43話
先週はすみません。
風邪ひいてしまったので書けず、半分くらいはできてたのに投稿できませんでした。
その代わりに、今日二回投稿します。
二日連続じゃなくて、今日に二回投稿します。
そして今の時刻五時一分。
ぎりぎりセーフで問題ないでしょう。
それでは、眠いのでそろそろ終わりにしてサクッと読んじゃってください。
そろそろ終わりに近づいて来た頃じゃないかな?
そう思うほど結構な距離を歩いた気がする。
下り坂だったり上り坂だったり階段まで上り下りしたし。
そろそろゴールじゃないともう疲れたし周りが薄暗いしで気が病みそうになってくる。
「後もうちょい進んでまだ奥に行けないなら今日はここで野宿かな?」
ダンジョンという以上魔物などにも警戒しなければならないが人間寝なきゃ活動できない。
まぁ魔物と言っても一回も見てないんだけどね!
「……いや、もうちょいで奥に着く」
「根拠は?」
「勘」
「……さいですか」
もう突っ込む気力さえ湧かないほど疲れたよパトラッシュ……
本当に終わりが近いならいいんだけどな。
お願いします神様仏さま。
だがタクト、お前はダメだ。
「……段々明るくなってきた」
「言われてみれば確かに」
まだまだ薄暗いのは変わらないが、言われれば気づく程度には明るくなってきた。
「ということはそういう事だと考えていいのかな?」
「……さあ?」
さあって女の勘かどうか分からない勘はどこに行った……というのも疲れて言えない。
膝はまだ大丈夫だけど、体力のほうがダメで少し息が荒くなっているのが自分でも分かる。
……これを機に少しは走り込みでもしようかな。
そのまま明るくなる道を進んで行くともう見慣れたドアがあった。
大きさは随分と大きくなって。
「いかにもボス部屋って感じだけど……そんな装備で大丈夫かアウラ?」
「……? 装備も何もかもアイテム袋にあるから大丈夫」
「いや、そこは『大丈夫だ、問題ない』とか言わないと……まぁ何でもいいや」
期待はしてなかったからそれこそ問題ない。
ただボス部屋みたいな感じだし少し緊張したのを誤魔化そうとしただけだ。
……よし。
「じゃあ行くか」
返事も頷くのも確認せずとも分かるのでそのまま開けて入っていく。
中は今までみたいに部屋のような空間だった。
大きさは教室二個分程度。
その空間には何も置かれてないので余計に広く感じさせる。
「何もないし居な……!?」
この部屋に入ってからオンにしていた気配感知の魔術に今まで反応なかったのにいきなり部屋のど真ん中に現れた。
真ん中近くまで二人とも近づいていたので距離にして二十メートルくらい。
十分見える範囲に現れたそれは……
「……」
それはただ笑っていた。
この世のものとは思えないほどに綺麗な美貌。
この薄暗い空間でも鮮やかに映える長い金髪。
身長も女にしては高く、体形もスラっとしていてモデルにいそうな体形。
いや、モデルでさえも彼女の足元にも及ばないだろう顔。
そしてそんな女性がただただこっちを見て笑っていた。
人形みたいに綺麗に整ったその顔で笑っていて。
慈愛に満ちた目でこちらに笑いかけていて。
その女神と言われても納得しそうな彼女を前に俺は……
「この状況はどうすればいいの?」
俺は困っていた。
確かに今まで見た中で一番綺麗だ。
足も長くてスタイルも良くて、もう世の中の女性が求めるような物を全て持っていて。
だけどそれがこの状況でなんだというのだ?
ボス戦かと思いきやこんな人間じゃないと思うほどの美貌を持つこの人が居たけど。
じゃあこの人がボスなのか?
でも、そのボスはまだこっちをみて笑いかけていて。
気が抜けるほど何もしてこないし。
いや、男として悪い気はしないよ?
あんな美人に笑いかけられて少しドキドキするし、綺麗だなぁって思うし。
まぁただそれだけなんだけど。
「アウラどうす……? アウラ? おーいアウラさーん?」
アウラにどうするか確認しようかと思ったらなんか固まって動かないんですけど。
なに? 『女として負けて悔しい、でもあんな綺麗だなんて……』とかなの? 見惚れてるの?
そういうの興味ないと思ってたんだけどやっぱり少しは気にしてたのかな?
「アウラさーん……アウラの魔術は二流以下。そこら辺の魔術師にも劣るアウラさーん」
……返事がない。ただ突っ立っているだけのようだ。
いやいや、本当にどうするんだこれ?
あいつはボスってことで倒しちゃっていいの?
