お披露目
部室に入ると、珍しく部員がみな顔をそろえていた。
「みんな揃っているなんて、珍しいね」
ボクが驚いた顔をして言うと、北川君が不機嫌そうに言う。
「そこの勉強女が、『今日は絶対集まれ』ってうるさかったからな。同意しなければ黙りそうもなかったし」
先輩もうなずいている。
「ああ、ちょっとすごいテンションだったな」
長谷川さんはため息をつきながら言う。
「今日は新作の発売日だったのに」
それを見ながら、布施さんはニヤニヤしながら言う。
「たまには部の仲間の活動に付き合ってもいいだろう? 一応みんな部員なんだし」
布施さんの言葉を聞きながら、石田君は微笑んでうなずいている。
「それで、今回私たちを集めた理由ってのはなんなの? サクッと済ませて予約したゲーム鳥に行きたいんだけど」
長谷川さんがそわそわしながら言うのが、なんだかかわいらしくて、ボクが思わず笑いそうな顔になると、
「そこ! 何笑ってる!」
という鋭い叱責が長谷川さんから飛んでくる。しかし、耳が少し赤くなっていて、余計にかわいらしく見えてしまう。
「まあまあ落ち着いて。今日集まってもらった理由はこれ!!」
布施さんが目の前に差し出したのは、きれいに仕上がったプリン。
「なに、このプリン? 買ってきたの?」
素人のものとは思えないくらい綺麗に仕上がっていたので長谷川さんも買ってきたものと勘違いしたらしい。長谷川さんの疑問符に、布施さんは楽しげに答える。
「今回の研究では食べ物を美味しくする方法、特に私が好きなプリンを研究してみたんだ。それで、出来上がったのが私の好みに限りなく近く仕上がった『究極のプリン』だ!!」
布施さんの答えにポカンとした様子の長谷川さん。
「ちなみにこのプリンの開発には、頼りになるメイド長にして名パティシエ石田哲也氏と、その弟子の清水夏樹氏の協力を得ております!! はい。皆さん拍手!!」
綺麗に整った、しかし、少し芝居がかった礼をメイド服の石田君がしたのを見て、ボクもぺこぺこと軽くお辞儀。
ぱちぱち……。
拍手は先輩からのものだけで、長谷川さんはポカンとし、北川君は興味なさげな表情。
そんな状況でも布施さんはあまりない胸を大きく張って明るく微笑んだ。