37話
二週間に一回投稿から随分経ちましたが、この小説の存在自体を忘れてしまわれていないかが作者の最近の心配事です。
じゃあ早く出せよと思うかもしれませんが、それは出来ないんですよ……主にやる気のせいで。
いや、やる気がないわけじゃないけど、こうやって文字をずっと打っているのがなんかなぁって思っちゃって手が付かないんですよね。
まぁそんなことはどうでも良いですよねw
それでは、どうぞお読みください
目的地は町から数時間かけてやっと着いた森。
通称「迷いの森」と呼ばれているらしい。
霧が立ち込めていて、一歩前くらいの距離しか周りを見ることが出来ないほど濃く、よく迷う人が出ることから名付けられたらしい。
まぁ、それには時期があって今は平気みたいで普通の森となんら変わりがないけど。
そんな森にロックリザードは生息しているらしい。
「じゃあ、休憩もしたしさっさとやって暗くなる前に帰ろうか」
隣にいるアウラも頷いたので早速森の中に入っていく。
ゴブリンの森でもそうだったが、やっぱり日が出てる昼なのに少し薄暗い。
夕方になる前には終わらせることが出来るといいな。
ゴブリンはどこにでもいるらしく、奥に向かって進んでいる時に何体か襲い掛かって来た。
まぁ馬鹿なのかこっちが発見できてなかった時も威嚇かなんか知らないけど泣き声をあげて、手に持った武器とも言えないような木の棒を振り回して襲って来るので、簡単に返り討ちにしといた。
他には、
普通にウサギっぽいのもいたり、蛇もいたけど、ウサギは無視、蛇は襲い掛かってきたやつだけ軽く氷魔法で冷気を浴びせたら大人しくなった。
ふっ……拙者、無駄な殺生はしない主義の故……みたいな馬鹿な事を考えながら。
だって暇だし。
そうして歩くこと数十分、木ばっかりだったのが開けていて、そこに池(大きさが微妙だから湖とも言い難い)があった。
ソラがいた森の所もあったけど、この世界の森とかでは池、湖があるのがデフォなんだろうか?
「丁度いいからここで休憩を……」
「静かに」
どうしたのかと池に向いていた視線をアウラに向けると、目線で池の方を見ろと言っていた。
再び向けてもそこにあるのは池だけ。
だが、意味ない事は言わないだろうし、アウラの視線を追ってようやく何を見つけたのか分かった。
ロックリザード一体が、池の水を飲んでいたところだった。
イメージ通り、トカゲみたいなやつだ。
距離はここから……三十メートルくらいかな?
「どうする?」
「……今がチャンス」
チャンスらしいので、アウラにやってもらうことにした。
別に、この絶好の機会で外したらどうしようとか考えたわけではない。
確実なのはアウラなので頼んだだけだ。
隣で詠唱を始め、終わったと同時にシュンと風を切る音が聞こえた。
そして一秒、二秒と待ってたら胴体が真っ二つに……なんていう事はなかった。
詠唱が終わってから五秒待っても何も起きず、ロックリザードがキョロキョロしているだけだ。
「ちゃんと当たった?」
「……それは間違いない」
風の魔法は使用者にも見えないが、使用者は自分の魔力を使ってるので何となくどこにあるのかとかは分かる。
当たったというなら当たったんだろうがまるで効いている様子はない。
「威力足りなかったんじゃない?」
「前はこのくらいで倒せた」
いや、そりゃあ個体差があるに決まってんじゃん。
同じ人間でも少しぶつけただけで骨折する人が居る反面、やたら頑丈な人も居る。
勉強は特に分かりやすく、頭が良い人も居れば頭が悪い人も居る。
「じゃあ次は俺ね」
これで失敗してもアウラも同じだったんだから文句はあまり言われないだろう。
「『ウォーターバレット』」
水の弾丸だが、ただの水の弾丸ではない。
地球にある銃の……えっと……まぁ銃打つと回転しながら飛ぶやつ(確か威力上げたりスピードを落とさない為とかだった気がする)も加えているので中々のスピードだ。
無詠唱なのは、もうアウラにはばれている、もしくはこれからばれそうなので隠すのはやめた。
いつまでも隠すのは疲れるしね。
そんな水の弾丸は中々早い(時速二百いってるんじゃね?)スピードで飛んでいき、命中。
グギャアァ!