「――――――」
そこで突然、言葉になってはないけど何か言ったように口を動かすボス(仮)
そしてアウラはそのボス……もうボスでいいや。そいつに向かって歩き始めた。
「これは流石に実力行使で止めたほうがいいよな?」
近づいた瞬間頭潰されたとかになったら洒落にならないしな。
うん、これは仕方ないから魔術を使おう。
「『コーティング』」
地面を操作して相手の足を埋めるようにして動きを止める土魔術。
相手になんの外傷も与えずに行動不能にするならこれが一番だろう。
「――――――」
だがその妨害もアウラが風の魔法で取り除き、またボスに向かって歩き始めてしまった。
……考えられるのは二つだな。
一つは洗脳されている状態だな。
だから何言ってるかわかんないけどあいつに反応してるんだと思う。
もう一つは何らかの理由で自らの意志で行動してるかだな。
ただ、こっちは可能性的に低いな。
魔術師が態々敵に近づくとかあり得ないことだし。
まぁそんなの考えていても仕方ないしどうでもいいことか。
止められないなら狙いを本体のほうにすればいい。
「『ファイアーボール』」
まずは様子見に……なんて無駄なことはせずにゴブリンなら五体は楽々殺せるくらいの魔力を込める。
無詠唱で瞬時に魔力込めるのはこの二倍ほどいけるが、無駄に大きくするとかしないと魔力が爆発するのでこれくらいにしといた。
魔力が爆発する理由? さぁ、詳しいことは知らないけど、テニスボールとかバスケットボールに空気入れるとき入れすぎると破裂するのと同じ原理じゃないかな?
そこには興味ないので知らない。
「――――――」
なんか手を上にあげた瞬間、『ファイアーボール』が消えてしまった。
何をしたのかはわかっている。
風魔法でただ強い風を吹かせて消したのだろう。
目で見えないし魔力も見えないけど、自分の魔術に何かされたかくらいは分かる。
だが、あいつはそんな瞬時に俺の魔力以上に込めて風魔法使えるようには見えない。
そして俺の魔術をあの短時間で消すことができる人はこの場に一人しかいない。
「……アウラか。ってことは、やっぱり洗脳か?」
これはめんどくさくなってきたな。
つまり「ここから先に行きたいなら俺の屍を超えて行け!」をやれちゃうってことでしょ?
なにそれ洗脳超便利。
……じゃなくて。
「恨むんなら洗脳された自分を恨めよー。はぁ……」
自分でもすごい重い溜息が出たとわかる。
テスト前よりも疲れる展開だぞこれ。
まぁ難易度はテストのほうが高いけどな。
「『エレキバインド』」
雷属性を持つ腕輪のようなものを作り、アウラに向けて拘束しようと放つ。
その数十二個。
本来ならバインドといっても焼けるような(というか焼けたのを実験で確認済み)痛みと体の麻痺で拘束をする目的の魔術だが、数を増やす代わりに威力は控えめにしているので肌が焼ける心配は多分ないだろ。
焼けて「女の肌は命」とか言い出したら洗脳から目覚めさせたということを盾に取れば万が一があっても文句は言ってこないだろう。
まぁアウラがそんなこと言うとは思えないけどな。
そして飛んで行って拘束しようとしたバインドが、三つは躱され、五つは風魔法で逸らされたが残り四つはそれぞれ両手両足へと向かい拘束した。
警察とかでよく見る手錠みたいに両手が一定の範囲しか動かないとかそういうものじゃないけど、麻痺するよう作ったので全身に痺れが回っているはずなのでこれでとりあえずは大丈夫だろう。
「……」
そしてこんな状況下でも何事もなかったかのようにボスは最初と同じように笑顔でいる。
しかし、さっきとは違ってアウラが麻痺で体を倒したにも関わらず何事もなかったように笑っているのでダンジョンということも合わさりひどく不気味に感じられた。
「んで、とりあえずアウラは抑えたけど……次はあんたでいいのかな?」
疑問を投げかけたけど、答えは返ってこない。
……さっきからずっと笑っていて不気味だし、ここはいっそ思いっきりやっちゃってもいいのかな?
崩壊しない程度にだけど。
『その必要はないですよ』
入って来たときに聞こえた時と同じように声が空から降ってきた。
「それはつまり、もうここが最奥でそこにいるナニカとは戦わずに望みの物をくれるということ?」
『そのとおりです』
同じように降ってきてはいるのだが、しかし入った時に聞こえた声は男の声だったのに、今は女の声に聞こえる。
記憶違いで男の声って思ってたとか?
「じゃあとりあえずそこのやつを消してよ。アウラもそれのせいで何か様子がおかしくなったし」
『そこにいるのはサキュバスと呼ばれる悪魔ですね。あなたならご存知でしょう? 日本人さん』