閑話03 ソラの旅の始まり
現在4時54分、なんとか間に合いました。
今回のは見ての通りゴブリンソーサラーのソラ視点でやっていくので本編には関係ありません。
それでも気になる、暇つぶし、しょうがないから見てやるよという人はお読みください。
……行ったか。
ケイには感謝しないとな。
獲物は魔物や獣だけでなく、人間もいるのだし、人間に近くなった姿の今なら簡単に近づく事もできる事になっただろう。
まぁ近づいても完璧には程遠いし、人間の町に行く事は難しいだろう。
「これからどうするか……」
ケイには北に行くと言ったが、あれは嘘だ。
ここから離れるのはもう決まっているが、どこに行くかは決めていない。
ゴブリンの特徴で寒いのは苦手だから、南に行くのでも良いしな。
まぁこの世界は北に行ったとしても大して気温なんか変わらないがな。
「当てもないし、言った通りに北に行ってみるか」
何年かかけてソーサラーになった今では大抵の敵は何とかなる。
北には強い奴も居ないと調査部隊は報告していた筈だし問題ないだろう。
「じゃあとりあえず準備始めるか」
この世界、当たり前だがコンビニなんてないし、ゴブリンじゃテント買えないし、作る事も出来ない。
そして重要な事だが、水も保存食も持ち歩くのは魔物には不可能に近い。
だから、魔物は何かしらの理由がない限り生息地を変えないというわけだ。
「ただ、それは普通の魔物だったらの話だがな」
そう、元々ゴブリンは二足歩行の人間と似たような姿で、今となっては顔や身体まで人間に近づいている。
色々と生前の知識を使う事は出来るだろう。
更に、この知能もあるからな。
大抵のゴブリンじゃ本能ばっかで理性なんてものはない。
ゴブリンキングに従っていたのもこいつに従った方が良いと考えたわけじゃなく、本能で逆らったら死ぬという事を分かっていたからだろう。
まぁそれは俺も同じなんだが。
「……よし、完成だ」
取り敢えず、簡単な釣竿を作った。
材料ならそこら中に一杯あるしな。
問題は餌がないのと、素人が作った釣竿なので、耐久性がないのとそもそも釣れるかどうかだな。
待って1時間。
まだ下っ端だった頃のように素潜りでもしようかと考えていた時に、やっと釣れた。
こうなれば後は簡単だ。
この魚を切って餌にして、また釣る。
途中で折れたり糸が切れたりとまた作る羽目になったが、竹なら何故かこの森にあったやつの余りがあったのでそれを使い、糸は冒険者の服から奪い取れば問題ない。
いや、奪うというのは正しくないか。
だってこの前の全面戦争? で冒険者の死体はいくらでもあるしな。
使える物は有効活用しないとな。
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30分で6匹、この入門用にも劣る釣竿でこの数が多いのか少ないかは分からないが、まぁこれくらいあれば昼食にも出来るし、これから作る罠とも言えない罠にも使う事も出来るだろう。
本当に罠とも言えない位のレベルだけどね。
湖から少し離れたところに来た。
穴は……半径3メートル、深さは4メートルあればでかいやつじゃない限り大丈夫だろう。
魔法でさっさとやってしまう。
メイジでは無理でも、ソーサラークラスなら無詠唱は余裕だ。
そこに冒険者の死体から服を貰って、腕を通すところを互いに縛って、その上に葉でカモフラージュと。
そしてそのうえに魚を2匹置いとけば完成だ。
布があれば良かったんだが、ないので服で代用だ。
ただ、服の数が圧倒的に足りなかったので、破ったりして結構長くなってしまったので、葉の数が落とし穴のところだけ異様になってしまったのが問題か。
いや、第一これに引っかかる馬鹿がいるかもどうかも分からないが、いることを祈っておこう。
さて、取り敢えず罠も設置したし、俺は取り敢えず昼食にしようかな。
湖に戻って余った魚を3匹食べ、1匹だけ残しておく。
1匹残したのはなんとなくだ。
理由は特にない。
ゴブリンの体だとこれだけじゃ少なすぎるが、ネームドになって進化したおかげか、胃袋も人間に近くなって燃費が良くなった。
これは地味にありがたい。
食べ終わったので罠に何か掛かっているか確認しに行く。
あまり期待が出来ないので足が思いが、確認しないわけにもいかないのでしょうがない。
罠の場所に着くと、葉がやっぱりそこにだけ異常なほどにあるが、真ん中の一部だけ、葉が抜け落ちたようになくなっていた。
……いや、まさかあれに掛かるのか?
「グギャー……」
……何か穴の中から聞こえたな。
どんな馬鹿が引っかかったのか見てみると。
「グギャ!? グギャグギャー!」
同族が落ちていた。
ゴブリンは馬鹿とか言うが、やはり馬鹿なのかもしれない……
ちなみに、「隊長!? 助けてくださいっす!」とか言っているから、きっと逃げ延びた、もしくは逃げ出したやつだろう。
前までならここで見殺しなのだが、今はもうキングも居ないので好きにすることにしよう。
「というか、どうして俺が隊長だと分かったんだ?」
「グギャギャ! (隊長は隊長っすから!)」
よく分からないが、まぁ良いか。
助けといてやるか。
「ほら、穴の中にある繋がっている服を投げろ。木に巻いといてやる」
「グギャ! (了解っす!)」
魔物だけあって弱いゴブリンでも身体能力は普通の人間より高い。
かくいう俺も、人間だった頃に比べて3倍は余裕であるだろう。
「グギャギャ! ギャギャ! (助かったっす! ありがとっす!)」
うん、素直に礼を言うのは良いことだ。
これでこんな罠にかからなければ尚良かったんだが……
「グギャギャー? (しっかし、誰がこんな巧妙な罠を仕掛けたっすかね?)」
これが巧妙な罠とかお前は本当に大丈夫か?
そして、作ったのは俺なので罪悪感がわ……かないな。
引っかかる方が悪い。
そう、俺は悪くないんだ。
「どうしてここに落ちてたんだ?」
「あの戦いの後……いや、昨日の朝からっすけど何も食べてなくて腹が空いていた時に」
魚が置いてあったので迷わず取りに行ったのか。
馬鹿か。
どう考えても罠と気づけよ!
とまぁ普通なら考えるが、それは魔物の場合だと話が変わる。
今の俺は燃費が良くなったが、元は大食いだった。
それほど食べないと空腹感が収まらないからだ。
そして燃費が悪いのに約1日半何も食べないのは辛いだろう。
「だったら1匹だけだけど魚があるから食うか?」
「グギャギャ! (食うっす!)」
♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢
「それで、お前はどうするんだ?」
魚を食べながら泣いているゴブリンに話しかける。
こういう時に名前がないのはやっぱり困るよな。
名前がないから「おい」とか「お前」とかになるし。
「グギャギャ……(特に決まってないっす……)」
ふむ、ならちょうど良いかもな。
一人旅はつまらなそうだしな。
「なら、北に行くんだか一緒に行くか?」
「グギャギャ!? グギャー! (本当っすか!? 行くっす!)」
これで2人旅になったな。
2人だと取れる選択肢も増えるから楽になったな。
「じゃあそれ食ったら行くか」
「グギャギャ! (俺たちの戦いはこれからっす!)」
……これにはノーコメントだな。
最後。ノーコメントです。
打ち切りコメントではないかもしれないしあるかもしれない……
それこそ、神のみぞ知る……ですね。
さて、次は本編1話やった後、また水曜日に閑話を一つ載せる予定なので、また読んでください。
それでは、お読み頂きありがとっす!
……間違いました。
ありがとうございました。