仕留めるまでは行かなかったが、血が出てるし威力は十分だっただろう。
だが惜しいかな、当たった場所が頭とかじゃなく足なので致命傷ではなく、せいぜい動きが取れない程度だ。
まぁ動けないんだしもう一回やれば……
ギャァアアァ!!
突然、ロックリザードが泣き声を上げ始めた。
特に意味無さそうで痛いからかな?
そう思っていたら。
「……不味い。仲間呼ばれた」
「え?」
アウラ曰く、あれは仲間への合図だったらしい。
アウラの忠告(ずっと使っているとすぐなくなるとのこと)で、無詠唱はばれても魔力量はばれたくなかったので大人しく従ったが、それが裏目に出たな。まぁそれは結果論だから後からは何とでもいえるんだが。
池の周りにいたのかすぐに集まり、多くのロックリザードに囲まれてしまった。
「数は……二十六体もかよ!」
思ったよりも多かったので思わず声が出てしまった。
しかも前(池の方)は最初に居たやつも含めて五体だけだが、右は六体、左は七体、後ろには八体もいる。
完全に囲まれている。
まぁ囲まれているって言っても横にも後ろにも木があって良い感じの障害物にはなっているが。
「やるしかないかこれ?」
「……やらなきゃやられる」
ですよねー。
というかさ、一鳴き程度でこんなに集まるか普通?
「というわけで俺はあいつがこの群れのリーダーだと思うんだけど、どう思う?」
「どういうわけかは知らないけど……リーダーなのは間違いない。私の魔法効いて無かった」
あ、判断基準はそこなんですね。
まぁエンチャントなんていう厄介な補助魔法でも使って耐えたんだろう。
俺のが効いたのは、俺の攻撃が一点集中型なのに対して、アウラのは多分ウィンドカッターで面攻撃だったからだろう。
後は俺の魔力をいつもより多く使ったからだろう。
「作戦何かある?」
「一応」
流石『暴風』と畏怖を込めて呼ばれているだけはある。
「風の上位魔法のサイクロンで敵を……」
「ってそれこの森の木まで被害及ぶでしょ! そういうのは領主に怒られるから駄目だって」
今はいいかもしれないが、後のことを考えるのなら止めておきたい。
最終手段ということにしておこう。
「……他にもある」
「巨大なウィンドカッターを三百六十度放つとかはダメだよ? 木が全部なくなっちゃう」
「土魔法を使わせなければ勝機はある」
おお、まともな作戦……ではないな。
「いや、そんなのどうやって……ってまさか、俺にやれって言うのか?」
「ん」
「いや、やろうと思えば出来ちゃうけど、発動は一瞬でも維持するのに集中するから攻撃なんか来たらおしまいだぞ?」
他にも問題がある。
確かに、土を固くするだけの魔法『コーティング』を使えば、エンチャントはともかく、『アースバレット』とかは使えなくすることできるだろう。
元になる土があるから使えるのであって、その土を使わせなきゃ土魔法使いは何も出来ない。
だが、仮に使って維持してたとしても、当然相手もなんとか使おうと暴れ始めるだろう。
それを抑えるのにも魔力と神経使うからいつ突破されるのかも分からない。
イメージ的には、突っ込んできた敵を弾き返すイメージだろうか。
……うん、一対一ならともかく、一体二十六とかどこの無理ゲーだよ。
無理矢理魔力で押さえつけることも出来るには出来るが、そんなことをやっていると必ずどこか脆くなる場所が出て来て、そこからダムが決壊して水があふれていくがごとく魔法も解けてしまうだろう。
「攻撃は問題ない。ロックリザードは魔術しか使わない」
「いや、普通にあの鋭い牙とか、太くて鋭利なしっぽとかあるからそれで接近してきて戦うんじゃないの?」
「それはこっちが近づいた時だけ。ロックリザードは臆病だから自分からは近づいてこないで魔法で相手を倒す」
うわぁ勿体ないな。
あんな体してたらゴブリンに突撃しただけで殺せそうなのに、遠距離で仕留めるのか。
……だったら、エンチャント意味がないって思うのは気のせいだろうか?
