青春部(仮)説明会(下)
「ははぁ…なるほどですね。なかなかよく考えられたいい計画じゃないですか?部活という集まりを隠れ蓑に、人目は気にすることなく、趣味に取り組む。いいと思いますね。ははぁ、考え付かなかったなぁ…」
窓際の女子生徒が言う。
「なるほど…それなら、悪くないか。いや、むしろ俺にとっては好都合…」
これまで一言もしゃべらなかったイケメン男子生徒は、何やらぶつぶつと呟き始め、
メイド服の彼女は何もしゃべらず、ただニコニコしていた。
ボクを含め、先輩の説明に対して多くの生徒が好感触といった感じだ。
しかし、そんな中で一人不機嫌な生徒がいた。例の、細身で眼鏡の彼女である。
「気にいりませんね。その考え方」
彼女はそう言って鞄を手に取ると、木製の扉の方へ向かって行った。
そして、出口でこちらを振り返り、吐き捨てるように言う。
「気にいらないです。その考え方。まわりに仲間がいないからって、やたらと群れようっていうその魂胆がまず気に入らない。やりたいことがあるなら一人でやればいいじゃないですか。なんでわざわざ集まるんです?居場所なんて無くても、別にわたしは困りません。副会長が直々に声をかけてきたからと思って来てみたら…くだらない。私は帰りますよ。部の登録に必要な人数なら、私がいなくても足りるでしょう?」
…バタン
大きな音を立てて扉を閉じ、眼鏡の彼女は去っていった。
「くだらない、か…。ちょっと落ち込むな」
そう言って弱弱しく笑った先輩を慰める言葉を、ここにいる人間は、ボクを含めて誰ひとり持っていなかった。