1話
そういえば、活動報告に五時になってもなかった場合は説明してなかったので、こうやって実際にやって話すことにしました。
五時にない場合は六時、六時にない場合は七時、七時にない場合は八時となっています。
というわけで、決して書くのが遅くなってとか、データが消えたとかそんなわけで実際にやったわけではないのでお間違えの無いよう……
そんなこんなで、まぁ六時でも通学通勤時間には間に合うでしょうし、どうぞ暇つぶしにでもお読みください。
こんな話を聞いたことがあるだろうか。
買えば、幸運が訪れる壺や石があると。
ただし、この話は嘘だ。
ただのツボやペンダントだけど、そこに目に見えない、でも誰もが欲しがる要素を付けるのだ。
目に見えないからこそ、その話を信じ買ってしまう人もいるだろう。
そして、見えないから騙されているとも分からないまま、幸運は全て壺のおかげにして、不幸は他の要因にしてしまうのだ。
だが、誰もが欲しがる幸運の壺など、現実には存在していないのだ。
明日隕石が落ちるというのより信じられない。
いや、隕石も五十歩百歩か……
まぁとにかく、そんなうまい話なんてどうせ嘘だから、買わないのが普通の選択だろう。
そう、こう考えた俺は間違っていないはずだ……
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馬車に揺られてようやっと着いたノワール聖国。
「……」
「どうされたのですか?」
「いや。何週間も馬車に乗って疲れただけだよ」
今までは長くても数日程度だったのに、今回は国を移動したので、それはもう長い時間馬車に乗っていた。
乗っているだけで何もなし、景色はまぁ日本じゃ見られないような景色だったからそれなりには面白かったけど早々に飽きる。
そして一番が揺れるから腰がめっちゃ痛くなるのだ。
馬車があるのにわざわざ歩くほど、腰が痛くなった。
そしてなにより……
「ケイ様! こんなに地面が柔らかいって不思議ですね」
「……元気がいいなぁ」
「え?」
「いや、何でもない」
地面が柔らかいというように、地面は土ではなかった。
ノワール聖国はなんと砂漠の国だったのだ!
国境越えた時からおかしいとは思ったんだよ?
土から砂っぽく変わっていき、とうとう砂だけになったり。
国境越える時に馬車から他の変な生き物が引く馬車擬きに乗ったり。
最初砂漠だと認識した時、一番心配だったのは昼の暑さと夜の寒さだった。
知識でしか知らないけど、映画とかでよくやってるからそれなりに分かっている。
リヒト王国は少し暖かいな、程度で普通に過ごしやすかったから当然そういう服とかしか持ってない。
極端な暑さや寒さに適した服を持っていなかったのだ。
そしてそんな心配から数時間、国境越えた時には昼過ぎだったので、時刻は六時前後。
日が沈み、夜が来ても少し肌寒い程度だった時、どれほど救われたか……
ともかく、そんなこんなで辿り着いたのだった。
「グラントは元気だなぁ」
「まだまだ子供ですからね」
俺たちが並んでいる間、グラントは下が砂なので足跡がつくのが面白いらしく、そこら辺を走っている。
そこまでうるさくしていないし、迷惑もかけていないので、カリーナも今回は大目に見ているようだ。
グラントが遊んでいる間にそこまで並んでいない列は進み、ようやっと俺たちの番になったので呼び戻す。
「どこから来ましたか」
「リヒト王国です」
「出身は?」
「リヒト王国です」
「身分証を」
冒険者ギルドのカードを見せる。
「……はい。では、通って良いですよ」
地球ではもっと厳しくやるのに、こっちではこんなに簡単には入れるのか。
国境でも同じようなやり取りをしたけど、そっちもこっちほどではないけど簡単にしかやってないけど良いのか。
緩すぎて早くもこの国が心配です。
早々、心配と言えば、この国は数年前に盗賊に乗っ取られたとかカリーナが言ってたけど本当なのかな。
盗賊が乗っ取ってたらもっと入国料金とか言って金を取られそうだし、そもそも入れないと思うのに。
カリーナが間違っているのか、盗賊が上手くやっているのか……
まぁ俺には関係ない事だし、どっちでもいいか。
「さて、二人とも行こうか」
今は砂漠の街がどんなものか気になるから、こっちに集中しよう。
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街は、リヒト王国とかでもよく見る普通の街だった。
そう、普通の街だったのだ。
何がおかしいかって?
