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最強カップルのイチャイチャVRMMOライフ  作者: 紙城境介
3rd Quest Ⅲ - 最強カップルのVR子育てライフ

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第114話 異世界ファンタジーには外せない


「パパー! ママー!」


 恋狐亭に戻ると、何かがどーんと腰にぶつかってきた。

 少し緑がかった金色の頭が、俺のお腹にへばりついている。

 これって……。


「……メイア?」


「へへー!」


 メイアは俺の顔を見上げて、にかーっと白い歯を見せた。


「本当に……」

「大きくなってます……」


 明らかに伸びたメイアの背丈を見て、俺とチェリーは呆然と呟く。

 俺に抱きついたメイアは、控えめに見ても8歳くらいだった。

 小学校に通っている年齢だ。

 前は3~4歳に見えたから、幼稚園をほとんどすっ飛ばしたことになる。


「ママにも! どーん!」


「きゃっ!?」


 メイアはチェリーにも突進した。

 チェリーはそれを受け止めるが、少し後ろにふらつく。

 でかくなったぶん衝撃もでかい。


「へへー! おっきくなったでしょー!? ママだってパパだって倒せるの!」


 喋り方も前より流暢だった。

 精神も8歳になってる……。

 予想していたことではあったし、先に通話で事情も聞いてたが、いざ目にするとなると、俺もチェリーも理解に時間を要した。


「いやー、びっくりしたよー!」


 と、笑いながらやってきたのはレナだった。


「メイアちゃんと遊んでたら、いきなり光り出してさー! 収まったと思ったらこれ! 初めて見たよ、人間が進化したの!」


「B連打じゃキャンセルはできなかっただろうけどな……」


 俺は少し的の外れた返しをして、チェリーに抱きついたメイアを見下ろした。


「呪転領域を解放したからか……?」


「それしか考えられませんね」


「じゅてんりょーいき……?」


 メイアはむむむと眉間にしわを寄せる。

 泣くか笑うかくらいだった前と比べると表情も豊かだ。

 チェリーはその頭を優しく撫でて、


「大きくなったね、メイアちゃん。私の名前は覚えてる?」


「おぼえてるよー? チェリーママ! ……んむ? サクラママ……?」


 本名を教えたことも覚えている。

 記憶も完全に引き継がれてるみたいだ。


「また《NANO》の謎技術かよ……」


「あれ?」


 チェリーが不意に首を傾げて、8歳になったメイアの前に中腰になった。

 手を伸ばして、そっとメイアの耳に触れる。


「メイアちゃん……お耳、ちょっと長くなった?」


「にゃー? お耳?」


 あっ。

 俺も気付いた。

 メイアの耳の先端が、少しだが尖っているように見える。

 あの形は、まるで―――


「あっ! 二人も気付いた、それ!?」


 狐耳をぴこぴこさせながら割り込んできたのは六衣だ。

 この恋狐亭の主であり、留守中のメイアを任せた相手でもある。

 レナは勝手に来て勝手に遊んでただけ。


「耳、明らかに長くなってるわよね!? わたしも記憶がおぼろげなんだけど、それって……」


「エルフ――ですか?」


「そう、それ! エルフ! 何百年かぶりに見た!」


 NPCである六衣の記憶には、妖怪としてこの山脈で暮らした数百年が、設定として組み込まれている。

 それがどの程度詳細なものなのかは本人にしかわからないが――あえて彼女の記憶にその存在がある、という事実は無視できない。


「先輩! あの剣!」


「おう。六衣、実はさ、呪転領域の遺跡でこんな剣を見つけたんだけど……」


 そう言って俺がストレージから取りだしたのは、《エルフの弓剣》という武器だった。

 柄の両端に一つずつ刀身が付いている、奇妙な形の剣、あるいは薙刀。

 それを見た六衣は、「ああー!」と尻尾をピンと立てた。


「なっつかしー! それ、エルフの連中がよく使ってた武器よ!」


「やっぱり、いたんですか、この山に? エルフが!」


「ええ。あいつらの本拠は確か、もっと北のほうにある《空中都市》だったと思うけど」


「空中っ……!?」

「都市っ……!?」


 初耳のオンパレードだよ!


