閑話07話 改心への道
ハーイ!
メリクリ明けおめ!
よし、これでいっかな?
良くない? では改めまして。
メリークリスマス。リア充は爆発するように。
新年明けましておめでとうございます。今年も末永くお願いします。お年玉は今回長いのでその分で。
ではそろそろどうぞ。
ケイがどこかに行った中。
ケイの奴隷であるカリーナとグラントは街の中にいた。
主人が居ないからといって何もしないわけではない。
奴隷になる前はメイドをやっていたカリーナの指導の下、グラントは色々と学ぶようケイに命令されているのだった。
そして今日も、グラントの勉強は始まっていた……
「……え? 本当にですか?」
「ええ。そろそろ大丈夫でしょう。あなたも大丈夫な歳ですし」
そして現在。
礼儀、字の書き読みは大体出来たから次は買い物になるのだが……
「でも、いきなり一人でですか?」
「ケイ様が別々の行動を指示された時、一人で出来なきゃ意味がないので当たり前です」
グラント9歳。
そろそろ一人でおつかい出来なきゃダメなレベルだ。
……初めて来た街で一人で買い物という大人でも難易度が高い環境なのだが。
そんなことを理解してるのかしてないのか。
もし理解しているのに言っていたら鬼レベルである。
「今回買って来てほしいものはメモに書いてあるからそれを見るように」
決して説明が面倒なのではなく、読み書きした勉強が身についているのかテストも兼ねているのだ。
……真意はカリーナの心の中だけに秘められているが。
「分かりました。いまから行ってきます」
「裏道とかには気をつけるように」
そう言って傍からみたら子供を心配する親の図でグラントは買い物に出発するのだった。
……その後ろに陰でこっそり見守るカリーナに気づかないまま……
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まずは歩きながらメモを確認するグラント。
「えーっと。今日の昼食にパンとスープで……後はこの国で着やすい服の上下2セットか」
一人であるからか普段の丁寧な言葉はどこへやら。
普段の地が出ていた。
最近は敬語にも慣れて来ていたのだが、やはり元々の方が楽なのだろう。
「パンとスープって言われても、どこで売ってるか知らないし、服もどれくらいの値段を買えばいいんだ?」
それに、そもそもどういうスープかも書かれてないし、値段はいくらまでだ?
そう思ってポケットにいれてある出る時に貰ったお金を確認するグラント。
一人で買い物したことがないので色々と迷っているようだ。
「すいません」
分からない時は周りから聞くこと、そう主人であるケイに言われていたグラントは、悩んでも仕方ないと道を聞くことにした。
「服を買いたいんですけど、どこに店はありますか?」
「ん? 服屋はあそこにあるよ」
「ありがとうございます」
ちゃんと猫を被って話せたおかげか、スムーズに話を聞きだせ、教えて貰った道を進むのであった。
……カリーナは今のやり取りで「敬語で話されて悪い気をする人はいないから許可がない限り敬語にしなさい」と教えたのが実践できていたのが嬉しかったそうだ。
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無事に服屋にやってきたグラント。
無事に上下服2セット手に入れることが……出来ているわけなかった。
「この国出来やすい服てどういうのだよ。そもそもどういう服を選べばいいのか……」
自分で買い物がしたこともないので、当然服も自分で選んだことがない。
故にどういうのが良いのか分からないようだった。
「どうしたんだい? 迷子かい?」
流石に難易度が高かったかとカリーナは思い、出るか出ないか迷っていた。
そこに現る服屋の店主。
デb……ふとっ……恰幅の良い体型のおばさんがグラントに話しかけてきた。
「いえ、服を買いに来たんですが、どれがいいのか分からなくて……」
「なるほど。どういうのがいいとか要望はないの?」
「この国で着やすい服を買って来いと言われてますけど……」
「なるほど。この国は砂漠だから他の国とは違った服の方がいいのは確かだからねぇ。普通のだと暑いしこういうのとかが風を通しやすいしい、日差しが暑いからこういう帽子も買っといた方がいいよ?」
