2話
おかしい……
絶対におかしい……
「三人……ああ、今日は空いてないな」
「泊まりたい? ……今店長居なくて、店長の許可なしはだめなんだ」
とかなんとか言われて、どこも断られてしまっている。
というか店長居なきゃ客取れないとか、普通に客商売として間違ってるだろ。
本当に客が埋まっているのと、やる気のない店員が上手く(悪く?)絡み合って偶然こんなにどこも断られているようになっているのか?
「はぁ……どうするか」
予定が狂ってしまった……痛っ。
「あ、すみません……」
どうやら少女とぶつかったらしい。
あまり痛くなかったけど、痛いと言ってしまうのは癖なようなものだよな。
さて、ホントにどうしようか……
「うーん……とりあえず飯を先にしようかな……」
うん、どうせ空いてないんだから今すぐどうこう慌てても仕方ないしな。
とりあえず飯を先に……って!
「ああ!!!」
ない! ない!!
「どうかされたんですか?」
「俺の金がない!」
この世界では基本カードで金のやり取りはされるけど、現金がなくなったわけではないのだ。
だから、金貨五枚と銀貨五枚の五十五万リル分の現金を袋に入れて持ってたのにそれがない!
「どこかに落とされていたりは」
「いや、ないと思う……多分」
失くしといて自身満々には言えないけど、置忘れとかもないし。
第一、落としたりしたら、後ろにいる二人が気づくだろうしね。
という推理を語った所、、
「確かに、私たちが気づくはずですね」
と、推理を認めて貰えた。
でも、だとしたらなぜなくなったんだ……
「そういえば、先ほど少女とぶつかられていましたよね」
「え、まぁ確かにそうだけど」
「その時に盗られてしまったのでは?」
所謂スリってやつか?
まったく気づかなかった。
そしてどうやらこの街は治安も悪いらしい。
「さて、じゃあ取り返しに行きますか」
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路地裏の片隅。
まだ昼過ぎにも関わらず、ここは表と比べて薄暗かった。
そんな場所に、二つの陰が動いていた……
「やったな! 今回は大物だぞ!」
「だからこそ、そろそろ気づかれるかもしれないでしょ。さっさと逃げよう」
二人組の少年・少女だ。
どちらも貧相と言える服装で、路地裏という事も合わさってあまり良くは思われないだろうが、二人の顔は不相応に笑顔だった。
まるで、今までで一番幸福があったのかのような笑顔だ。
当人たちからしてはそうなのだろうが。
そう、この二人組の内の片方、少女の方がケイから盗みをしたのだ。
普通なら盗みが成功したなら浮かれているだろうが、少年の方はともかく、少女は顔こそ笑顔なものの、すぐさま離れるといった用心深さも備えていた。
まるで手慣れた様子だった。
そして今も素早く離れながら、誰かついてきていないか警戒もしている。
これなら、今回もまた成功しただろう。
そう、相手が普通の一般人ならば……
「……!」
「なんだ!?」
突如、二人組は重い何かを持たされているかのように、そこから一歩も動けなくなった。
時間が経つにつれ、その重さも増していき、息をするのも苦しくなって汗も出てきた。
これは異常な事だった。
少なくとも、少女が生まれてから一度もこのような感覚はなかった。
「もしかしたら盗んだ相手がやばかったのかもしれない」
この原因を考え、それしか考えられないと冷静に思考するも、その顔には大量の汗と焦りが浮かんでいた。
「……見ーつけた」
こうして、悪魔に再開した瞬間、悪魔を狙った自分を呪い、少年は気絶までしてしまった……
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誰が悪魔だ誰が。
……なんか良く分かんないけど、悪魔だと思われていたような気が……
まぁ確かに、相手からしたらね。
でも、流石に悪魔は酷いんじゃないかね?
悪いのはそちらでっせ?
わいはただ金を盗った盗人を追いかけて来ただけでっせ。
おっと、とりあえず、冤罪というのは良くないと思うのでまず確認から。
「えーっと。俺から金を盗んだのはお前で間違いないか?」
滅茶苦茶頷いているし間違いないか。
それにしても汗めっちゃかいてるけど暑いんかな?
って、そういえばまだ『威圧』切ってなかったな。
解除した途端、安堵してるし、多分そのせいか。
あ、『威圧』っていうのは、簡単に言うと人間、濃い魔力は体に悪いらしいから、だったらそれをぶつけてみようって事になってそこら辺の盗賊さんたちに協力もとい人体実験したけど、効果が気絶したり、急に寒くなったり頭痛かったりと、そういう症状を報告(訴えじゃないよ?)してきたので、『威圧』と名付けることにした。
はい、説明終了。
そして、探し出すのは『探査』でなんとかなった。
こっちは省略でいっか。
「じゃあ、まず聞くけど、お金はまだ持ってるよね?」
さすがにもう使ったとか言われたら泣いちゃうよ?
ぐったりした様子を見せながらも頷いた。
威圧の影響結構残ってるな。
「じゃあそれは後で回収するとして。なんで俺らから盗もうとしたんだ?」
「……お金が必要だから」
「あーそうじゃなくて、数いる人の中から、なんで俺を狙ったかって事。よそ者だって他にもそれなりにいるだろうし。それとも偶然俺だったって事?」
「……あれがないから盗もうと思った」
「あれって?」
「ペンダント」
「ペンダント?」
えっと……
もしかしてあれか?
「街の入り口で売ってた怪しいやつか?」
「そう。あれがないと盗んでも他があまり文句言わない」
なんだそれ。
まさかあれがこの街の身分証明みたいなものか?
そういえば、宿屋の奴等も首元を見ていたような……
まさかそんな役割があったなんて。
何が幸福だ。
幸福じゃなくて、当たり前のことを金で買えって言ってるのと同じじゃねーか。
「しょうがない。情報に免じて、今回はここまでにしといてやるよ。あ、金は置いていけよ?」
このセリフだけ聞くと俺が悪い方だな……
深く考えないようにしよう。
少女を解放して、少年も水かけて起こしてあげた俺ってなんて優しい。
……いや、盗まれたのに、返すだけで許したんだから優しいだろ。
優しい奴は気絶してるやつに水かけないって?
それは気絶する奴に言えよ。
少女が持てなさそうだから手伝ってやったんだよ。
逆に感謝してほしくらいだ。
……さて。
取り敢えず、この落とし前をどうしてくれようかあのばばぁ。
おかしい……こんな予定ではなかったのにどうしてこうなった……
一体何のためになろうに書く前に何を書くか考えていたのか。
流れが全然あってないぞ……
もういいや。
このまま突っ走ればいつかはゴールに着くさ。
あーもう眠すぎてダメだ……
お読み頂きありがとうございました。
次回も又お読みくださいませ。