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最強カップルのイチャイチャVRMMOライフ  作者: 紙城境介
3rd Quest Ⅲ - 最強カップルのVR子育てライフ
125/262

第124話 最強カップルのVR家族旅行:精霊界Ⅳ


 ゆっくりMAO内を旅行するつもりだったから、俺もチェリーも翌日は休みだった。

 岬のように伸びた大樹の枝の先で、メイアは朝から矢を放ち続けている。

 その飛距離と精度は、昨日に比べて如実に上がっていた。


「今日中に当たるんじゃないか……?」


「熟練度が上がってるんですね……。あれだけやっていたら当然ですけど……」


 恐るべきはメイアの集中力だ。

 大樹のてっぺんにいる猿に向けて放った矢は、果たして何百本になるのか。

 きっと常人が何週間もかけてする努力を、メイアはたった一日でこなしている。

 だが――


「……こうしてる間に、セツナたちが渓流エリアをクリアしちまうかもな」


「一つ目のエリアは1日でクリアできたのに、2つ目はかれこれ1週間かかってますよね……」


「エムルから北上していくつもりが、なぜか異世界にいるし」


 セツナたちとの連絡は取れなかった。

 この精霊界と通常空間の間とではメッセージを送ったり通話を飛ばしたりはできないらしい。

 リアルの連絡先を知らないのが仇となった形だ。

 最悪、セツナがやっている配信にコメントを書き込めばいいが……コメント欄を私的に使うのは気が引けるんだよな。


「いずれにしても、俺たちはメイアの成長を祈るしか――ん?」


 ――グァアアンン――!!

 ピアノの鍵盤を全部一緒に叩いたような音――いや、声が響きわたった。

 メイアがいる枝の先に、ぶわっと黒い影が舞い上がる。

 鳥型の――旧支配者!


 ――《TYPE:BIRD Lv???》。


「チェリー!」


「わかってます!」


 その黒い鳥がメイアに襲いかかる前に、チェリーが《聖杖エンマ》から稲妻を迸らせた。

 それが黒い鳥を撃ち貫き、痺れさせている間に、俺が《魔剣フレードリク》を抜き放ちながら駆ける。


 こういうときのためにいるんだよ、俺たちは――!


 メイアのそばを駆け抜け、その後ろにいる黒い鳥の胸に、剣を深々と突き込んだ。

 ガァアアアンン――! という不協和音のような断末魔を漏らして、タイプ・バードは遙か地上へと落下していく。

 っし……!


「メイア! だいじょう――」


 振り向いてメイアの無事を確認しようとした俺は、しかし、そこで言葉に詰まった。


 メイアは、こちらを見ていない。

《エルフの弓剣》に光の矢をつがえ、一心に、大樹の頂上にいる真っ黒な猿を見据えている。


 気付いて……いない?

 襲われたことすら、意識に入っていないのか……?


 肌にビリビリと感じるような、凄まじい集中力だった。

 俺は知らず、呼吸を止める。

 考えるでもなく、メイアの邪魔をしてはいけないと、本能的に思わされたのだ。


「――んっ!」


 メイアの手から、光の矢が撃ち放たれた。

 まるで一筋の流星のように、大樹のてっぺんへと矢が上ってゆく。

 高さがピークに達し、山なりの放物線を描きかけた、まさにそのポイントで――


 ザクッ。

 黒い猿の肩を、矢が貫いた。


「「当たったっ!!」」


 俺とチェリーが声を揃えて叫ぶ。

 すげえ、本当に当たった、こんな距離で!

 興奮に湧こうとした俺たちは、だが次の瞬間、苦虫を噛み潰したような顔になった。


 大樹のてっぺんで、ふらりとよろめいた猿が――その場で、踏みとどまったのだ。


 肩じゃダメなのか……!?

