6話
取り敢えず一言。
凄く……眠いです……
あーあー。
本日も晴天なり。
そして俺の心は曇りのうち晴れなり。
……護衛の仕事って暇なんだな。
現在三日目でございます。
その間特に問題なく行軍し、疲れました。
こんなに歩くのは初めてかもしれない。
そしてこんなに暇なのも初めてだ。
地球では暇つぶしの道具だったり、山登りやハイキングなら風景が変わり、疲れもするのでそんなこと感じる暇ないのだが、砂漠では風景なんて変わることはなく、歩く地面は砂でも魔法を使って沈まないようにしてるから普通に歩くのと変わりなく、更に身体強化もしているから疲れない。
そう、暇なのだ。
「……だからってこれはなぁ……」
「師匠がやれって言ったんじゃないですか!」
人の形をした砂が俺たちの後をついてくる。
……やっぱり暇ではなかった。
普通に怖い。
「じゃあそれを走らせてみろ。あ、俺の半径二十メートル以内には入れるなよ」
「そんなに嫌がることないじゃないですか! こう見るとなんか、愛着が湧きませんか?」
後ろを振り向くと、十メートル程の距離を保って砂人間がついてくる。
総勢五体。
……普通に怖いな。
「グラントには絶対見せるなよ。これでトラウマになったら全て台無しだ」
「流石にひどすぎる!」
こんなの夜でみたら迷わず攻撃する自信があるぞ。
遠くが見通せない闇の中、背後から忍び寄る影が五体。
しかもそいつらは無表情……どころか顔がない。
……怖すぎてホラー映画に出れるな。
グラントには見せない方が教育上良いはずだ。
とまぁこんな感じで暇を潰しながらこの三日目まで来たんですよ。
ずっと歩いているだけの仕事。
とっても大変です……
立ってるだけとか歩くだけのバイトとか楽そうで良いなって思った時期もあったけど、甘かった。
少なくとも俺には向いてなかった……
「あ、交代みたいですよ」
ベルの音が前の方から聞こえてきた。
二列で進んでいてもそれなりの長さになってるから、真ん中のやつがベルを鳴らして周囲に響かせる事により、伝える手間を省くってわけだ。
いや、実際は知らないからただの予想だけど。
「やっと休めるな」
「疲れましたもんねー」
体力的にではなく、精神的にだがな。
もう俺のMPは0だ! ってやつだな。
……ちょっと違うか。
まぁそれよりも指定された位置で待機というなの休憩になったのだが……
「暇だな……」
「そうですね……」
しりとりはもうやったし、遊び道具はもちろんない。
今度オセロでも作ろうかな?
あれ程度なら木を適当に魔法で切って形を整えて、駒は木を丸の形にして片面だけ燃やさないように焦がせば茶色と黒になるから出来るな。
……しろくろじゃなくてオセロなので白黒じゃなくてもOKです。
あ、そういえば転生ものの小説でこういう遊び道具作って販売して儲けるってのがあったけど、でき……ないか。
詳しくないから分からないけど、あれらが簡単に売れてるのは、ゲーム自体が面白いのもあるが、それだけではないはずだ。
まず、資本金が大事だ。
これがないとそもそも何も作れないからな。
次に必要なのが、量産できる技術だ。
一個や二個作った程度じゃどう考えても儲からないので、そのために多く作る事になるだろう。
だが、そのために機械があった現代とは違って、この世界には今のところ見る限り機械は存在しない。
つまり、全部手作業でないといけないのだ。
駒とか台とか精密にやるのは時間が掛かるだろうし、作る人のための人件費も発生し、作業させる場所も必要となってくる。
俺自身職人じゃないのでどれほどの技術があるのか謎なのだ。
そして最後に売る対象だな。
成功している小説ではバックに貴族(もしくは自分が貴族)がいるので宣伝として貴族の社交界とかでも出来るだろう。
そして貴族というのは大抵金持ち(偏見……でもないか)なので多少高くても普通に買ってくれるはず。
だが、俺が売るとなると対象は平民となってくる。
こっちの方が当然人数が多いので多少安くしても買ってくれれば良いのだろうが、ここで問題なのが宣伝だ。
平民の方がお金はないからつまり大事に使っているはずだ。
そしてあまり分からないが、普通の家庭が少々蓄えができる程度の収入だったとする。
そこでオセロなんかを買ってくれるのだろうか?