「……」
元々服装に興味がなかったグラントは、良く分からないので考えることを放棄したようだ。
「……じゃあお勧めのやつを2セット分下さい」
「分かったよ。じゃあこれとこれでいいね?」
良く分からないので頷いておくことにした。
ここで幸運だったのは、この人が良い人で騙すことなく料金や服を誤魔化さなかったことだ。
いや、子供相手にやる気はなかっただけかもしれないが。
とにかく、第一段階は無事に終わったようだった。
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そしてまた同じようにそこらの人に聞き出しやって来たのは料理店。
ここのスープは美味しいと言われたので紹介された中でもここに来たのだった。
詳しいことは分からないが、なんでも冷たいスープがあるらしい。
スープといえば普通はスープだと思うのだが、この国では暑いからなのか冷たいスープが売られている。
いろんな場所を見るのは楽しいが、それと同じくらい食べることも好きなグラントは当然好奇心を抑えられず冷たいスープを食べてみたいと思いここまでやって来た。
「冷たいスープのやつを二つとパン二つ下さい」
「ヴィシソワーズとパンですね。お持ち帰りですか?」
二人分頼んだのに一人しかいないから、持ち帰りだと思われたのだろう。
そこに頷いて返答するグラント。
「容器代が別にかかるけど良いかな?」
屋台ではなく店で容器代かかるのは今までも見たことがあるので、頷く。
「じゃああそこに座って待っててね」
大人しく座って待つグラント。
ただ待っているのは暇なので店内を見渡すことにしたそうでうろちょろとしている。
昼時といってよい時間帯だからか、席は半分以上埋まっている。
そんなにこの店の料理は美味しいのかと、期待で待ちきれなくてそわそわしているのは見ていて面白いのか、周りの客はグラントを見て微笑ましい顔をしていた。
そんな事には気づかず、心の中では「おっせーなー。まだかよー」と言葉遣いが悪く微笑ましいとは無縁なのだが、そんなことは誰も気づくどころか思ってもない事だろう。
憐れ客の人達。
そんなこんなで料理が出来たと呼ばれ受け取ったグラント。
無事今日の任務は終了……ではない。
任務は帰るまでが任務なのだ。
「おお坊主、美味そうなの持ってるじゃん」
「俺らにも分けてくれよ、なぁ?」
楽しみが出来たことで気が緩み、近づかないように言われていた裏道にいつの間にか近づいていたのを漸く認識したグラント。
上がってた気分が突如として落ち、恐怖していた。
そこには、いかにも悪人ですといった感じの顔をした二人組だった。
「俺たち腹減ってるしいいよな?」
「何買ったか見せてくれよ」
「あ……」
どうしようか悩んでいる間に、料理の入ってた袋を盗られてしまったようだ。
そして二人組が中身を確認したら、先ほどのグラントのようにテンションが高くなっていた。
「おいこれ、あの料理店のやつじゃないか?」
「ああ、これはホシンソースとかいうスープじゃないか? 久しぶりだな」
「ビジョワーズじゃなかったか? それにしても本当に久しぶりだな」
どうやらこのスープはこの男たちにとって久しぶりだったようだ。
だからといって楽しみを奪われたグラントは黙ってはいられなかった。
「そ、それは僕のです……返して……ください……」
といってもグラントは争いが苦手だった。
あんな口が悪くても痛いのは人よりも極度に嫌いな性格だった。
当然、こういう場面も苦手だったりする。
「ん? なんて言ってるか聞こえなかったなぁ。もう一度言ってみな」
「だ、だから……返して」
「んー?また聞こえなかったよ。もう一度お兄さんに言ってくれないかな?」
「おいおい、こんな子供いじめてやんなよ! かわいそうだろ!」
周りに人がいたら「お前が言うな!」って突っ込まれるだろうが、裏道はこの街の住人でも近寄らない。
面倒くさいことに関わりに行く人はいないからだ。
だからどんなに近道でも近づく人はいなかったりする。
まぁそれはこの街の住人だけの話だが。
「おじさんたち子供いじめて遊ぶなんて趣味悪いですね」
そこに現れたのは十人中八人は振り返るようなイケメンだった。
え? 普通十人中十人だろって?
