31話
遅くなってすみません。
寝落ちしちゃって起きたら五時前。
あの時は絶望したけど何とかなってよかったです。
いや、なってないですけど。
それでは、遅くなりましたがお読みください。
ガタンゴトンガタンゴトン。
あ、別に電車に乗っているわけじゃないよ?
まぁ大きい括りではあってるのかもしれないけど。
今、俺は馬車に乗っている。
隣町? に向かう馬車に乗せてもらっているって感じだ。
いや、俺たちと言った方が良いか。
「……」
『暴風』と呼ばれ、恐れられているアウラさんだ。
風魔法の使い手で、その実力はマジやばい。
暴風が逆に見劣っているかもしれないと思うほど半端ない。
まぁ主に恐れているのは俺だけなんだけどな。
だってさ、今は馬車に乗ってて暇なのか寝てるけど、急に一緒に行くとか言い出すし。
たまたま目的地が同じだから「じゃあ一緒にどう?」みたいな軽い感じで誘ってるならいいんだけど、普段無表情でしかも無口なアウラからはその内心が窺えないので結構ひやひやしている。
悪い事だけはおきませんように。
「おい、兄さん。ゴブリン出てきたのでよろしく」
これがフラグ回収部部長の実力だ。
立てた途端にすぐ回収する。
まぁゴブリン程度なら問題ないので良いんだが。
「おい、遠くからウェアウルフが睨んでるぞ。どうにかなるか?」
……もうやだこんな部長。
土下座でも何でもして速攻に辞めたい。でも辞められない。
「俺だけじゃ無理そうに見えたらもう一人の方起こしてください」
ここで普通なら「これくらい俺一人で楽勝っすよ!」という感じの言葉が出てくるかもしれないが、俺は違う。
見えはって失敗した時の方が恥ずかしいからな。
こういうのはローリスクローリターンでやった方が絶対得だ。
少なくとも、損することはないだろう。
馬車が止まったので降りる。
ゴブリンは三体しかいないので余裕だろう。
じゃあ速攻終わらせるか。
「『ファイヤーボール』」
三体が固まってたのでファイヤーボール一発で倒せた。
実力差を悟ったのかただ億秒か慎重なのか、ウェアウルフらしいオオカミはどっか行ったみたいだ。
うんうん、楽になるから良かったよ。
余談だが、ファイヤーボールには二つの種類がある。
一つは今やった着弾時に爆発するやつ。爆発の規模は込める魔力量で変わってくる。
二つ目は、着弾しても爆発しない奴だ。
こちらの利点は無いように思えるが、爆発しない分魔力が少なくて済むし、相手が単体ならこっちの方が威力高いのでどっちを使うかは使用者による。
まぁ俺はセオリー通りに単体には後者、団体様には前者を使用している。
「おお、やっぱり兄さん強いな。頼んで正解だったぜ」
「そう言ってくれるとありがたいです」
ちなみにこの人は弟ではなく、街で会った商人さんだ。
普段は冒険者ギルドに護衛を頼んでいたそうだが、今現在ギルドは機能停止して困っていたようだ。
それをアウラが見つけて、代わりに送ってってもらうという条件で護衛している。
まぁアウラは何もしてないけど、文句は言うまい。
だって見つけて来てくれたし、報酬はないけど乗車賃も払わなくていいみたいだし。
食事もついてきてこれは破格の条件だとアウラが言っていたが、一日二食で食事は固いパン等の保存食だ。
こういう時に日本の缶詰があったらなーと思ってしまう。
「あとどれくらいで着きそうですか?」
掃除完了したので、再び動き出してから問う。
「んーこの調子だと昼過ぎには着きそうだな」
今が昼前らしいので後二、三時間ってとこかな?
太陽の位置で時間が読めない俺は時間さえも聞くしかない。
腕時計とかないのかな?
あっても高そうだけど。
じゃあ俺も暇だし寝てるか。
♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢
「おーい。着いたぞ兄さん」
もう着いたのか。
意外と早かったな……
「もうここは街の中だけど、このまま乗っていたら商会に行っちゃうぜ?」
商会よりまず冒険者ギルドに行かなければ。
お金がもう本当にないのでないとやばすぎる。
「遅い。早く起きる」
いや、アウラもさっき寝てたし人の事言えなくない?
