12話
ついに一日で1000を超えて、とても嬉しい作者です。
そして感想……というより誤字も来てくれたし、更に嬉しい作者です。
まぁ次こそは純粋に評価して頂きたいので誤字脱字は気をつけるようにします。
教えてくれた方ありがとうございました。
では、最後までどうぞお読みください。
「おい、起きろ」
うーん……あと五分……
「はぁー……すまないが、時間ももったいないので、恨むなよ」
はいはい、寝かせてくれたら恨まないです———
「冷たッ!」
後五分って言ったのに水をかけないでほしいよまったく。
人生で初めてだよ寝てるときに水かけられたの。
「時間がないから静かに付いてきてくれ」
何だよ寝起きから。
……あ、見張り……と思ったけど、それならこんなに早くしろとは言わないだろう。
どこか焦っていたような感じもしたし。
それに外に出た時に少し血の匂いがした。
何かあったのだろうか?
たき火の所まで行ってアベルは足を止めた。
うん、外で話すなら寒いしたき火の近くが良いだろう。
こんな些細な事にも気を配れるイケメン騎士。
……絶対モテるんだろうな~。俺の敵だな。
「少し気になる事があるんだ」
ほうほう。
何事ですかな?
「見張りを初めてまだ三時間しかたってないけど、その間にもう四回もゴブリンが襲撃してきてるんだ」
な、なんだってー!
……いや、もちろんそれがどれだけの深刻な事態かは分かってないけど、流石に多いのは分かる。
「最初は一体だけだったから良かったんだけど、三回目からは三体で群れて来ていたんだ」
つまり、アベルはもうゴブリン八体を相手にしていたのか。
うん、俺の方が勝ってるね。
毎日森でゴブリン十匹倒してるし。
「ケイもこれが異常なのは分かるだろ? だから、何があっても良いように人手を増やすために起こしたんだ」
えっとー……つまり、「俺だけでは大変、っていうか面倒だからあいつも巻き込むか」っていう事かな?
イケメン騎士は意外と腹黒だったのか……恐ろしい。
「それで、俺も少し疲れたから、次また来た時に手伝ってほしいんだ」
俺の仕事は護衛(という名の調査)だし仕方ないか。
「分かりました。手伝いましょう」
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夜も明けて朝日が昇り始めるまで。
一睡もしないでその間ずっと、ずーっと見張っていたのに何も来なかった。
喜ばしいことだとは分かっているが、どうも釈然としない。
俺の睡眠時間返せ。
「あら、二人とももう起きていたの?」
「おはようございます」
そう言って現れたのはお嬢様。
続いて後ろにいたメイドが挨拶をしてくる。
人が見張りをしている時に自分たちだけは眠っていやがって。
「おはようございます。少し見張りを増やした方が良いと思ったので」
アベルが挨拶を返す。
俺も一応声には出さずにお辞儀だけしておく。
眠くて不機嫌な声で挨拶したら後ろのメイドに睨まれそうだからな。
「そう、ご苦労様。何か問題はあった?」
「はい、見張りを初めて三時間以内にゴブリンが四度襲撃してきました。それ以降は特に問題はありませんでしたが……」
「その襲撃が気になるわね。今日はその事を重点的に調べなさい」
「かしこまりました」
考えすぎだと思うのは俺だけなんですかね。
今日もまた調査ですか。
護衛の仕事はどこに消えて行ってしまったのか。
気になります。まぁ我慢して仕事と割り切ってやりますか。
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「それで、今日はどこを調査するんですか?」
昨日のように歩き回るのは疲れるしごめんだな。
え? 割り切ってやるんじゃなかったのかって? いや、誰だって仕事は楽な方がいいでしょ?
