遠慮
石田君が誰かという追求はそこで終わり、ボクらは久しぶりに二人並んで歩く。
少し前を機嫌よさそうに歩くほたる。
高校に入ってからほたるとぎくしゃくすることが多かった気がするから、このゆっくりすぎる時間は久しぶりで居心地がよいものに感じられた。
高校に入って、ボクらは何か変わってしまったんだろうか?だからこれまでないようなかみ合わないことがおこるんだろうか? 今のボクにはよくわからない。
「なあ、ほたる」
「なに、なっちゃん?」
軽い足取りで進むほたるは、くるりとこちらを向いて微笑む。
「部活どうだ?」
「うーん。がんばってるよ~? 次の練習試合にも出してもらえそう」
うれしげに微笑む。この笑顔は小さなころから変わらない。
「そうか。よかったな」
「うん。……その、……で、ヒマがあったら練習試合見に来てよ。がんばるから!!」
ほたるはなぜか言いにくそうな前置きをしながら言う。
「ああ、いいよ。応援しに行く」
「……本当に?」
問いかけてくるほたるの目はどこか小動物チックでかわいい。
「うん。週末は多分ヒマだし」
「本当に本当?」
なぜかしつこく聞いてくるほたる。
「ほんとだって。どうしてそんなに疑うのさ?」
「だって、なっちゃん新しく部活入ったばっかりで忙しいかなって……」
その答えを聞いてなぜか苦笑しそうになる。
「あのさ、ほたる」
「え?」
「別に遠慮することないから。ほたるが見に来てほしいって言うんなら、よほどのことない限り応援に行くよ。高校入って部活入ったからって、変な遠慮しなくていいから」
ほたるはしばらくぼーっとボクの顔を見ていたが、コクコクと大きくうなずいて微笑む。
「うん。ありがと~。なっちゃん!!」
こんな風にうれしそうに微笑まれるとどこかこそばゆいような気持ちになる。暖かくて、ほっとするようないい気持だった。