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8月22日~8月23日 震える指

 キクハラは雨の中、ミカに言われたことを考えていた。


戻らないから。ついてこないで。

その言葉を発した時の冷たい目。ここまで必死にやってきたのにすべてを切り捨てられたように感じた。


 キクハラは丘の上の公園で一晩中泣いた。


まただ。最近泣くことが多い。


親にもミカにも裏切られてキクハラの心はぼろぼろだった。

そんな自分が嫌だった。


 

 朝を迎えたキクハラは鏡の前で軽く悲鳴を上げた。


鏡にはくたびれた老婆のような自分が映っていた。一晩中泣きはらした目は腫れあがり、髪の毛もぼさぼさだ。おまけに体から異臭が発している。

そんな自分が嫌だった。



 だがそんなキクハラにもやることがあった。

(もうミカが捕まるとかそんなこと考えないで通報するしかないわ)キクハラの決心は固かった。


 キクハラは最後にミカを説得するためにミカが泊まっている民宿へ向かった。昨日二人を尾行したのだ。これで説得できなかったら通報してやる。


 

 キクハラは十一時をすこし過ぎたあたりに古びた民宿へ行った。

「吸血鬼の城」というださい名前の看板を掲げた廃墟のような場所だ。

(こんなところでミカが寝泊まりしてるなんて)キクハラはだんだんと腹が立ってきた。


 

 十分ほど待つとミカが入り口から出てきた。

キクハラは近寄ろうとしたが丸井と何か喋っていたので物陰に隠れることにした。


「ホットオーシャンアイランドはこの町のはずれにあるのね」

「ああそうだ。あまり目立たないように気を付けてバスで行く」


二人は楽しそうに話している。それにものすごくイラついた。

私が必死に連れ戻そうとしてるのにあの男はミカをたぶらかして遊園地に行こうとしている。

ミカもミカよ。あんな男にヘラヘラしちゃって。


 もうキクハラは説得をしようとは思わなかった。

捕まってしまえばいいんだ。


 キクハラは二人が向かう遊園地を最終決戦の場にしようと決心した。


ミカと丸井が乗った次のバスに乗り、海沿いにある「ホットオーシャンアイランド」に行った。


 にぎやかな遊園地はキクハラの心とは正反対だった。

ミカと丸井を捕まえることしか考えていない。

飢えた獣だった。


 信じられないほどの客の波にのまれながらキクハラは警察に電話を入れた。

サタケの家での殺人事件の時のように用件だけ言ってすぐに切った。


 キクハラはこれから二人を探すつもりだった。

何がしたいかはわからなかったがただ二人を視界にとらえたかった。


 そして警察官にとらえられるのを見守るのだ。


 キクハラは入園チケットを買った。


 第10話です。

そろそろクライマックスです。もっと続けたかったですが、もう一本連載中の話があるのできりが良いところで終わらせようと思います。

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