青春部(仮)って…なに?
「えっ?えっと?えっ?」
疑問符を連発しているほたるの様子を見ながら、ボクはなんとなく楽しくなってくる。
「青春部、だよ。ほらこれ」
ボクは今朝先輩にもらったビラをほたるに見せる。
「ああっ!!これって今朝なっちゃんが副会長にもらってたやつだ」
「うん。そう。なんとなく気になってさ、説明会行ったんだけど、東雲先輩の説明に妙に感銘を受けてさ、試しに入ってみることにしたんだ」
「へぇ…東雲先輩の言葉に感銘を受けて、ねぇ…。先輩の言葉っていうか、先輩自身の魅力にひかれたんじゃな~いの?副会長美人だもんねぇ~?」
『わかってますよ~』と言いたげなほたるの顔つきに、なんとなくむっとしてしまう。
「そんなんじゃないよ。東雲先輩は確かに美人だけど、それよりも部活の内容の方がボクにとっては魅力的」
「ほう…それじゃあその活動内容教えてよ」
ほたるに言われてボクは答える。
「うん。それはボクの場合ならマスコットとかぬいぐるみ作りを満喫する」
「手芸部じゃん」
すばやくて的確な突っ込みが一瞬にして入ってくる。さすがだ…。
しかし、その返答は想定通り!!
「そう。みんながマスコット作りをしているだけならただの手芸部だし、ボクが一人で作っているならいつものボクだ。でも、青春部は違う。青春部はみんながみんが好き勝手なことをする」
「…どういうこと?」
「例えば東雲先輩。東雲先輩の趣味は化石掘りだそうだ」
「…はいっ!?」
予想通りの素晴らしいリアクションありがとうございます!!
「そう。そうなるよね。ボクの趣味に関しても、なにも知らない人が聞いたら、きっと『へっ!?』ってなると思う。そういう世間的に見て、変な趣味、面白い趣味、ってのを持っている人が、周りに気がねとかせずに自分のやりたいことに情熱を注いで存分に自分なりの青春を謳歌する部活。それが青春部」
「…えっと、集まる意味はあるのかな?」
その質問への回答はボクなりに用意してある。
「一つは自分と同じ趣味じゃなくても、趣味の話をできる仲間が部活いるっていうのは楽しい。その二、部活っていう居場所が高校生活にあるっていうのは居心地がいい。その三、部活を理由にいろいろな目、例えば友達いないのか?っていう先生の目とか…そういうのから逃れられる。最後に、やっぱり好きなこととはいえ、一人でずっとやってるのはさみしい」
だいぶ先輩の説明とかぶっているけど、それはボクの本心と近かったからこそ、通じる部分があったのだろう。
「一人?」
「えっ?」
なぜか少し怒ったふうな様子のほたる。
「一人だったのかな?私、なっちゃんと幼馴染なりに仲良くできてるって思ったけどさみしかった?」
「えっ、いや、そういうことじゃなくて…ほら、マスコットの話とかしてもわかんないと思ってできなかったからそういうことで…えっと…」
また変な空気になってしまった。この空気になってしまったときは、気安くて過ごしやすいはずのほたるとの時間がひどく居心地が悪い。
「わかんないって決めつけないで話してくれたらいいのに!!私だってわかんないって知ってたけどフソフトの話とかめちゃくちゃしてたし!!変な遠慮しないでよ!!勝手にさみしくならないでよ!!」
ほたるは叩きつけるように言って後ろを向いた。
彼女の言葉の後にとても居心地の悪い空気が流れた。それを察してか、ほたるはそっぽを向いて言った。
「私こっちに用事あるから。…突然怒鳴って、ゴメン」
そう言って走り去っていく彼女の後姿と跳ねるように動くポニーテール。
それを眺めながら、申し訳ない気持ちと一緒に、彼女が行ってくれてよかったと思っている自分に気がついたとき、ボクはボクのことを心底軽蔑した。