 まさか、この距離から急所を狙えなんてこと――


「――んっ……!!」


 歯噛みしかけたそのとき、再び可愛らしい掛け声があった。

 シュウウン――と、綺麗な風切り音が抜けていき、光の矢が再び、大樹の頂上に向けて走る。


 完璧だった。

 まるでブレのない、本当に流れ星みたいな一射だった。

 だから俺も、おそらくチェリーも、その軌道を見た時点で悟る。


 ――ああ、当たる。


 大樹の上でよろめいた猿の眉間に、光の矢の切っ先が正確に的中した。

 断末魔の鳴き声も聞こえないような遠くで、猿がぐったりと力を失い、転がり落ちる前に蒸発する。


「狙いを……」

「即座に、修正した……」


 俺たちは、唖然として呟いた。

 猿がよろめいたことで、その眉間の位置は、ほんの数十センチではあるが確かにズレてしまっていた。

 そのズレを、メイアは一瞬で修正してみせたのだ。


 こんなもん――俺たちにだってできやしない。


「はあ~」


 メイアは深く息をつくと、ぐでーんとその場に仰向けになった。




◆◆◆―――――――◆◆◆―――――――◆◆◆




「素晴らしい! まさかこのような幼子が奴を射落とそうとは……! 心より感服した。約束通り、我らが恩人より預かりし《弓懸》をお譲りしよう」


 ローブァー村の村長の手から、メイアは《エルフの弓懸》を渡される。

 親指と人差し指と中指しかない手袋のようなものだ。

 メイアの小さな手に乗ったそれを、俺とチェリーは覗き込んだ。


「手袋っつーか、指サックみたいだな……」


「指を守るためのものですから、まあ一緒といえば一緒ですよね」


 俺も着けてたな、指サック。親戚の兄ちゃんから借りたニンテンドウ64をやるときに。

 3Dスティックが細くて硬いんだよな、あのコントローラー。


「ふむふむ」


 メイアはその場で《エルフの弓懸》を右手に着ける。

 サイズは大人用に見えたが、メイアの手に合わせて自動的に調整された。


「どう? メイアちゃん?」


 弓懸を着けた自分の手を興味深そうにためつすがめつしているメイアに、チェリーが話しかける。

 メイアは右へ左へと首を傾げ、


「んー……んーとね……。――あっ、そっか!」


 メイアは突然、《エルフの弓剣》を手にとって外に走り出した。

 俺たちは慌てて追いかける。

 村長の家から飛び出したメイアは、例の岬のような枝の先端まで走ると、さらに向こう側を指さした。


「パパ、ママ! あそこ見ててー!」


「あそこって?」


「おっきな穴のね、ふち? に、おっきな穴があいた、おっきな木があるでしょ?」


『おっきな』が多すぎてよくわからなかったが、望遠鏡を駆使して、メイアの言うものを発見する。

 このローブァーの村がある白い大樹――それが根を張っている大穴の縁に、言うとおり、大きな洞の空いた樹があった。

 ここから、余裕で300メートルくらいある。


「その樹のね、穴を見ててね! 行くよーっ!」


 メイアは弓剣を構えると、弓懸を着けた右手で弓弦を引いた。

 限界まで引き絞ると――そこで、ぐりんと矢を捻る。


「「!?」」


 俺たちは目を見張った。

 メイアの周囲に、淡い燐光が舞い始めたのだ。

 これは、もしかして――体技魔法のエフェクト?


「んっ!」


 ぐりんと捻りながら引き絞った矢を、メイアは射放った。

 矢羽が螺旋状の軌跡を宙に引いていく。

 矢が弾丸のように回転しているのだ。


 回転する光の矢は、300メートル以上もの距離を、一切落ちることなく飛翔した。

 そして、慌てて望遠鏡を覗き直した、その瞬間――


 300メートル以上先の樹の洞に、光の矢が吸い込まれた。

 直後に、樹はバキバキと洞の部分から砕け折れた。


「……マジかよ」


 もう笑うしかない。

 なんて狙撃力……そして威力。

 こんなもん、もうスナイパーライフルじゃねえか。


「ふふー! このゆがけ? があるとねー! こういうのもできるんだよー!」


 メイアはとても得意げに胸を張った。

 ああ、もっと得意になってもいいぞ。

 たぶん、メイアは今、MAOで最長の攻撃射程を持つ存在だ。

 そこで、俺は気になったことがあった。


「メイア……ステータス見せてくれないか?」


「んんー? いいよー」


 ピョコンとステータスウインドウを表示させて、俺に見せてくるメイア。

 そこにあった情報を、俺とチェリーは覗き込んだ。



●メイア

キャラクターレベル:15

魔法流派:エルフ流(流派レベル26)

クラス:エルフ


HP:295(装備補正値+5/ポイント+100)

MP:110(クラス補正↑↑↑)

STR:285(装備補正値+180)

VIT:105(装備補正値+10)

AGI:103(装備補正値+8)

DEX:127(クラス補正↑↑/装備補正値+25)

MAT:151(クラス補正↑↑↑/装備補正値+15)

MDF:102(クラス補正↑↑)

残りステータスポイント:280


スキル:

《直感》(熟練度1/近接攻撃の与ダメージ増)

《集中》(熟練度48/遠隔攻撃の与ダメージ増・エイム補正)

《弓剣術》(熟練度48/弓剣系武器の与ダメージ増)

《千里眼》(熟練度27/遠くのものがよく見えるようになる)


使用可能魔法:

《ファラ》(熟練度13)

《エアーギ》(熟練度1)

《フォグ》(熟練度1)

星旋矢(せいせんし)》(熟練度1)



魔法とスキルの一覧くらいはいるかなと思いまして、

設定をまとめておくためのページを作りました。

とりあえず魔法とスキルだけざっくり纏めてあります。

下に直リンクを置いたので適宜どうぞ。

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