「それでも街に入る前から起きてる」
……うん、さっさと起きてギルドに行きますか。
アウラの案内で冒険者ギルドに向かう事三分。思ったよりも馬車とギルドの位置が近くて良かった。
「じゃあ早速行ってお金貰うか」
頷いたのを確認して、いざ入ろうとしたら出てきた人とぶつかってしまった。
結構ムキムキっぽい人だったので後ろに倒れてしまった俺は悪くないはず。
しかも相手走っていたし。
「入り口でボーっと突っ立ってんじゃねーよ!」
それだけ言い残してどっか行ってしまった。
……おれは起こっても良い奴だよね?
まぁあんなどうみても力がありそうなやつに勝てるわけないので内心だけで愚痴っておく。
「今の人危ないなー」
これだけはせめて言わせて頂いたけども。
「……多分迷宮で何かあった」
迷宮?
迷宮ってダンジョンの事だっけ?
図書館で少しだけ読んだ記憶がある。
適当に読み飛ばしながらだったから殆ど覚えていないけど。
「何でそんなこと分かんの?」
「……ギルドが騒がしい」
答えになってない答えですねアウラさん。
騒がしい=迷宮で何かあったって事はないでしょう。
ここが迷宮で何かあった時以外は騒ぐなという決まりでもある以外は。
「まあ取り敢えず俺達には関係ないからいっか」
「うん」
満場一致なので問題ないとして先に進む。
中の造りは前の町と変わらないが、ここの方が一回り広いな。
こっちの方が冒険者がいっぱいいるって事なのかな?
それともただの土地余り?
まぁこれもどうでも良い事か。
幸いなことにこの時間は誰もいなかったのですぐに受付に行くことが出来た。
「見かけねえ顔だな。依頼か? それとも他の町の冒険者か?」
え、この人受付なの? と言いたくなるような鍛えられた体をしているマッチョ。
さっきの人よりか全然こっちの方がやばそう。
あれは偽物でこっちが本物の筋肉だったんだな、うん。
……悲しい事に俺も腹筋が割れていたりとかそんなことはないんだけどな。
「他の町の冒険者ですね」
「そうか。ならこの町は初めてって事か。依頼掲示板ならあそこにあるぜ」
「いえ、他の要件です」
「何だ? ギルド長を出せってか?」
「そんなわけないですよ。これを渡せばいいと言われたので」
そう言って貰ったものを渡す。
「これは……そうか。あの町の冒険者だったか。とりあえずギルドカードを」
渡したら少し待つように言われたので待つこと数分。
奥の扉に入っていった受付の人が戻って来た。
「1200万リルだな。こんな大金無駄遣いするなよ」
そう言ってまた奥に戻ってしまった。
……え? 1200万?
聞き間違いなのか?
「アウラいくらもらった?」
こういう時は同じように貰ったアウラに聞いてみる。
「? 1000万だけど」
それが何かおかしいの? とでも言いそうな顔をしている。
「俺もそれくらいだったけど、多くないか? これ」
「……ゴブリンは大量にいた。キングもいて、ウィザード、ソーサラーまでいた。私たちはそれを討伐したからこれくらいは当然」
「当然なのか……」
良く分かんないが、まぁ貰えるものは貰っておくか。
無駄遣いはしないようにしよう。
「アウラはこれからどうするんだ?」
とりあえず目的は終わったので聞いてみる。
「……数日は予定あるから……終わったら、一緒に依頼?」
そこで疑問形にされてもな。
まぁ俺も奴隷を買いたかったし丁度いいのかな?
「わかった。じゃあ一日に一回はギルドに顔出すようにしとくから都合が付いたら伝言しといて」
勿論伝言しといてもらう人はギルド職員だ。
悪いけど、まぁ冒険者のサポートが仕事なのだからこれも仕事の内だと思ってください。
「じゃあ宿も取らないとだし、俺は行くよ」
「……分かった」
何か言いたそうな顔していたけどまた今度で良いだろう。
それより、宿を今の内に取らないと。
遅くなってからでは遅い。
今日は宿探しだけして、明日に買う事にするか。
奴隷を。
奴隷がついに現る!
主人公は誰をどんな理由で選ぶのか!
次回! 奴隷頭は俺がなる!
とまぁこんな感じに進めて行こうかと。
まだ決まってないですから変わるかもしれませんが、まぁ次回予告とあまり変わらない程度にでしょう。
奴隷頭と言ってますが、何人買うかも決めてないので、変わるとしたらこれですね。
それじゃあ、次回こそ気をつけます!(あれ? 前回も言っていたような……気のせいか)
お読み頂きありがとうございました。