「なんで早く教えてくれないんですか、それ!」


「あれ? 言ってなかったっけ?」


「聞いてねえ!」


「まあ、いつの間にか滅んじゃってたし、詳しいことは全然覚えてないから……。今ようやく思い出したくらいだし」


 とにかく、このナイン山脈にはその昔、エルフという種族が住んでいた。

 そして、メイアの耳の特徴を見る限り――


「メイア」


「んー? なーに? パパ?」


 ちょっとマセた喋り方すんなコイツ。


「この剣、ちょっと持ってみてくれるか?」


「んー? いいよー!」


 めっちゃ快諾すんなコイツ。

 子供に刃物を持たせるのには若干の躊躇があったが、確認せずにはいられない。

 俺は《エルフの弓剣》の柄を、メイアの手に握らせた。


「ど……どうだ?」


「んー? んー……」


 メイアは緑がかった金髪を揺らして可愛らしく首を傾げ、手に握った《エルフの弓剣》を眺めた。


「んー……なんか……あっ! こーかな?」


 と。

 メイアが不意に弓剣を片手持ちにして、空いた手を手前に持ってきた。

 瞬間。


「「!?」」


 俺たちは目を見張る。

 柄の両端に付いた2本の刀身。

 その切っ先から切っ先まで、光の弦(・・・)が伸びた!


「よいしょ」


 メイアが何気ない仕草で光の弦を引き絞ると、そこからさらに、光の矢が現れる。

 弓剣がしなって、力を溜め―――


「えいっ!」


 メイアが手を離した瞬間、その力を解放した。

 光の矢はヒュンッと風を切り、旅館の木製の壁に突き刺さった。


「わー! とんだとんだっ!」


 きゃっきゃと嬉しそうに飛び跳ねるメイア。

 一方、俺たちは真剣な顔で唸っていた。

 ……やっぱりか。


「《エルフの弓剣》は……メイアちゃん専用の武器だったんですね」


「道理でどのクラスでも装備できなかったわけだ……」


「でも、とりあえず」


 チェリーは飛び跳ねるメイアの前に中腰になった。


「メイアちゃん。危ないから、近くに人がいるときは、それ、使っちゃダメだよ?」


「あう……。ダメ?」


「よく周りを見てね。私たちがいないときは使わないこと。いい?」


「はぁい……」


 素直!

 俺があの歳だった頃は、もうすでに親の言うことなんて聞き流してた気がするが。


「じゃあ、それ、ひとまず返してくれるかな?」


「うん」


 と、メイアが弓剣を手渡そうとしたとき。


「あうっ……!」


 メイアが表情を歪めて、弓剣を取り落とした。


「メイア!?」

「メイアちゃんっ!?」


 俺たちは驚いて、メイアに駆け寄る。

 どうした?

 どこか痛いのか?


「ど、ど、ど、どうすれば……!」


「狼狽えすぎです! 落ち着いてください、先輩!」


 そんなん言ったって……!


「どうしたの? どこか痛いの? 苦しい?」


 表情を歪めたメイアは、両手で頭を押さえながら、弱々しく首を横に振った。


「あのね……あのね……ドラゴンさんが……」


「……ドラゴン……?」


「いっぱい、あばれて……こわして……みんな、逃げて……」


 ドラゴンが、暴れて、壊した。

 まさか……!


「メイア……! もしかして、それ、思い出したのか?」


 メイアは無言でうなずいた。

 記憶があるのだ。

 ナイン山脈の文明が滅びたときの記憶が、メイアの中に!


