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46話


「せいぜい俺を楽しませてくれよ!」


何か凄い楽しそうだよね。

別に俺が何もしなくても楽しそうなのがどうも釈然としない。

まぁ別にいっか。

俺のやるべきことはあいつを叩き潰すことだし。


「『アースウォール』」


六属性がこようが、どうせ魔力は最低限だろうしな。

案の定、少し大きさと密度を上げただけで、全て防げた。


「これを防ぐとはお前……只者ではないな」


いや、普通に只人、一般人ですよ?

というか、確かに六属性を扱えるのには驚いたけど、それだけだしな。

魔力制御がゴブリンキング時の俺と同等レベルだし、さっきから全て最低限の魔力しか込めていない魔術ばっかだしな。

手加減しているとみるか、これで本気なのか。

どうやら転移者じゃなく転生者みたいだし、きっと前者だろうけど……というか前者であってほしい。

だって転生者でこれだと、この世界の住人はこれより酷いだろうしな。


「まぁ手加減はここまでだ。少し本気出してやろう」


はいはい、どうぞ本気を見せて下さい。


「魔に堕ちし穢れた炎よ、出でよ。『ファウルネス・ファイア』!」


……うん、正直舐めてたわ。

これ、結構やばい奴じゃない?

何か赤黒い魔法陣から見るからにやばい黒い炎が出てきたぞ。

……闇の炎に抱かれて消えろ!!って詠唱じゃなくてほっとしたような残念なような……

そんな場合じゃなかった。

穢れた炎ってことは多分普通の水じゃ消せないだろうし、土で防ぐしかないか?

いや、風で消すこともできるか。

多分あれなら消すことが出来るだろうしな。


「天に舞いし女神よ、聖なる息吹で邪なる物を浄化せよ!『パージ・ウィンド』」


金色に緑が綺麗に混じったような魔法陣が出て来て、凄く頼りない穏やかな風が出てきた。

しかし、穏やかな風でも十分だとでも言うかのように、黒い炎に当たった瞬間、一瞬元の赤い炎に変わり、消えていく。

まるで、浄化してから風で消してるみたいだな。

……創ったは良いけど、使う機会がなかった魔術その1が上手く行って良かった。

死にはしないだろうけど、痛いのは嫌だしね。


「な……なんだそれは! そんな魔術見たことないぞ! この俺のオリジナル魔術に対抗できる魔術があるなんて……」


いや、別に防ぐだけなら同じ魔法ぶつけたり、土で防ぐことも出来ただろうけど、その余波で周りの草原ごと消されたらたまらないからな。

やったのはあいつでも、貴族だから権力とかでこっちの責任にされそうだしな。


「くそ……ふざけやがって! お前は俺に軽く捻り潰されればいいんだよ!」


やだよ、痛いだろうし。

それに、まだダメージ与えてないんだからアウラも怒っているだろう。

じゃあ次は俺のターン! ドロー! 

俺は手を地面に待機スタンバイ


「魔に堕ちしひとよ。我が叫びに答えよ!『召喚サモン・スケルトン』」


地面に置いた手の少し前に魔法陣が現れ、骨人間スケルトンが現れた!

仲間になりたそうな目で見てきます。


 はい


いいえ


 保留 ⇇


「よし、とりあえず行け!」


なんかテンション上がっちゃって召喚なんて使っちゃったけど大丈夫だよね?

召喚魔術の存在はこの世界にもあるみたいだし、問題ないよね?

それに、ノリで創っちゃったけどちゃんと言う事聞いてくれるよね?

……やってしまったものは仕方がない。

なんとかなるさ!


「な!? お前召喚術師だったのか!」

いえ、違います。

ただの冒険者です。


そんなことよりこのスケルトン、足遅いな。

イメージ的にスケルトンみたいなアンデッドたちって遅いイメージがあったからそうなったのかな?


「仕方ない。俺も奥の手を見せてやろう!」


いえ、奥の手ではないです。


「我に歯向かいし愚かな者よ、強大なる力の前に慄き震えろ! 太古から続く支配を揺るがす者に怒りを解き放て!『炎龍』!!」


手も当ててないのに地面が魔法陣で煌めきだした。

大きさは半径三メートルありそうだな。

その魔法陣から炎が飛び出し、スケルトンが無暗に突っ込んで火だるまになっている間に、その炎は龍へと姿を変えた。


「おお……素直に尊敬できそうなレベルだな」


結構魔力を使っているらしく、ハァハァ言って汗もかいているが、これはもうそうだろうなとしか言えないレベルだろう。

言っている事はもう踏み台転生者だったが、確かにこれを使えるならきっとゴブリンキング程度なら余裕で勝てるし、大きい態度も頷ける。

……だからって許すわけではないけど。


「どうだ! これなら並大抵の魔術なら燃やし尽くされて効果がないぞ!」


確かに結構大きいし、空に浮かんでいるし、自信作なのだろう。

あ、ちなみにこの龍はかの七つの玉を集めて願いを叶えてくれる神の龍と同じような形だ。

この世界ではこれが龍なのかね? まぁいいや。

これもオリジナル魔術なんだろうか?

もしそうだったら悪いけど、俺も使わせてもらおう!


