似た者同士
朝の登校が憂鬱になることはよくあったけど、こんなに学校に行くことが気が進まないのは珍しかった。いつもの時間に家を出ると、ほたるにあってしまう気がして、少し早めに家を出た。
いつもの曲がり角。ほたるの家への一本道。いつもより10分早い時間。いつも一緒に登校することになったのは、きっとボクもほたるも、毎日それぞれが同じ時間に家を出て、同じ時間にこの角にくるからだ。だから少し時間をずらせば、きっと逢わないはずだった。
「「あっ!?」」
目と目があって立ち止まる。目の前に立っているのは、会うはずがない幼馴染。
なんで時間をずらしたのにあってしまったんだろう…って考えるまでもない。ほたるもボクと同じ気持ちで家を出る時間をボクと同じだけずらしてきたんだ。
「ふふっ」
ほたるはなぜかおかしそうに目を細めた。
「ふふふっ…」
ボクもなぜだかつられて笑ってしまう。
「なっちゃん珍しいね?こんな時間に登校?」
「ほたるこそ珍しいな。なんかあるのか?」
ほたるがボクを避けたように、ボクもほたるを避けようとした。そして鉢合わせ。
おんなじように考えて、おんなじように動いた。
っていうことは、きっと今ほたるはおんなじことを言おうとしている。
「「昨日はゴメン」」
思っていたこと、言いたいことが同時に口からこぼれ出た。
そして、やっぱり思わず笑ってしまう。
「一言で解決なんだもん。なんか変に心配してたのがバカらしくなっちゃった」
「まったくだ。ほたるとケンカなんて昔はしょっちゅうだったのに、久しぶりだから心配しすぎちゃったよ」
やれやれ、という感じでお互いに胸をなでおろす。昔からケンカをしても1日後にはなんとかなっている。だからこそボクらはいまだにこうして幼馴染でいられるんだろう。
「なっちゃん」
「…なに?」
「ひょっとして私たちって似たもの同士?」
「…かもなぁ」
ボクの答えを聞いたほたるは、機嫌よさそうに調子っぱずれの鼻歌を歌い始めた。