安くと言っても人件費やら材料費やら土地代やらで色々と出費してるのでそこそこ高くせざるを得ないのだ。
そしたら当然更に手が出しにくいわけで、結局はなくても良いものだから買ってはくれないだろう。
そうすれば当然赤字となり今まで以上に仕事をしなくてはならなくなり、そして手が回らなくなって奴隷を手放すようにされたり……
うん、俺に商売ができそうにないから諦めよう。
普通に使った方が有意義だ。
閑話休題。
「じゃあ早く食べちゃいますか」
「そうだな」
俺の様子を見計らい、声を掛けてきたのだろう。
流石腐っても貴族、イメージ通り人の顔を伺うのは手慣れて……るわけないか。
今回はただの偶然だな。
「じゃあ今日は普通にサンドイッチとスープで良いか」
「そうですね」
この護衛依頼の最中の食事は、各自で用意するようになっている。
お前ら用意してくれても良くない? と思うけど、しないからには当然理由があるわけで。
俺の予想、というか多分正解は俺たちに渡す事によって利益が下がるからだな。
商人の集まりで俺たちを雇っているので、当然色々な商人がいる。
その中には食料を扱う商人もいるのだろう。
食事を出すなら当然こいつの担当になるわけで、俺たちに渡す分も載せるとなると当然スペースが狭くなり、本来載せたいものが載らなくなってしまうからだろう。
他の商人が運べば問題ないって?
いや、普通に俺たちに渡すとか面倒な事、やりたいやついるか?
いないだろうから、こうやって各自用意にしたのだろう。
まぁ俺たちには時間の流れを遅くするマジックバックがあるから、こうやって予め作ったものを入れられるから各自用意はありがたいけどね。
興味本位で食べた携帯食のパンは固くて食べたくないです。
「今回のはトマトにレタスに肉か」
「砂漠の真ん中で普通の料理が食べられるのって良いですね」
全くだ。
ああそうそう、この世界って基本は地球とかと名称はほぼ同じみたいだ。
たまに違ったのもあるけどな。
あ、グラント達に渡すの忘れてたな。
「そういえば2人に渡してなかったから渡してくる」
「なら私が行きましょう」
「いや、一応俺が主人だから一日一回顔を合わせとかないとね」
「一人で食べ続けるのは弟子としてあれなので、私も付いていきますよ」
別に気にしないのに硬いやつだなぁ。
「じゃあ二人で……」
外に出ようとした時、急にこの馬車が停まってしまった。
そして油断して普通に置いていたスープがその揺れで倒れ、溢れていった。
「……停まった原因が下らなかったら原因を叩いてやる」
もちろん叩くとは文字通りではないけどな。
「行くぞカズキ! 原因を探し出せ!」
「……食い物の恨みですね」
別にそこまで食を重要視してるわけじゃないけど、誰だって食事の邪魔、しかもその食事はもう食べられなくなったら怒るだろ?
少なくとも俺は怒る。
外に出ると、一個前の馬車が何やらおかしい。
急停車しても危なくないように二十メートルは離れて走行してるから細かいところは見えないけど、少なくともその馬車を引いていた馬ではない変な動物が四頭もいたが、半分が居なくなっていた。
そしてその周りは何やら赤くなっていた。
……ついに魔物強襲イベントか?
眠さと一度書いてたのが途中で消えたのとで少しおかしな場面があるかもしれませんが、その場合文句言ってください。
誤字脱字程度なら直します。
お読みくださりありがとうございました。