「なら尚更問題だろ。二十六体が抵抗とか十秒も持たない……って『アースウォール』」
会話している途中で池の方から『アースバレット』(本来の名前は知らないので俺が名付けた)が放たれたので同じ土の壁で防ぐ。
「……時間ないから早く」
「分かったよ! やらなきゃやられんならしょうがないよな! 『コーティング』」
付近の地面に展開して地面を固定……した瞬間、そこら中でめちゃくちゃ暴れていてキツイ。
例えるなら、魚が水面から跳ねるのを蓋をして塞ぎ、それでも跳ねようとぶつかりに行っている感じか。
それが二十六体もだか流石にキツイ。
「アウラ! これはマジで早くしないとやばいぞ!」
声を出して急がせ、同時に自分にも気合を入れる。
もしここで破られたら前後左右から『アースバレット』がきて、俺もアウラも軽装なのでハチの巣に……何てことになってしまう。
蜂に巣にしてやるとかいう脅し文句があるけど、これはマジでなっちゃうのでマジで怖い。
だって全身ハチの巣って二発もあれば人間死ぬくらいの威力なのに、それが何十発も当たるんだもんな。
自分の死体が見られたもんじゃない肉塊とか、誰でも嫌でしょ?
っっ……あーマジでやばい。本当にやばい。
もう限界……
「アウラ……もうすぐ切れる……ぞ」
そこまで言い終わったとたん、遂に一か所が突破されてしまって、魔法が解けてしまった。
突破したのはあのリーダー個体みたいで、疲れて座っている俺に向かって勝利の雄たけび? をあげてから、『アースバレット』……いや、これはもう『アースボール』とでも言うべき大きさになっている魔法がこっちに放たれた。
スピードは俺のよりは遅いがそれでも疲れている俺にとっては十分早く、腕で防御するしかなかった。
それが滅茶苦茶痛くて、音は聞こえなかったがもしかしたら折れてるかもしれないと思わせるものだった。
そして、それでも次はどこから来るのかと警戒していた俺に向かって魔法を放とうとしているロックリザード二十五体が視界に入って来た。
俺の妨害が解けて余程嬉しいのか、笑うようにグギャグギャ言っているような声も聞こえた。
アウラ間に合うかな……
そんな考えが浮かんできたが、もう時間オーバーだとばかりに魔法が放たれようとして……
「『マルチ・サイクロン』」
そんな声が聞こえ、突如四方向にそれぞれ小さい竜巻が生まれた。
だが、小さいと言ってもそれはアウラの本気を見たことがあるからそう言っているだけで、これでも十分でかい。
ロックリザードを一体吸い込んだかと思えばまた一体吸い込みという事が続いていく。
「……っ!『氷の息吹』」
俺も力を振り絞ってその竜巻に向かって冷気を送った。
それは竜巻ごと凍らせ、その手前にあった木までを凍らせてしまった。
風の竜巻で落下しとかしてくれるのならいいが、エンチャントがある以上そういうのは耐えられそうな気がしたので、エンチャントに関係ない凍傷で死んでもらうことにした。
「……私の魔法で十分だった」
アウラが美味しいとこどりしやがってみたいな目で見て来る。
「念のためにだよ。これで生き残ってたら俺相当やばかったし」
なにせ、腕が痛くて魔法使うのに腕伸ばしただけでもすごい痛かった。
回復魔法は使えないので、治療は帰ってからになってしまう。
「アウラは回復魔法、使える?」
「……使えない」
「じゃあしょうがないか」
これは相当早く終わったから少し休憩しても時間はありそうだな。
「ここで休憩しないか? 正直腕が痛いし魔力使って疲れたしな」
コクリと無言で頷いて、心配だと思っている目で見て来るアウラに「大丈夫」とやせ我慢をいい、目を少し瞑ることにした。
♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢
あの後、少しの間眠ってしまったらしく、慌てて後処理をして帰って来た。
まぁ後処理と言っても氷を解除して、ロックリザードを埋めた位か。
埋めた理由は、まぁやっぱり目立ちたくないからだ。
アウラは『暴風』なわけであって、『氷雪』だとかではない。
だから、死体をみてやったのが俺だとばれてしまうので埋めたわけだ。
解体とかできたなら話は別だが、俺は勿論アウラも出来ないらしいので諦めた。
だが、依頼達成料が指定の数よりも多く倒していたので二割くらい増えていたのは嬉しい誤算だった。
そんな感じでこの依頼は終了となった。
……余談だが、腕の治療料で報酬の二割を持ってかれて嘆いていた人が居たとか。