「今日は、ゴブリンについて調べたいと思う」
「たまたまって事はないのですか?」
「それはないだろう。あの短時間で四回も魔物が来たのは俺は初めてだし、その四回だけでそれ以降来なかったことも気になる」
確かに一理あるな。
数時間で何度も襲撃しといて、俺が起きてから、一度もなかった。
つまり……俺の溢れる強さに怯えて来なかった……なんて事はないな。第一自分が強いのかどうかまだ分からないし。
アベルが言いたいことは、
「誰かが指揮をして俺たちを襲った……事ですかね?」
ゴブリンの上司的な感じの人が「あいつ一人だから襲え」って言って襲い掛かって来て、ただでさえ勝てないのにもう一人増えたから撤退したっていう可能性はあるだろう。
「敬語じゃなくて話しやすいように話していいよ。でも、誰かと言っても人間ではないだろう。ゴブリンをテイムするなら他のをテイムした方が戦闘力あるしな」
なるほど、この世界は魔物をテイム……テイマーがいるのか。
確かにゴブリンをテイムするなんて俺でもしないな。
するなら色々な小説でチートしていたスライムとか、ドラゴンとかの強い奴をするだろう。
この世界でもスライムチート過ぎて逃げたほどだし。
「それに、指揮されたって言ったら、ゴブリンの上位種やキングが産まれている可能性があるから調べないといけないしな。まぁ、そもそも指揮されてなくてたまたまって言う可能性もあるけどね」
そういって笑うアベル。
……なんだか話している内容はあれだが、何か友達と話しているように感じるな。
流石イケメン騎士、違和感なくフレンドリーに接するなんて……やっぱりこいつは恐ろしいな。
リア充は敵だ。顔にも言葉にも出さないようにしてるけど。
「そういうわけで、今日は森を調べるから、魔物にいつ襲われても良いように準備しろよ?」
草原の次は森か。
そういえば林と森ってどこで決まっているんだろうか。
面積だろうか。それとも木の数か。それともそもそもこの世界には林っていう言葉自体ないのだろうか。
木が複数あったら全部森って感じで。
日本では気にもしなかったことがこっちでは気になっているって何か不思議だな。
「ほら、テントを畳んで準備して。食事の準備もしてくれているから」
そういえばまだ何も食べてなかったな。
夜からずっと起きてて食欲より睡眠欲の方が強かったから忘れてた。
人間の三大欲求の中で一番強いのは睡眠欲だと判明したな。
逆に性欲なんて必要ないとも。
そろそろまた言われそうなのでくだらない事考えてないで準備するか。
と言ってもテント畳んで返すだけだけど。
冒険者になったらこうやって野営の準備もしたりしないといけないから思ったよりも勉強になったな。
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「……ここは問題なさそうだな。記録付けておいてくれ」
またか……
三つ目の森もはずれ——というか、問題がないって意味だから当たりともいう——だ。
やっぱりゴブリンはたまたま襲い掛かって来て、たまたま群れて行動していたんだろう。
そういえば、気にもしてなかったけど、ゴブリンの森でもゴブリンは一匹で群れてなかったな。
ボッチに一歩近い俺としては共感を覚えるが、敵なので殺してしまう。
世の中は世知辛い。諦めて俺の金になってくれゴブリン君……
そんな事を考えている間にもアベルは森の中で生態系を調べていた。
俺もゴブリン以外で初めて魔物が見れたから満足だった。
狼は良かったけど、蜘蛛はちょっと……ね。
だって一メートルは優に超してたよ。
気持ち悪いじゃん? だから見つけてすぐに不意打ちで『ファイヤーボール』で燃やし尽くしてあげた。
アベルが驚いた顔でこちらを見ていたが、きっと森の中で火魔法を使ったからか、いきなり魔法を使ったからだろう。
まぁゴブリンの森で今まで練習していたので制御は出来てるし問題ないだろう。
アベルも何も言ってこなかったし。
「じゃあ次行くか」
「また……」
後いくつあるんだろうか……
っていうか、森って同じ場所にそんなにあるもんかな?
大きさも森って程じゃないから最早林だよ林。
まぁ入り口から一直線でも外まで一時間はかかるからそこら辺はどうなのか知らないけど。
「まだまだあるからね。今日で終わらなかったら明日もやるから頑張れよ」
「また野営か……それより眠い……」
一度くらい寝かせてはくれないのかね?
まぁ仕事中に寝かせるとかそんな雇い主いないか。
三食昼寝付きとかないかな……
「次は少し遠いから一時間とはいかないくてもそれなりには眠れるよ」
今は森だけに調査を絞っているので馬車で森から森まで移動している。
歩かなくていい分楽なんだけど、それでも疲れるものは疲れる。
「そういえば、アベルは寝なくても大丈夫なのか?」
そう、この目の前にいるイケメン騎士ことアベルは、見張りから一睡もせず更に御者までやっているのだ。
御者はメイドが代わると言っても自分の仕事だと断っている。
腹黒だと思ったけど、やっぱり違ったのかな。
今も眠りたいはずなのに顔にも出さずに仕事を続けていく。
うん、騎士の中の騎士だよアベルは。
騎士と言ってもアベルしか知らないけど。
「慣れてるからね。三日とかなら流石にきついが一日なら問題ないよ」
おおー凄いな。
俺には出来ないな。
やりたくもないけど。
「じゃあ、ここの森も終わったし、次行こうか」
「分かった」
そっからまた馬車に戻り、馬車が進みだす。
お嬢様は本を読んでいるようだ。
結構揺れているけど酔わないんだろうか?