「だからね、だからね……ドラゴンさんたちが、いっぱい、出てこないように……じゅてんりょーいきを、ふーいん、するために……おっきな"おいわ"になって、"ふた"を……」


「"おいわ"――お岩?」


「岩で、蓋――」


 俺とチェリーは顔を見合わせた。

 呪転磨崖竜ダ・モラドガイア。

 巨大な岩でできたドラゴンであり――呪転領域との境を封じていた、巨大な蓋。

 そして、俺たちはその内部で出会っている。

 巫女風の格好をした少女と。


「もしかして……メイアは……」


「あの女の子本人か――もしくは」


 チェリーはおとがいに手を添えながら呟いた。


「仮に、あの巫女みたいな女の子が、ダ・モラドガイアと一体化して呪転領域の封印を務めていたのだとすれば、残念ですが、彼女本人は、モラドガイアと一緒に呪転して、そのまま消えてしまったと考えるのが妥当です――でも、もし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


 それは、俺の頭にはなかった可能性だった。

 確かに、その説ならば、メイアが赤ん坊同然の姿で現れたのにも、ダ・フレドメイアの死体から出てきたのにも、納得がいく。


「根拠のない憶測ですけど――胎内記憶、というのを、聞いたことがあります」


「胎内記憶?」


「母親のお腹の中にいた頃の記憶のことですよ。稀に覚えている人がいるらしいです。ピンクの部屋の中にいたとか、へその緒で遊んでたとか。母親の記憶を受け継ぐ、というようなファンタジー現象とは違いますけど……」


「つまり……」


 俺は徐々に表情を回復させ始めたメイアを見つめた。


「……コイツは、覚えてるかもしれないってことか。六衣ですら覚えてない、ナイン山脈の真実を」


「そしてその記憶は、おそらく、呪転領域を解放するごとに蘇る――そう考えていいと思います」


 ドラゴンが暴れ出して滅びたというナイン山脈の文明。そしてエルフ。

 なぜドラゴンが暴れ始めたのか?

《呪転》とはなんなのか?

 それに、NPCたちの口にたびたび上る、《彼の者》ってのは、一体……?


 すべての答えが、メイアの記憶の中にある。


「……チェリー。今、俺が考えてること、わかるか?」


「わかりますよ。そこそこ長い付き合いですし」


 俺たちが呪転領域のすべてを解放しきったとき、真実もまた、白日のもとに晒されるだろう。

 そして、そのとき。

 おそらくは、メイアが一番に、その真実と対峙することになる。


「申し訳ないですけど、呪転領域の攻略はしばらく、セツナさんたちに任せましょう。明日からは平日ですし、時間は限られてます」


「だな……」


 メイアはきっと、これから先、戦うことを避けられない。

 だったら、曲がりなりにもパパだのママだの呼ばれている俺たちができることは、いったい何か?


「――まさか、この歳で子供を育てることになるとはな」




●メイア

キャラクターレベル:1

魔法流派:エルフ流(流派レベル1)

クラス:エルフ


HP:106

MP:19(クラス補正↑↑↑)

STR:35

VIT:25

AGI:25

DEX:18(クラス補正↑↑)

MAT:45(クラス補正↑↑↑)

MDF:18(クラス補正↑↑)

ステータスポイント:100


スキル:

《直感》(熟練度1/近接攻撃の与ダメージ増)

《集中》(熟練度1/遠隔攻撃の与ダメージ増・エイム補正)

《弓剣術》(熟練度1/弓剣系武器の与ダメージ増)


使用可能魔法:

《ファラ》(熟練度1)



この小説を読んでる人が好きそうな短編をカクヨムで書いたので、

よろしければどうぞ。

うっかり義理のきょうだいになってしまった元カップルが、

仲のいいきょうだいを演じる裏で互いを罵倒します。


『継母の連れ子が元カノだった』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883783581

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[一言] なんと!あの作品の作者さんでしたか。 知らずと本作を読んでました。 どちらも楽しませてもらってます。
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