この世界に美形は多いので一々振り返ってられません。
まぁともかく、そんなまだ二十も超えてないような少年がそこにはいた。
グラントにも見覚えがあるその人は。
「カズキさん!」
そう、カズキだった。
貴族であり、魔法を全属性使えるという素晴らしい人なのだ。
「おじさんだって?」
「おいおい、人を見る目ないなー。俺たちはお兄さんって呼ばれるくらいだぜ?」
「自分でそうやって言ってる時点で終わりですけどね」
「さっきからそうやって……俺たちに喧嘩売ってるのか?」
「はい、ですのでとりあえずそこの盗んだものを返してあげてから来てください」
「盗んだ、人聞きが悪いな。俺たちはもらったんだよ。なぁ?」
「おう、そうだな」
心の中で「嘘つけ」と毒づいてるグラントは悪くないだろう。
……悪態つくとは実は余裕があるのか?
「だが、動いてこぼすのはもったいないし持っててもらうか」
「そうだな」
そうして自分の手に戻って来た昼食に安堵するグラント。
だが、まだ終わってないので安心できず次第にカズキの事が心配になったが……
「じゃあ返してもらったことですし、帰りましょうか」
「「「……へ?」」」
二人組とグラントの心が一つになった瞬間だった。
「ん? どうしました?」
「えっと……喧嘩買うんじゃなかったんですか?」
「いやいや、もう返してもらったし別に争う必要ないでしょ?」
……訂正しよう。
少し、この男は空気が読めないのが欠点だろうか。
「おいおい、買ったものは返品不可能なのは常識だろう?」
「こっちが二人だからビビってんだろ」
「いえ、一歩も動かずに倒せますが?」
「ほお……」
「言ってくれるじゃないか……」
わざと煽ってるのか、それとも意識せずに言っているのか。
……多分後者だろうが。
「じゃあ、遠慮なく」
「二人で行かせてもらおうか!」
グラントが動くより先に、二人組がカズキに向かうのが先だった。
少し離れていた距離を詰めるべく走り出した二人。
「見逃すって遠回しに言ってあげたのに……しょうがない人たちです」
仕方ない、といった感じで両手をそれぞれに向け、魔法を発動した。
「『風掌』」
使用者本人にも見ることが出来ない風の魔法が放たれた。
当然、それをかわせるわけもなく。
「「ヴグッ」」
その魔法が腹の部分に命中し、その場に倒れるのだった。
「うん、これくらいでも十分通用するレベルですね」
そう一人満足し、笑みを溢すのだった。
その笑顔に一瞬、同性であるグラントも見惚れるレベルだったかが、すぐに正気に戻り礼を述べるのだった。
「あ、ありがとうございました。」
「いや、師匠の弟子だからね。当然だよ」
師匠。
そう呼ばれているのはグラントの主であるケイである。
ここまで強いカズキに師匠と呼ばれるなんて、やはり自分の主人であるケイ様は凄い人だと再確認したのだった。
「まぁでも、あれくらいなら君でも撃退できたかな?」
「いえ、争いなんて怖くて……何もできなかったです」
「ん? 魔法の才能がない……は獣人だから身体強化だけはできるか。それがあれば余裕じゃないの?」
「それもできなくて……」
「ふーん師匠が教えてないのか、争いが嫌いなのを見て教えるのは諦めたのか……どっちにしろ、今回みたいな時、君はこのままでも良いのか?」
「そ、それは……」
「ただ、奪われるのを見ているだけ。そして諦めるのか?」
「だ、だって争いは怖いし……痛いし……」
「別に無理に争えなんて言ってはないよ。でも、望まなくても今みたいに争いは向こうから来るときはあるよ? その時はやっぱ見てるだけ?」
「……」
「ごめんごめん、いじめるつもりじゃなかったんだ。泣かないで。ただ、やっぱりこんな世界だから、最低限の強さは必要だよねって話だよ」
さて、話は終わったから戻ろうかな。
そう笑って言って後ろを振り向く……前に手を目に当てられ後ろから誰かに目隠しをされていた。
「だーれだ」
「もちろん分かりますよ! 師匠ですよね?」
「ほぉ分かっているのに随分と余裕そうだな」
「……あ」
「忘れたとは言わせないからな。すぐ戻るって言ってから五分。せっかく屋台から昼食買って来てやったのにお前はどこに行ってたんだ?」
