UFOキャッチャーと再会
先輩達にそう告げて部室を出てきて早1時間、ボクはイクチオステガにふさわしいモチーフをただの一つも見つけられずにいた。世の中には、哺乳類のキャラクターはあふれているが、こと、爬虫類や両生類のキャラクターなどというものはほとんど浸透していなかったりする。いくら歩きまわったところで、ちょうどいいモチーフがそう簡単に見つかることなど…
「あった…」
思わず口からこぼれた言葉。
目の前にはゲームセンターと店頭のUFOキャッチャー。
そして、UFOキャッチャーの景品として置かれている、両生類とも爬虫類ともつかない、ひれのついた足を持った、トカゲのような生物のフィギュア。
どうやらそれは、今はやりのPFPソフトである、「モンスターバスター」通称「モンバス」の敵モンスターらしかった。
フィギュアの箱に書かれたその造形、その形状、そしてとくにそのひれの形が、さっき先輩に見せてもらったイクチオステガのイメージにぴったりだった。
(これだ!!)
ボクはこのキャラクターを落とし、先輩へ送るマスコットの参考にすることに決めた。
15分後、ボクは約2000円をどぶに捨てたような状態になっていた。落とせない。どうしても落とせないのである。配置が鬼畜としか言いようがない。やればやるほど落とせる気はしなくなっていく。
それでも、とボクが決意を固め直して、なけなしの夏目さん2枚を両替しようとした時、突然声がかけられる。
「へたくそ」
その声に聞きおぼえがあるような気がして、声が聞こえてきた後ろを振り向くと、そこには…
この間青春部の説明会で先輩の話をこけ下ろして帰って行った。細身でメガネの少女がそこに立っていた。