あ、ちなみに俺は酔わない派です。どうでもいいか。
「何を読まれているのですか?」
気になったので声を掛けてみる。
勿論その隣で睨んできている視線はきにしない。
「……」
無言でこちらに本の表紙を見せて来る。
そこには『生活魔法の使い方』と書かれていた。
……何だそれ。
「才能もいらない魔法なのにその年でまだ使えないのかと思っているのですか?」
どうやら馬鹿にされたと思っているようだ。
困惑していた顔からそう思われたのかもしれない。
「いえ、『生活魔法』とは何かと思ったので……」
正直に聞いてみたら、ポカンとしていた。
隣のメイドも睨むのも止めて同じようになっている。
……もしかして常識だったのだろうか。
「ん、ん! ……そんな事も知らないのですか?」
「すみません、少々閉鎖的な村から出てきたので……」
やっぱり常識だったのか。
知られて不味い事なんてないが、常識はあるのとないのとではいざっていう時に対応が変わるから早く覚えないとな。
まぁそのための奴隷って事なんだけど。
「それなのに魔法を使った……しかも無詠唱で……」
何かブツブツと言ってる。
まさか、常識知らずとは話したくないって事でどの理由で殺そうか考えているとか。
……本当にそうだったら逃げよう。
戦っても俺にメリットよりデメリットしかないし。
「……まぁ良いでしょう。『生活魔法』とは———」
話が長くなったので省こう。
まとめると、生活魔法とは生活するのに便利な魔法だそうだ。……まんまだな。
魔法は明かりをつける『ライト』、弱い火をつける『ファイア』、綺麗にする『クリーン』などなど。
それに、生活魔法は誰もが使える魔法らしい。
消費魔力も少ないからかな。
ただ、一日に数回しか使えないみたいだが。
そうこう色々と聞いている途中にもう着いたみたいで外からアベルの呼ぶ声が聞こえてくる。
こうして俺の昼寝時間が削れた。
……好奇心は猫をも殺すって本当だったんだな。
今日だけで色々な勉強になった。
色々な物を犠牲に……
♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢
「ケイ、あれを見てみろ」
そう言われたのは森に入ってすぐだった。
とても真剣な顔をしている。
そこには酷く壊れた馬車があった。
目も当てられないほどに壊されている。
「あの馬車のマークは有名な商人のマークだ。いつからか姿が消えたと騒ぎになっていたが……」
どうやら襲われたんだろうな。
そういえばお嬢様が言ってたな。
商人が行方不明って。
これでまた謎が一つ解けた。
「商人がわざわざ森に入って襲われたとは考えにくい。だが護衛を雇っているはずなのに……」
護衛がゴブリンに負けた……っていう可能性はないか。
だってゴブリンだし。
最弱な魔物として俺の中では有名だし。
まさかそんなゴブリンに負けるわけないだろ。
そんな護衛がいたら即クビにするな。
「だったら盗賊か? いや、ここら辺の盗賊は先月掃除したはずだし、そもそも馬車を壊すはずは……」
どうやら考えに没頭しているようだ。
「……ウィンドウルフにやられたのか? だが、そうするとここに馬車がある説明がつかないし……」
ウィンドウルフ。
さっきの森の中で見た狼か。
狼は基本群れるはずなのにそいつは一体だけだった。
だからだろうか? 警戒はしていても襲い掛かってこなかった。
きっと二対一で勝てないと本能的に思ったのだろう。
「……考えていても仕方ないか。じゃあ、ここも調べて行こうか」
「ああ、そうだな」
結局は調べるんですね。
まぁ逆にこんな怪しい所を調査しないで他にどこをしろっていうのもあるか。
何もないと良いけど……面倒だし。
「静かに!」
突然アベルが止まった。
視線の先は開けていて、大きな湖があった。
そしてその向こう側に、魔物はいた。
……と言ってもゴブリンだし、あいつら水を飲んでてこっちに気づいていない。
まぁ五十メートルは離れてそうだしな。
数は十体だな。
「……やっぱりおかしい。あんなにゴブリンが群れるなんて」
うーん……やっぱり俺には良く分かんないな。
そもそも弱い生物程群れるっていうじゃん?
アリとか蜂とか。いや、蜂は十分強いけど人間よりかは弱いか。
そういう考えで行くと、俺でも殺せるゴブリンは相当弱いって事だ。
そう考えると、群れてもおかしくないと思うんだけど、この世界では違うのかな?
「もう少し奥まで……! あれは!」
またかよ何回驚いてんだよ……
また視線を辿ってみると、さっきまで十匹だったゴブリンが十一体に増えていた。
たった一体増えただけじゃん。
「あの手に持っているのは杖。まさかゴブリンメイジか!?」
確かに良く見ると一体杖を持っているな。
そしてゴブリンメイジという名前からしてゴブリンの魔法使いって事か。
ゴブリンの森でも見なかったから初めて見るな。
「それが何か問題あるんですか?」
「大ありだよ! 上位種がいるっていう事は、キングもいるっていう事だ!」
……あれ? まさか俺っていつの間にかフラグ立ててた?
思ったよりは展開動きませんでしたが……まぁ動いたといえば動いたし大丈夫でしょう。
それにゴブリンキングというテンプレ。
テンプレ回収もある程度はやりたいので、まぁテンプレ飽きたって人はすみません。
この小説は読者の意表を付いていきたいので今回は許してください。
でも戦闘シーンって難しそうですよね……
何気に戦闘という戦闘はしてないですし。
スライムは逃げましたし。
まぁこれからも頑張っていくのでよろしくです。
では、お読み頂きありがとうございました。