「いやぁ……そう、おばあさんの荷物持ちを手伝ってたんですよ!」
「俺より初めて会ったおばあさんの方が大事、と」
「お年寄りは大事にってよく言うじゃないですか!」
「そんなこと言ってるなら今すぐ領地に戻って年寄りの世話でもしてろ。まったく、探すのも面倒なんだからな」
そう言って深いため息を吐くわれらが主人公ケイ。
自分に気が付かずカズキに文句言っているのを庇うべく、グラントは声を上げた。
「あの、ケイ様」
「ん? グラントいたのか。って……何かこいつにされたのか?」
勘違いしているので、慌てて訂正する。
「いえ、そうではなくて、困っていた所を助けて貰ったんです」
「そうだったのか……素直に言えば怒んないのに」
「人助けを自分で誇らずこうやって言われる方が嬉しいじゃないですか!」
「さっきおばあさんを助けたとか誇ってたくせに」
そんなやりとりが面白くて、先ほどの事も忘れて笑ってしまったグラント。
「ほら、お前のせいで笑われちゃったじゃないか」
少し不機嫌そうな顔を見て笑うのはやめたが、今度は先ほどの言葉が浮かんできたグラント。
「ケイ様に教えて貰え、か……」
「どうしたんだグラント。そういえばカリーナはどうしたんだ?」
「あ!」
そういえばと完全に忘れていたグラント。
幸いなことに元から冷めたスープなのでそこは心配ないが、遅いと怒られてしまう。
「怒られちゃうので失礼します!」
「ああ、また後でな」
ケイが帰って来たら最低限の力は手に入れるべくお願いしてみよう。
そうスープとは違って熱い心を持ってカリーナの元へ戻るのだった。
おまけ
グラントが二人組に絡まれていたころ。
カリーナは宿で待っていたのだった。
「遅いですね……」
料理店で待つまでは見届け、そこからは後をつけていたのがばれないようにいかにもずっと宿で待っていたかのように振舞おうと準備していたのだが……
肝心な時にはいないカリーナなのであった……
新年早々初投稿で多分テンションが上がっていて長くなるかもなので後書きなんて興味ねーよ!という人はどうぞ無視してください。
うーん久しぶりに小説書いたから疲れっちゃった。
まぁいつもより早めに書き始めたから余裕はあるんだけど。
書いてて思うんですけど、やっぱり予定通りに進まないですね。
本当はこの後続きの魔法の練習でも書こうとしましたがそうすると二章が長引きますから端折りましたし。
この閑話も結構変わってこうやってなりましたし。
数日に一回や予定通りに小説を動かす作者は凄いって書き始めてから常々思うようになりました。
そして失踪なんてガッカリだなぁ、なんて思ってもいたけどそれもしょうがないのかな、とも思うようになりましたし。
やっぱ自分でやってみると色々と見えて来ることって色々ありますよね。
……別に嫌味で投稿遅くても文句言うなよ、とは言ってないので安心してください。
逆にそれ以外の文句ならガンガンどうぞ。
売られた喧嘩はちゃんと査定してからどうするのか決めるので意見無視はないのでどんどんどうぞ。
……Mってわけじゃないからね? 罵るのだけは心が折れるのでやめてください。
そうそう、今回の話に出て来たヴィシソワーズというもの、聡い皆さんなら気づいているかと思いますが普通に実在します。
冷たいジャガイモのスープらしいですね。
一度は冷たいスープというのも飲んでみたいものです。
あ、でも砂漠だから冷たいスープというのはただありそうだなぁと思っただけなので鵜呑みにしないように。
そこら辺、作者は結構適当なのです。
え? 今更だって? それなら安心して……いえ、それなりに努力させていただきます、はい。
他には……特にないかもしれませんね。
あっても忘れてますしいっか。
じゃあそういう事なので、終わりにしましょう。
ただでさえ本文長いのに、ここまでお付き合いしてくださった方、ありがとうございました。
よいお年を……じゃなくて、良い一年になりますように!
あ、そういえばおみくじ引いたら大吉だったので、凶の人は今すぐこの小説を読み返すと良いでしょう。
良いことがあるかも?