26話
はい、やっと長かったゴブリンもいよいよ終わりに向かってます。
そして、今回は長くなってしまったので2話に分けてますが、時間が足りなかったので先に一話あげて、明日のまた5時に載せるので、続けて見たいって人は注意です。
……ここはどこだろうか?
周りには何もない、あたり一面真っ白な空間だけが広がっている。
……あれ? どっかで見たような……
「おお、やっと気づいたか」
訂正。目の前にタクトがいた。
……え?
「何でタクトが居るんだ?」
「何でも何も、俺が呼んだからに決まってるだろ?」
まぁそりゃ自分でこんな所に来れるわけないか。
「それより、思い出せるか?」
「思い出すって何を……!」
そうだ、思い出した。
結局ゴブリンキングには勝てず、力尽きて倒れたはず。
という事は……
「そっか。俺はまた死んじゃったのか」
それならここにいる説明もつくしな。
まぁ呼んだ理由は、「おお、死んでしまうとは情けない」とかでも言って煽りに来たんだろうな。
「おお、死んでしまうとは情けない(笑)」
うっわ、すげームカつくな。
しかも(笑)とか滅茶苦茶うぜー。
「まぁ冗談はともかく、お前はまだ死んでないぞ?」
「え?」
「さっき俺は呼んだと言っただろう? 流石にこんな早くに死ぬやつにあんな事言うほど暇じゃない」
でもさ、あの後倒れて殺されたんじゃないの?
どう考えても見逃してくれるような性格はしてなかったしな。
「そこで、これを見せてやろう」
と言ってタクトが取り出したのは、一枚のディスク。
DVDでも観るのだろうか?
「これにお前が倒れてからの事もあるし、観てみるといいだろう」
いや、神ならこんなのなくても普通に空中に映像を流したりとか出来るんじゃないのか?
「いや、面倒くさいことはやらない主義だからな」
さいですか。
もう何も言いませんよ。
「別ればいい。よし、それじゃ再生するか」
そして持っていたディスクはどこかに消え、テレビが目の前に出てきた。
……もう何も言うまい。
神相手に……いや、タクト相手に一々突っ込んでると疲れるし話が進まないからな。
「聞こえてるが、心が広い俺は許してやる。さあ、観るがいい」
その言葉で、テレビがつき、映像が流れ始めた。
♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢
「だから貴様は…」
ゴブリンキングが腕を振り上げた。
その腕は映像の中の俺に振るわれたであろう腕のはず。
……というか、テレビだからかキングの声が聞き取りやすいな。
流石テレビ。
「ここで終わりだ!」
そして振り下ろされた腕。
そしてその先には人形みたいに動かない自分。
例え映像でも自分がやられる所を見たくないな。
そう思ったら、グシャ、という音とともに、腕が俺に当たらず横にずれた。
……どうなってるんだ?
「おお、危ない危ない。俺だけならまだしも、強敵倒して疲れたはずの奴にキングの相手までさせるとは、俺もまだまだだな」
「粉砕」が現れて、どうやら俺の身を守ってくれたようだ。
「ぐぬぬぬ。何故お前が生きている? あれで生きてるわけなどないだろう!」
あれが何か知らないが、もし振り下ろされた腕がマトモに当たったことを言ってるのなら、確かに何故かとは言うだろう。
それほど、あの腕は見た目ヤバすぎる。
「そうやって確認しないからそうなるんだよ。まぁ骨が二、三本は確実に逝っちまってるけどな」
おお、骨が逝っているの意味が折れたのか砕けたのかは知らないけど、取り敢えず助かった!
「そんなことより、自分の心配をしたらどうなんだ? もうその左脚は使えないだろ?」
左脚は……うん、グロいからあまり見ないようにしよう。
一言で表すなら、膝が潰されてその先が……という状態に。
そんな状態のせいで、今は膝をついている。
「ぐっ……さっきのしつこいまでの攻撃と魔法のせいか……」
人間離れしたジャンプしてたしあまり聞いてなかったかもと考えていたけど、どうやら役に立ったようだ。
というかあのジャンプの高さは流石に反則だろ。
「ふっ、人間を舐めて掛かるからそうなるのさ。まぁ俺も一人では勝てなかったし、その油断がこちらの勝利に繋がったからありがたい事なんだけどな」
まったくです。
いや、流石にあのジャンプは本気だったと信じたい。
「さてと。さっきとはまるで立場が逆転したが、何か言いたい事でもあるか? 気が向いたら覚えといてやるぞ?」
「グフッグフッグフフフフ。人間相手でなくとも命乞いなどはしない。負けたら死ぬ。それが俺たち魔物の絶対のルールだ」
「良い心がけだ。じゃあここで死ね!」
ここで一句。
悪役は いつでも逆に なるんだね。
正に『粉砕』の方が悪役のセリフだよね。
まぁそんな事はどうでも良いのでテレビに戻る。
戻った時には、膝をついているキングの頭に向かって獲物を振り下ろすところだった。
だが、ゴブリンキングは諦めていなかった。
「かかったな人間! 例え脚が無くなって動けずとも、手を動かすくらいはできる!」
えっと、右フック? を『粉砕』に向けて放つゴブリンキング。
最期の足掻きというには当たれば致命傷だろう。
そして、『粉砕』は今まさに膝をついているとはいえ高い位置にある頭に振り下ろすのだからジャンプしていて空中に現在いる。
ソロを飛ぶとか人間業じゃない事でもしない限り、この攻撃は避けられないだろう。
その腕が次の瞬間、肘から先が外れ、血とともに吹き飛んだので、空振りに終わった。
「ぐぐっ……次は何なんだ!」
この言葉がゴブリンキングの心情を表しているだろう。
だが、見えてはないけど、いきなり血とともに物体が吹っ飛ぶのは知っている。
「ナイスタイミングだアウラ!」
「……次はない。早く片付ける。」
そう、アウラだった。
そういえば、アウラはゴブリン……ゴブリンなんとかと戦ってたはず。
という事は、そっちは片付いたのかな?
