間はいる。
サンドボックスゲームで人が何千時間もかけて作り上げたものをダイナマイトで吹っ飛ばし、ケラケラと嘲笑うようなクソ野郎だっている。
それと比べても、《呪王》の執着はあまりに異常なのだ。
何百年と生きた――少なくともそういう設定を与えられている存在と、俺たち普通の人間を比べたって、何にもならないのかもしれないが。
俺の問いに対し――《呪王》が、ほんのわずかに口角を上げた気がした。
「……楽しくはないとも。君たちとは違ってな」
それは、自嘲の笑みだった。
「しかし、そうする他にはないのだ、幸福な若者たちよ」
……若者たち、か。
ずいぶんと、人間みたいな物言いをするじゃないか。
「――《呪い返されよ》」
《呪王》が両腕を広げ、陰々と宣言する。
その身に纏うのは、最後の一色。
黄金のバリア。
「――《ジェネラル・イザカラ》――」
世界が、滲む。
水彩で描かれた世界にいきなり水がぶちまけられたかのような、そんな遷移演出の後に現れたのは――寒々とした、礼拝堂だった。
長椅子はなく、広大な大理石の空間に、煌びやかなステンドグラスの光だけが満ちる……礼拝堂だった。
ステンドグラスの手前には、一人の少女が宙に磔になっている。
メイア。
最後の竜巫女にして……俺たちを、親と呼ぶ少女。
ここは――《呪王》との戦いが始まった、最初の礼拝堂だった。
「……イザカラ卿は、私を呪ってはくれないようだ」
祭壇の上で、《呪王》が静かに天井を仰いでいた。
「あれほどの仕打ちをしたというのに、できたお人だ――私もまた、かの武人のように屈強で勇敢であれたらと、何度憧れただろう」
……呪ってくれない?
もしかして、もう終わりなのか?
疲れた頭で、一瞬だけ期待した直後。
「――しかし、餞別はいただけた」
《呪王》の頭上に。
一本の、大太刀が現れた。
「私の、この《呪王》の呪いに終止符を、と。……まったく、まったく。遺すべき言葉は、他にいくらでもあったろうに……」
羽のようにゆっくりと落ちてくる大太刀の柄を、《呪王》は両手で、しかと握る……。
「その餞別――私には過分なれど、無碍にもできませぬ。……ゆえに、これはイザカラ卿、あなたへの敬意だ。あなたに敬いを示すため――今この一時のみ、私は臆病者をやめましょう」
静かに――朝の湖面のように静かに。
《呪王》は握った大太刀を正眼に構えた。
直後。
その身を覆う黄金のバリアが砕け散った。
金色に輝くバリアの欠片は、そのまま消え散ることはなく――まるで磁石に近付いた砂金のように、大太刀の刀身に吸い寄せられる。
銀の刀身が、金に変わる。
そして、今一度。
俺たちの前に、それが現れた。
《呪王 Lv***》。
特殊なネームタグと、その下に1本だけ伸びたHPゲージが。
バリアの力を鋼に融かし、その命を初めて俺たちに晒して、《呪王》は告げる。
「――さあ、命と誇りを懸けるがいい。貴殿らに、それがあるのなら」
当然。
今この瞬間、俺たちの命と誇りは、この世界にある。