「世を炎で支配せし龍よ。無から生み出され我に従い給え。『炎龍』」


詠唱は違えど、想像は同じはずだ。

同じように魔法陣が出現し、炎が出現し、そして龍へと姿を変えた。


「ば……馬鹿な!? これはオリジナルの筈だ! なぜお前が使える!」


「いや、コピーさせて貰ったんだよ」


炎魔術に適性があって、魔力もあるなら、後は想像さえできればコピーなんて楽勝だろう。

無から一ではなく、一から十は楽って言うしな。


「そんなわけあるか! コピーだなんて聞いたことないぞ!」


「まぁ結構チート使ってるしね」


元からの才能で出来るようになったわけじゃないしね。


「チートだと!? さてはお前も転生者か!」


「ちょっと違うけど、まぁそんなものだよ」


死んだけど同じ姿で別の世界に行ったんだから転移ってわけでもないし、この世界で産まれたわけじゃないから転生でもないし……何て言うんだろうな?


「このクソチーターが! 偽物はオリジナルに勝てないって決まっているのは知らないか!」


はい、知らないです。

というか、本物が偽物に負けて闇落ちっていう展開もあるんだけどね。

それよりチーターとかっていってるけど、同じチーターに言われてもねぇ……


「このコピー、実は少し手を加えているから、正確に言うなら名前が同じだけでこの魔術は俺のオリジナルになるんだけどね」


「どこが違うってんだ! なにもかも同じじゃないか!」


「まず第一に大きさがこっちの方が小さいかな。まぁどっちも俺たちに比べたら大きいし目視ではわかんないだろうけど。二つ目は、使っている魔力の量だよ。どうみても密度が違うだろ?」


「んなもんどっちも分かるわけないだろうが!」


え、そうなの?

別にアウラみたいな魔力の流れを視認できる魔眼がなくても、俺には分かるんだけど。

自分でやっている魔術だからか?

それとも、一定以上の魔力持ち、もしくは魔力視認や感知にも才能が必要とか?

……今はいいや。後でグラントで確認しよう。


「まぁとにかく、要はお前の龍に俺の龍は負けないってことだよ」


「ふざけるのも大概にしろ! 行け、炎龍!!」


別に龍自体が意思を持っているわけではなく、自分たちの意思で動かしているので言葉にしなくても動かせるが、気分的に言いたかっただけなのだろうか。

じゃあ俺も真似しようかな。


「向かい撃て!」


若干大きい向こうの龍がこちらの若干小さい龍に向かって突撃してきた。

だが、魔術は大きさではない、密度も大事なのだ。


「な!? 炎が消えて小さくなっていっているだと!? どうなっている!」


「簡単だよ。消えているんじゃなく、取り込まれているんだよ。ほら、逆にこっちのは大きくなっているだろ?」


元は炎だ。

なら、どちらの炎により多くの魔力が使われているかで魔術の威力も変わってくる。


「極端な話、溶岩とマッチの火、マッチがどれだけ多かろうと溶岩には勝てないって事だ」


「そ、そんな馬鹿な……」


そうやって話している間にも敵の龍を取り込んで若干大きくなったこちらの龍。

碌に魔力も残ってないだろうしこっちの勝ちだな。


「さて、じゃあ俺の勝ちだな。いいだろ?」


「クソッ! ……ああ、俺の「まだいけますわカズキ様!」まけ……は?」


「あんなやつやっつけちゃってください!」


「今ですわカズキ様! 隙だらけですよ!」


「そっか、まだやるのか。じゃあ仕方ないか~。うん、本当はやりたくないけど、仕方ないよね?」


ルールだもんね? 

殺すか気絶させるか参ったと言わない限り勝負は続くんだから。


「いや待て、俺はもう「さぁいけ炎龍!」負け……って話を聞けー!」


いやです。ルールは守らないとね?

参ったって聞いてないし、しょうがないから痛めつけないといけないしね。

そう、これもしょうがないんだ。恨むならあの野次馬三人衆を恨むんだな!


「グァ!」


炎龍の尻尾で空に打ち上げられた。

全身炎で出来ていても、こうやって質量もあるから火傷と打撲両方を与える時に便利な設計!

うん、こいつと戦ってよかった。

つぎにゴブリンキングのようなやつに会ったら前衛役としても使えるしな。


「…………けてたすけてたすけグハッ」


あ……頭から落ちてきたけど大丈夫か?

しかも石に当たってなかったか? 

確かに殺害も勝利条件に入ってたけど、狙ってやるほど俺も鬼じゃないぞ?


「キャーカズキ様!」


「頭から血が!」


「今治しますので頑張って下さい!」


ほう、三人の内一人は回復魔術が使えるのか。

こればっかりは医療なんて勿論分からないから病気何て治せないし、ただ傷口塞ぐとしても菌ごと閉じちゃ不味いのは流石に分かっているので、そんな簡単な物でも水がなければ何も出来ないんだよな。

今度しっかりとした回復魔術師に教えを請おうかな。

それか使える奴隷を買って教えて貰うのもアリか。


「あなた覚えときなさいよ!」


「いつか必ずこの借りは返すわ!」


「このことはパパに言いつけるんだから!」


そう捨て台詞を残して三人で転生者を持ち、結構な速さで逃げて行った。


「今のって風の補助魔術かな?」


「……そう。足が速くなる」


「アウラ使えるのか?」


「……使う?」


「いや、使えるか聞いただけだから良いよ」


ああいうのも覚えといて損はないしな。

いや、創っちゃってもいいな。

ああいうのなら簡単に想像できそうだし。


「……怪我は?」


「ん? 大丈夫だって。それより、あれで満足した?」


「……やりすぎ」


「そこは反省している」


微笑しながら言葉を返す。

……うん、やっぱ平和が一番だな!


「じゃあ、帰ろっか」


「……ん」









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