部室
授業が終わり放課後。講堂に向かう足取りは重いような軽いような微妙な感じ。
先輩に早くストラップを渡したい気もするし、手渡すのが気恥ずかしい気もする。
迷いながらもまっすぐに部室に向かう途中に、布施さんに出会う。
「あ、布施さん。今から部活?」
「ああ、夏樹君か。ちょうどいいところに来たね。これからプリンを部室まで運ぶんだが手伝ってもらえないか?」
布施さんのお願いにボクはもちろんと答える。
並んで歩き、家庭課室へ。その冷蔵庫から、昨日作ったすの一つも入っていない、なめらかなプリンを取り出す。その数は、全部で6つ。ちょうど部員全員分。
「……あれ?」
確かボクの記憶では、プリンは8個作ったと思うんだけど……。
ボクが疑問符を浮かべていると、
「どうした?」
と布施さんが聞いてくる。
「いや、昨日作った時より2個少ないから、どうしたのかなって思って」
ボクの問いかけに、布施さんは少し戸惑ってからいう。
「まあ、それはその、企画者権限って言うことで、それにその、にーちゃんも作るの手伝ってくれたんだから食べさせないわけには、いかないだろう?」
困ったように言い訳をする布施さんの姿に苦笑する。
なにをそんなに照れているんだか。きっとだれも怒りはしないのに。
布施さんはボクの言葉を待っているように見えたので、とりあえずこう言葉を投げかけておこう。
「おいしかった? 究極のプリン」
布施さんはキョトンとした後に、
「ああ、もちろん!! でも、今日食べたらもっとおいしいだろうな!!」
そう言って明るく笑って見せた。