ボクの大事な友達
笑顔のままで固まったボク。
「あ、その、みてた?」
ボクは平静を装いながら、しかし内心で冷や汗を流しながら言う。
ほたるはこくんと小さくうなずいた。
「あ、そう……。そうか……」
かえしながら頭の中でどうこたえるのがいいのか全力で頭を使う。
部活の仲間だと答えるのが妥当だろうか? しかしそれではどこのだれなのかと問われることになるだろう。そうなると石田君が女装メイドだということを伝えなければならなくなり、それは信じてもらえるかどうかわからない。
しかし嘘をつくにしてもメイド服の美少女(にしか見えない人物)が隣を歩いてた理由なんてすぐに思いつくわけもない。
「えっと、ね。そのあの、あの人は友達……」
具体的なところには何一つ触れずに、友達という言葉でごまかしてみる。
「あ、そっか。そう、友達ね……」
ほたるは目を泳がせながら、いかにも戸惑ってますよという様子。
「うん。その友達なんだ。それ以上でもそれ以下でもなくて、その……。最近できた大事な友達で……」
なぜボクはこんなに言い訳がましい説明をしているんだろう?
(……後ろめたく感じてる?)
そこまで考えて否定する。何を後ろめたく感じる必要があるっていうんだ?
「そっか。大事な友達か……」
そう言ってさみしそうに微笑んで見せるほたる。
「あの、その大事な友達ってもちろんほたるも大事な友達だから、な?」
ボクは何を言っているんだろう!? なんかテンパリ過ぎてよくわからないことを口走ってしまった気が!!
しばらくぼーっとボクのことを眺めていたほたるは急にくすくすと笑いだした。
「……何いっちゃってんの。なっちゃん。おかしいの」
くすくすした笑いは、だんだん大きな笑い声に変わっていく。
「わっ、わるかったなぁ……もう。ともかくあの人は」
「……うん。わかったなっちゃんの友達ね」
そう言って少し調子を戻して笑うほたるを見て、ボクは少し安心したのだった。