10話
前回に引き続き、今回も長らくお待たせしてしまい、大変申し訳ございませんでした。
ちょっとどころか結構最近は忙しく、手を付けられなかったわけですけど、次からは元通りに一週間に一話出来るはずなのでまた是非見て下さい。
ではでは、久しぶりすぎてただでさえ駄目だった腕が更に落ちた気もしますが、どうぞお読みください。
ついに、あの間違えかあの女ギルド職員のせいで受けてしまった護衛の依頼日だ。
あの日から俺はめちゃくちゃ頑張った。主に魔法を。それしか出来ないんだけどね!
そして俺は今、西門前である人物を待っている。
9時ちょうどに集合なのだが、ギルマスにあれ(脅)されたからか、元々の日本人である自分の性格からなのか、8時45分には西門に着いて待っていた。いやまぁ、45分か細かくは知らないけど。
まぁ脅してきてまで遅れるなってことは今回の相手は相当やばいんだろう。
護衛って事はそれだけ偉い奴って事なんだろう。
最悪貴族だな。
あんな簡単に人を殺すようなやつらを護衛とかいつこっちにあの魔法が向かって来るか分からないからな。
そして俺は反撃も出来ずにただ逃げ回ることしか出来ない。
怪我させたり、うっかりで殺しちゃったら気分が悪いし貴族って事で国からも狙われることになるだろう。
なので、護衛はどこかの大商人で盗賊何かが襲ってくれると俺的には都合が良い。
金払いも良くなると思うし、盗賊に襲われるっていうテンプレをこんな美味しい形で迎えられるわけだしな。
ゴーン×9
もう9時か。
もう何分も待っているのに来ないとか相手は何をしてるんだよ……
あれ? そういえば相手の顔とか分かっているのかな?
顔合わせもしてないから……これどうすんだ?
「あのー」
俺から探した方が良いのかな?
でも俺も相手の顔なんて知らないしな……
「おーいそこの君だよ」
「ん?」
俺の事か?
後ろから声が聞こえたので振り返ってみると、これまたアニメとか二次元でしか存在しないようなイケメンで、騎士っぽい格好をしている。
こっちみてイケメンだけに出来る爽やかスマイルをこっちに向けている事から、多分俺で間違いないだろう。
でも俺は騎士様に知り合いもいなければ、悪い事なんてしてないぞ?
「君がケイ君かな?」
「はい、そうですけど……あなたは?」
どうしてか俺の名前を知っているイケメン騎士。
俺の個人情報ってどうなってんですかね?
「俺はアベルだ。それで、君の受けた依頼主の護衛隊隊長を務めている」
あっれーおかしいな?
今護衛隊隊長とか言わなかった?
え? 今回本当に貴族の護衛をすることになったの?
まぁ確かにギルマスが言っていたけど、現実を見たくなかったんですよ、ええ。
本当に覚えてましたよ? ただ忙しく魔法の練習やら何やらやっていたから忘れていただけで。
今思い出したから忘れていたという過去形になるから大丈夫だろう。何が大丈夫になるのかは自分でも良く分からないけど。
「依頼主って貴族なんですか?」
きっと今の俺は震えていた声だっただろう。
それほどに俺は緊張していた。
それに気づいているのか気づいていないのか、そんな状態の俺に構わずイケメン騎士アベル……長いからアベルにしよう。アベルが答えを言ってくる。
「ああ、プランシー伯爵様の次女、ハンナ様だ」
あれ?