ここは砂漠だ。
砂の上に普通に建物立てたらやばいだろ?
なのに、この街は普通に建物が建てられているのだ。
最悪テントだけみたいな想像をしていたので、いい意味で裏切られたな。
でも、どうやって建っているのか……
「街の中では、足跡つかないんですね」
「そういえば、そうだな」
取り敢えず街を見たかったので門のすぐ横に移動したのだが、足跡はなかった。
地面を触ってみると、砂の筈なのにサラサラしておらず、砂同士が固まって地面となっている感じだった。
思いっきり踏んでみても、沈まない。
って、ここまでやって沈まないほど固いなら、最初ちょっとでも歩いた時に気づけよ俺……
「もし、そこのお兄さん」
ん? 俺?
「そうそう、そこのよそ者のお兄さん」
話しかけて来たのは、黒いフードを被って顔が見えないけど、声から判断するに老女だと思われる人だ。
というか、その恰好怪しいので、まずフードを取ってから出直してください。
「この街はどうだい?」
「今来たばかりなんですけど、思ったよりも凄いですね」
「そうかい。それは良かった」
あれ、普通の会話だな。
実はいい人?
「それはそうと、そんなよそ者のあんたに良いもの持ってきてやったよ」
ん? なにかくれるの?
「これを見なさい」
見せられたのは、どこにでもありそうな、ハートの形をしたペンダントだった。
これが良いもの?
俺オシャレとかそこまで興味ないからいらないよ?
「これは幸運のペンダントと言って、身に着けると幸運が雨のように降ってくるものだよ」
はいギルティ。
そんなもの世の中には存在していない。
そもそも、雨のように降ってくるとかなんだよ。
余計に嘘くさいな。
「これはよそ者だけに売っているから特別な品だよ」
逆に言うと、よそ者にしか売れないペンダントなんじゃないの?
「本当は五十万リルなんだけど、今回は特別に二十万リルでいいよ」
いや、幸運なんてだれもがほしいもの、本当にそんな効果があったとしても二十万なんかで売らないだろ。
そもそもそういう話信じない人だし。
「いや、手持ちがないので……」
こういう時、こうやって言っとけば相手は引いてくれるだろう。
お金が欲しいのに、そのお金がないんじゃ売る意味がないからな。
「大丈夫じゃ。一年以内に返してくれればな」
借金okと? ますます怪しい。
絶対利子とかカイジ並みに高いんだろうな。
「すでにペンダント持ってるので他のにするのはちょっと……」
「そんなものより、こっちの方がオシャレだし幸運もついてくるんだからお勧めだよ」
……もういいや。
遠回しにいらないって言ってんだから気づけよ。
「やっぱりいらないです」
「そんなこと言わずに。買わないと後悔するよ?」
別にしないし。
「じゃあ、そういう事ですので。二人とも、行こうか」
後ろで「本当にいいのか!?」「後悔しても遅いぞ!」とか聞こえるが当然無視だ。
あんなもん誰が信じるものか。
本当にあったらみんな幸せになってるけど、実際そうじゃないからそんなもので詐欺しようとするんだろ。
まったく、入国早々嫌な物を見た。
まずは宿屋を探しがてら、ブラブラするか。
幸運のペンダントとか、本当にあったら欲しいですよね。
昔、そんな詐欺があったらしいですけど、もう今は絶対に引っかかる人もいなさそうですし、もうそんな詐欺ないんですかね?
まぁそれはともかく、本当に幸運になれるなら、五十万や百万でも安いと思いません?
その後ギャンブルで一山当てるなんて余裕、そして万馬券や宝くじを当てて一生どころか三生まで遊んで暮らせるほど稼げそうですもんね。
ああ、実際にあったのなら……なんか考え方がおっさん臭くてすみません……
といわけで次回はちゃんと五時にします。多分。
では、お読み頂きありがとうございました。次回もまたお読みください。