「そっちがその気なら……ソーサラー! 何とかしろ!」
キングがソーサラーに助けを求めるが、その相手のソーサラーは辺りには見当たらなかった。
どっか遠くにでも離れたのかな?
「あああぁぁぁ! どいつもこいつも使えない奴ばっかだな!! チクショウ!!」
「無駄にお前が手下を突っ込ませたのが仇になったな。自業自得だと思ってお前も地獄に落ちろ!」
そうして頭に獲物を振り下ろし、ゴブリンキングの頭が……というところでテレビが止まり、消えてしまった。
「とまぁここまでがお前をここに呼ぶまでの事だな」
だから俺は死んでない……と。
「さて、俺が何故ここに呼んだか分かるか?」
「……ゴブリンキングという俺たちの世界では弱い方のやつに殺されかけたから?」
「まぁ確かに弱い方ではあるが、まずその見方をやめろ。お前よりは強かっただろ?」
……確かにそうだ。
今の俺だったら何度やってもあんな感じで負ける事だろう。
「そしてしばらく見てたが何だあの様は。今まで訓練を真剣にやってきてたか?」
やっていた。
自身をもってそう言えるだろう。
今まではだが……
「四大属性の火、水、土、風は訓練していたのは知っている。そして光、闇など一部はこっちのミスで使えてないのも分かっている。だが、雷、氷はちゃんと使えるはずだ。訓練さえしておけばだが。何故しなかった?」
「そ、それは一度使ってみたが、威力が高くてこの場所だと練習出来なかったから仕方なく……」
「それはただの言い訳に過ぎないだろう。やろうと思えば、森の中に穴を掘って地下に部屋を作ってその中で練習しようと思えば出来たはずだ。そもそも、訓練とは何のためにあるんだ? 自由に自分の力を制御し、使えるようにするためにするものじゃないのか?」
正論過ぎて言いかえす言葉がない……
「なのに何故訓練しなかったか。それは、今のままでも十分にゴブリンを倒せているし、必要ないと判断——いや、この場合は慢心というべきか――をしたからだろう。どうだ、違うか?」
確かに俺はそう慢心していたのだろう。
今ある力だけでも十分通用すると勘違いをして楽しさを優先して練習をして、その結果死にかけた。
「まぁ人間なんて今あるものに満足したらそれ以上は求めない奴もいるけどな。お前の場合は面倒で楽な方にと流されたのだろう。それに、今まで使えなかった魔法という強い力に溺れたことも原因だろうな」
それもそうだな。
チート貰ったから、少し練習して使い方さえ覚えればこの世界でも上位の方に食い込む実力だと思い込んでいたんだんな。
結局は思い上がりだったんだと思い知らされたが。
「さっきは満足したらそれ以上は求めないやつも居ると言ったが、それはこと力によっては誰もが望み、そしてごく一部にしか与えられない者だろう。中には、どんなに努力しても才能がないからと二流程度で止まってしまう者もいるんだ。それに比べてお前はどうだ。俺の力を与えて才能も渡したのに、結果努力もせずに死にそうになった。覚えとけ、ケイ。俺はお前のために二度も転生させてやるほど甘くはない。そして、努力を死にもの狂いにしているのに、才能が与えられなかったばっかりに、二流に収まっている者がいることも」
「……分かった」
結局、どの世界でも努力することは大変で、辛くて、報われない者もいるのだろう。
だが、その分俺はどうだ?
才能は与えられた。
知らなくてその才能を腐らせているのはしょうがないが、知っているのにも関わらず、努力もしないでその才能だけで思いあがって努力しなかった。
だが、幸いなことにまだ俺は生きているのだし、自分で言うのもなんだが、人間は間違いを犯して、その度に反省したり向き合ったりしてまた前に進んでいくものだと俺は思っている。
なので、これからは心を入れ替えて頑張ることにしよう。
「そうだぞ。人間は間違いながら学んでいく生物だ。だからこれを機に、同じ間違いをするなよ」
うん、ありがとうタクト……様。
「うんうん、お前が死んだら楽しみが減っちゃうからな」
……それですべてが台無しにもなったのを忘れんなよタクト。
「あれ? 様付けはしないのか?」
「あれは間違って言ってしまったんだ。人間は誰でも間違えるもの。そして、学んで成長していくから、俺はこれから様付けという間違いをしないように努力しよう」
「……色々言いたいがまぁ良い。では、本題に入るか」
「へ? まだ何かあるの?」
「当たり前だろ。死んだわけでもないのにわざわざ呼ぶほど暇じゃない」
優しいのか優しくないのか、分からない奴だな。
「優しいにきまているだろ。さて、そろそろ来る頃……呼んでもないのに、もう来たか」
そう言った直後、光の玉が現れた。
「相変わらずこの部屋は殺風景で寂しいわね。模様替えでもしたら?」
「お前の部屋は相変わらず物が多すぎて落ち着かないだろうな、ヘンデル?」
光の玉はヘンデルと呼ばれていた。
というか、光の玉と話しているタクト、何か物凄くシュールな光景なんですけど……
「とにかく、ここは無駄に広すぎて疲れるから、こっちに移動しましょう?」
「まぁどこでもいいか。おい、ケイ行くぞ」
そう言って首を摑まれ、いきなり現れた扉に放り込まれたのだった……
はい、予想した通り生きてますよ。
こんなに早く終わりません笑