「確か三男って聞いていたんですけど……」
「ああ、ローラハム様はお体の調子が悪く、そこで変わって来たのが次女のハンナ様だ」
なるほど。
この世界の魔法とかは体の調子を整えたりすることは出来ないのか。
しかも伯爵なら金も人材もあるはずなのに、治せないって事は、薬もないのだろう。
宿とか見て分かっていたが、やっぱりこの世界は魔法がある代わりに科学とかが発達しなかった世界なのだろう。
まぁ重たい物を魔法で簡単に動かせるのに、機械を作って操作するっていう事の必要性が無いもんな。
むしろ資源がもったいないとかまである。
「ではケイ君、ハンナ様がお待ちになっているので行こうか」
この言葉をキラーンと光りそうな歯とともに笑ってこっちに向けて来るアベル。
やっぱりアベルは止めてイケメン騎士の方が良いかなと思ったのは、余談だろう。
♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢
そんなこんなで貴族様がいるという場所まで歩き続けて15分。
そして今向かっている所は……
「止まれ。……ってアベルか」
「ああ、さっき言った通りだから通るよ」
「もちろんだ。門番なんかが貴族様に逆らえるわけないじゃないか」
「なんかなんて言うなよ。立派に仕事をしてるよお前は」
「そう言ってくれるのは数少ないがな。……っで、お前の後ろにいるのがさっき言っていた冒険者か?」
「ああ、そうだ。ケイ君だ」
「あー……なんだ。言っちゃ悪いが冒険者なんかに見えないぞ?」
失礼な。
ゴブリンだけだけど立派に仕事はしていますとも。
そしてイケメン騎士。簡単に名前教えるなよ。この世界の個人情報ってどうなってんだ。
……何て言えるわけでもなく、街中にある門の前に来ていた。
この先はどうやら北地区。
つまり、貴族街だな。
最初っからここの門で待っていれば時間の無駄にならずに済んだのに。
それより、楽しく話しているのは良いけど、貴族様、待たせてるんじゃないの? 良いの?
「おっと、これ以上話していたら本格的に怒られるからそろそろ行くよ」
「おう、夜仕事が終わったら一杯やろうぜ?」
「気が向いたらな」
そう言ってこっちに向かって歩いてくるイケメン騎士。
っていうか、一杯やろうぜって何かかっこいいな。
決して「一杯やろうぜ?」 を変な意味で捉えてはいけないよ腐女子たちよ。
「さぁ、いこうか」
こうして人生初となる金持ちが一杯居るところにお邪魔しに行くことになった。
—――というわけでもなく、お邪魔どころか家はあるのに誰も外にいなかったからお邪魔することはなかった。
良かった良かった。
これでこれからその貴族様の護衛っていう依頼がなければな。
「そろそろ着くここから外に出る門にある馬車にハンナ様がおられる。非常に短気な人だから、気をつけて」
え? お前騎士だろ? 気をつけての前に、何とかしろよ?
何て言う前に着いてしまい、あと数十メートルもしない所に馬車があった。
あ、そういえばこんな近くで馬見るの初めてかもしれない。
「ハンナ様、連れてきました」
「……」
「はい……はい……分かりました。ケイ、馬車に乗れだってさ」
おっと、イケメン騎士、いきなり呼び捨てですかな?
いや、きっと自分の主の前だからそうしているのだろう。
そんなイケメン騎士は、俺には聞こえなかったが貴族様と何やら話していたらしく。馬車に乗れとのご指名。
馬車ってイメージだと狭いけど乗れるのかな?
言われた通りに中に入ってみると、左右にソファーみたいのが固定して設置しており、真ん中にはテーブルがあった。
うん、思ってたよりは狭くないし、直接誰かと向かい合うよりも机があっていいね。
そして右側に女が二人座っていた。
手前側の女は、メイド服を着ている事から従者かなんかだろう。
というか、メイド服あるんだな。そっちに驚きです。
そして奥側にいるのが、きれいな金髪の髪に火のように赤い瞳をこっちに向けて来ている。
服装もドレス? を着ている事から、きっとこいつが今回の依頼主の貴族様だろう。
っていうか、ドレス着てるとお嬢様みたい……じゃなくてもうお嬢様か。
これからはお嬢様と呼ぼう。心の中だけで。
「やっと来ましたわね」
開幕早々に放たれた言葉は、確実に俺にダメージを与えて来る。
嫌だってしょうがなくね?
