表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強カップルのイチャイチャVRMMOライフ  作者: 紙城境介
3rd Quest Ⅳ - 最強カップルVSブラッディ・ネーム

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

143/262

第142話 殺人者の隠れ蓑


「――ストップ!!」


 UO姫と巡空まいる、D・クメガワのネームカラーがオレンジになっているのに気付いた直後――チェリーが彼らに手を突きつけて叫んだ。


「申し訳ありませんが、動かないでください――先輩、メイアちゃんについててくださいね」


「お、おう……」


 俺も状況のついていけているとは言い難かったが、動くなと指示された3人はそれ以上に戸惑った様子だった。


「えー? なに~? なんなの、チェリーちゃん?」


「えっと~……何かしちゃったんでしょうかぁ」


「むっ! いつの間にやらネームカラーがオレンジに……?」


「はい。それです。それのことです。お三方のネームカラーが、オレンジになっているんです」


 俺たちは7人でずっとひとかたまりだった。

 PKを働く暇などあったはずもない――あるとすれば、今、火紹がトラップからUO姫を庇って死んだくらいで……。


「これは幽刃卿による攻撃です」


 チェリーは確信的な声音で言った。


「は? これ……って、3人をオレンジにすることがか?」


「そうです。本番に入る前の準備ですよ。私がネームカラーに注目しておけと言った理由を覚えてますか、先輩?」


「それは……もし誰かがメイアをPKしたら、その時点でオレンジになるから――あっ!」


「そういうことです。容疑者をあらかじめ全員オレンジにしてしまえば、メイアちゃんをPKしても足がつかないんです」


 そうか……!

 ブルーネームのプレイヤーは一度でもPKを犯したら即座にオレンジになるが、オレンジプレイヤーは一度や二度PKを重ねたところでレッドにはならない。


「え……っとぉ……それってぇ~……」


「ミミたちの中にメイアちゃんを殺そうとしてる奴がいるってことぉーっ!? チェリーちゃんひどーい! 冷酷! 疑心暗鬼ぃーっ!!」


「やっかましいです! ……火紹さん、申し訳ありませんが、皆さんを見張っておいてもらえますか? あなたの主人を守るためにも」


 無言で戸惑っていた火紹だったが、UO姫を守るためだと言われたのが聞いたのか、素直にうなずいて3人の傍に立った。

 火紹の名前だけはブルーのままだ。……やっぱり、さっきのトラップがPK扱いされたってことなのか?


「行きましょう、先輩。メイアちゃんも」


 そう促してチェリーは歩き出す。

 俺はメイアを顔を見合わせながら、それについていった。


 チェリーが立ち止まったのは、落ちてくる天井から逃げる途中にUO姫がこけた辺りだった。

 床にしゃがみ込んで、何やらぺたぺたと手で探り始める。


「……あ」


 そう小さく呟いたかと思うと、チェリーはおもむろにスペルブックを出して、水魔法の《ウォルタ》を発動した。

 ぶしゃーっと床が水浸しになる。


「おい。何やってんだ?」


「これでわかるでしょう? よく見てください」


 チェリーは水浸しになった床を指差した。

 メイアと二人で、指差された場所を覗き込む。

 ん~……?


「――あっ」

「あーっ!」


 俺たちは同時に声をあげた。

 ()()()()()()()()()()()

 グラフィックのバグではない――見えない何かが、床の上に置かれているのだ。


「隠蔽系の魔法――UO姫はこれにつまづいたのか!」


「はい。どうやら、本来のターゲットは媚び媚び姫だったみたいですね」


「ターゲットって、あの天井のトラップでミミお姉ちゃんを殺しちゃおうとしたってことだよね? なんでそんなこと……」


「それはもちろん、私たちとの縁が深いからだよ。遺憾ながら、私たちはあの女のことをよく知っている。つまり本物だと気付いてしまう可能性が高いってこと。被害者役はオレンジにはできないから、私たちから見て容疑の薄い人間をそこに割り振るのが効率的でしょ?」


「…………UO姫が容疑者筆頭だって言ってなかったっけ?」


「話が変わりました」


 案の定私怨で疑ってたんじゃねえか。

 俺の眼差しをすっぱりスルーして、オレンジになった3人がいるほうに振り返るチェリー。


「そういうわけで残念ながら、あの女は容疑者から外れます。残るは3人――」


 巡空まいるとD・クメガワ。

 このどちらかが、メイアのPKを狙う幽刃卿の隠れ蓑。


「えっと~……早く先に進みませんか~……?」


 4人のところに戻ると、巡空まいるが不安そうな顔で言った。


「すみません。このまま先に行くのは不安要素が強すぎます。その前に、誰が幽刃卿にアカウントをハックされているのかを特定してしまいたいです」


「ふむ。状況は理解しましたが……。しかし、どうやって? どうやら我々は意図せずして火紹氏のPKをさせられたことになっているようです。ですが、一体どうすればそんなことが可能になると言うのでしょうかな? 火紹氏の死亡は、明らかに誰の責任でもなかったというのに――」


 D・クメガワの指摘に、チェリーは深くうなずく。


「まさに、そこですよ、問題は。それをこれから調べるんです」


 チェリーは天井を仰いだ。

 スイッチを押すと同時に落下して、火紹のHPを根こそぎ奪った天井を。


「そもそも、どうしてあのトラップがPK扱いになったのか……。それが、幽刃卿特定のキーになるはずです」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