デートじゃん。
「べっ、別に大したことなんてないです!!」
なぜか声を荒げる長谷川さん。
「大したことがないならちょっとしたことはあったわけか。それじゃあそいつをお話ししてくださいな」
布施さんはすかさず揚げ足を取りに行く。
「いや、その…」
「うん?どうした?大したことじゃないんだろう?いうてみい?」
布施さんの口調がドラマの中のやーさんみたいになっている!!
「ちょっと布施さん!!なんかおかしいよ。これ。長谷川さん困ってるじゃん」
「それじゃあ、清水君が教えてくれるわけ?なにがあったか?」
「えっ、ええ。別にいいですよ」
ボクは昨日の出来事を頭に思い返して、特に話して問題があることは思いつかなかった。
「実は昨日、ゲーセンでイクチオステガ、あっ、先輩にマスコットを作ってほしいって言ってもらった古代生物なんですけど、そのモチーフにちょうど良さそうなフィギュアがゲーセンのUFOキャッチャーの景品にあるのを見つけて、とろうと頑張っていたんです」
ボクの言葉を聞いて先輩が少し驚いたような顔をする。なんでだろう?
「でも、ボクUFOキャッチャーとかほとんどやったことがなくて、全然取れなくて…。そしたら長谷川さんがボクのへたくそさを見かねて、変わりに商品を落としてくれたんです」
なぜか少し頬を赤く染めて、うつ向いたままの長谷川さん。
「それで、お礼ってことでボクのおごりで一緒にゲームして…」
「…あっ!!余計なこと言うな!!」
長谷川さんが口をはさむ。
? ボク何かまずいこと言った?
「それってさ、まるっきり…」
「デートですね」
布施さんが言った言葉を、穏やかな口調で引き継いだのは石田君。
「…でっ!?」
ボクが驚いた表情で固まっていると、石田君が続ける。
「普通に考えて、高校生の男女がゲーセンでUFOキャッチャーに、ゲームとかデートにしか見えないでしょう。しかもほとんど初対面なんて、ナンパ…いや、この場合逆ナンでしょうか?」
石田君はそこで布施さんの方を向く。
布施さんは、何か深刻なことを宣告するように重々しくうなづいた。
「…リア充爆発しろ」
デジカメを覗き込んでいて、会話なんて聞いていないと思っていた北川君が小声で何か言ったような気がしたけれど、よく聞き取れなかった。
長谷川さんの方を、ひきつった笑顔を浮かべながら向く。
彼女はボクに向かって、「バカ!!」と眼力を飛ばしながら、顔は真っ赤になって震えているという、器用な表情でこちらを睨んでいた。