あんなに人が多かったんだからお互いに分からなかったんですよ。
「それに、あなたって本当に冒険者かしら? 恰好がどうみても普通の人にしか見えないけど」
格好?
普通の服に普通のズボン、そして普通の靴。
うん、どう考えても普通の人にしか見えないね。
鎧着たり剣や杖を持ってたりしないし。
今まで必要なかったから買ってなかった。むしろ忘れてるまであったな。
「それに黒髪に黒目。ここら辺では見ない色ですし、珍しいですわね」
確かに皆金髪だったり茶髪、青赤ばっかで、黒髪は見なかったな。
ファッションとか興味ないから気づかなかった。
「……私に見惚れているのは分かりましたから座ったらどうかしら?」
いや、別に見惚れていたわけじゃなくて貴族を前に座って良いかどうか聞けなかったんですよ。
ほら、受験の面接とかで相手が座って良いと言わないと座れないでしょ?
あれと同じですよ。
まぁでも、とにかく座って良いとの事だからとりあえず座りますか。
「それで、まずあなたの名前は?」
え? 知らないんですか?
普通そういうのって事前に知っておく情報だと思うんだけど……
「ケイと言います」
「そう、ケイって言うのね。知っているとは思うけど、私は代理で来たハンナよ」
はい、もちろん知っていますとも。
だってあなたの機嫌を損ねたら殺されるかもしれない相手ですので。
「……」
「……」
「……」
「……」
うわぁーいきなりの沈黙ですか。
ここまで居心地の悪い沈黙は初めてだよ。
「……はぁー。男なのに気が利かないのですね。こういう時に話題提供しないなんて」
「すみません……」
しょうがないだろ初対面なんだから。
ただでさえコミュ力5の俺に、初対面相手に何を言えと。
「今日もいい天気ですねー」
「……」
おい、折角何か言ってあげたのに「あっ、駄目だコイツ」って顔でため息を吐くのですかね。
何か期待をしてるんだったら止めて下さい。
まぁ自分でもこれはないって思っちゃったけど。
「お嬢様、そろそろお時間が」
あ、今まで空気に徹してたけど居なくなったわけじゃなかったんだね。
そして俺もこの護衛が終わるまで空気に徹していたい。
「そうね。今日呼んだ冒険者に面白い話を聞こうと思ったのに、期待外れでしたものね」
初級冒険者に何を望んでいるんですかね。
話すことと言ったらゴブリンしかないですよ?
「じゃあアベル、出しなさい」
あっ、イケメン騎士は御者も担っているんですね。
隊長とか言ってたから戦闘力はある、こういうちょっとした事も出来る、更にはイケメンとハイスッペクだなおい。
やっぱり天は二物を与えずというのは嘘だったのか……
あ、それ言うと俺も神から直接命と力を貰っちゃっているから同類って事になるな。
なんてこった……イケメンリア充と同類になっているなんて……
そんな事を考えている間にも馬車は進んでいく。
俺の運命はどこに進むんだろうか?
うーん……やっぱり何か下手になってる気が……
まぁ元からだったのでいつか戻るでしょう。
そういえば、最近投稿してなかった間に、今後の大まかな展開も考え着いたんですよ。
なので、大体は出来ているんですけど、細かい所もやらないといけないので結局時間がかかりますね……
まぁこの小説は読者の予想を裏切るを座右の銘? 目標? としているので、テンプレが起こったり起こらなかったりというのが多々ありますので「な、なんだってー!」となったりしたら作者としては嬉しい限りです。
まぁ意味不明なのとかは作らず、上手く伏線張って回収するのが難しいんですけどね。
まぁとにかく頑張るので応援よろしくです。
失踪はしないのでそこは心配なく。
では、今回もここまでお読み頂きありがとうございました。
次回こそは期限通りにしたいな……