そういうことがわかったのです。
「おや、何を話しこんでいるかと思ったらにーちゃん来てたのか」
話の終わった絶妙なタイミングで布施さんがキッチンに戻ってくる。
「そんで、雑談はいいけれど作業は終わったの?」
「あ、まだだよ」
布施さんの問いかけに軽く返すボク。
「なんだよ。お話に夢中で作業してなかったんじゃない?まったく」
そんな風に怒ったふりをしながらも、布施さんの口調はどこか嬉しげだ。
……これは何か企んでいるな。
「んじゃあ清水君の作業の邪魔した罰としてにーちゃんも作業を手伝うこと! 今週は私の執事なんだし当然だよね」
ふふんと笑って見せる布施さんに、お兄さんはふっと気の抜けた柔らかいほほえみを浮かべた。
「ああ、そうだな。手伝わせてもらおう……いや、手伝わせていただきます」
その答えに怪訝そうな顔をする布施さん。
「いやに素直じゃない……。私のいない間に何かあった?」
「「「いいえ、何もございませんよ」」」
石田君、布施さんのお兄さん、ボクの声がきれいにそろって、自然と笑い声がおこった。
「なになに、本当に! 絶対何かあったでしょう!? 教えてよ!!」
怪訝さに少しの不機嫌さを加えて、布施さんは言う。だけどボクは答えずにただ心の中で思う。
特別なことはないよ。ただ布施さんのお兄さんが布施さんのことを大切に思っていることを知っただけだよ。