1.始まりはいつも
―このゲームでのGAMEOVERは死を意味する。
『剣』こそがこの世界での生き残る道。
『剣』こそが力の象徴。
『剣』こそが全て。
そう、この世界で生きる者は皆が『剣』を持つ。
この世界の名は、『フラディール』。
剣と剣が交じ合う世界・・・・。
問題と言えば、この世界がゲームの中ということぐらいである。
今やこの世界の一部である、『夢灰和奈』はある時、ゲームの世界に入ってしまった。
それは、追々説明することになるだろう。
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「よし、終わり。」
俺は両手に持った2本の愛刀を背中の鞘に収めた。
俺はある時、ゲームの中に入ってしまった。
俺の他にもここに来た奴は沢山いる。
どうやって出ればいいのか分からないけれど、生きるしかない。
この世界で。
「もういないよな。」
そう言いながら、辺りを見わたした。
先程、モンスターに襲われたからである。
「まさか、土の下に隠れてるとはな・・・・。」
森の中を歩いていた俺は、いきなりモンスターに襲われた。
モンスターの容姿は、青色の鰐が二足歩行になり、半魚人の様な姿だった。
モンスターの名は〈ブルーアリゲーター〉。
Lv53
俺はそれよりもLvが格段に高いので、不意を突かれても楽勝だ。
Lvとは、ゲームでよくある強さの値だ。経験値がある程度増えるとステータスがUPする。その経験値を増やすには、モンスターを倒すしかない。
「さて、そろそろ帰るか。」
空は夕焼け色に染まり、星がちらほら出ていた。
「さて、どうやって帰ろうか。」
俺はアイテムを使って帰るか、歩いて帰るか迷っていた。
アイテムとは、ゲームでお馴染の回復アイテムや俺が使おうか迷っている転移アイテムがある。他にも無数に存在する。
「よし、決めた、歩いて帰ろう。アイテム勿体ないし。」
転移アイテムはそれ程価値は高くない。
でも、俺はそれを使わずに帰ることにした。
意外と俺の拠点としている町は近いしな。
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俺が町に着いた頃には、辺りはすっかり暗く染まっていた。
しかし、町は活気で溢れていた。
町の名は『メガリス』。
自然と鉄鋼の多い町だ。
町全体の面積はかなり広い。
「いつ見ても、騒がしい町だ―」
「よう、カズじゃんか。」
「―な。ん?」
俺の言葉を遮って、話しかけてきたのは俺の知り合いの『星月屡架』である。
見た目は、長身でスラッとしている。瞳は凛々しく輝き、鼻は高い。全体的にいい顔つきをしている。なので、もてる・・・・。
俺はというと、童顔の2、3歩手前といった感じだ。・・・・憎いぜ。
「で、何の用なんだ、ルー君」
「その呼び方はやめろ。」
何故、ルー君というあだ名になったかというとある女性につけられたのが始まりである。
その女性とは、屡架の姉の『星月明華』である。
「いいじゃんかよ~。」
「よくない。恥ずかしいだろ。それよりもお前は相も変わらず同じ服だな。」
俺の服は、黒いレザーコートに黒い長ズボンといった感じだ。
「モンスターから身を隠すにはいいんだよ。」
「防御力は?」
「気にしない。」
といった感じの会話を幾度となくした。
俺の服は防具ではないので、防御力が低いのは当たり前である。
「じゃ、俺そろそろ行くよ。」
「何処か行くのか?」
「ちょっと、モンスターの素材の換金にな。」
モンスターはある一定の確率でアイテムを落とす。
それはモンスター自体の素材であったり、アイテムであったり、時には、レアなアイテムや武具といったこともある。
「お、それなら一緒に行こうぜ。丁度俺も換金に行こうと思ってたところだ。」
「あぁ。」
曖昧な返事を返しながら、俺は町の中を進んだ。
町はもう夜中に差しかかったというのに人通りは増える一方だ。
でも、今日は少し違った。
「何の騒ぎだろうか?」
「行ってみるか。」
行ってみると広場の真ん中で揉め事が起きていた。
「おいおい、もっと高く買えだと!?できるか、そんなこと!」
「安くでいいですから、許してください。」
少しゴツイ体にそれに合う顔の男と少しひょろりとした男が言い争っている。
・・・・と言っても前者が一方的だが。
「おい、また揉めてんのかよ、ジーナス。」
俺はその男『ジーナス』を知っていた。
何せ、俺がモンスターの素材を換金しようと向かっていた店の主人なのだから。
彼もまた人間である。
「よう、カズナじゃないか。ちょっと、今とりこんでてな。」
「また安値で買い取ろうとでもしてたんだろう。」
「あたぼうよ。」
「あたぼうよってお前・・・・。」
ジーナスという男はこういう男である。
「安くでいいって言ってるのに何でそんなに迫ってるんだ?」
「腹の虫が収まらねぇんだよ。」
短期と言うか怒りっぽいというか・・・・。
どうも商売には熱い男である。
「それより、俺の方も換金頼む。」
「ああ、分かった。」
そういって、ひょろりの男と速攻で取引を終わらせてこちらに向かってきた。
「で、今日は何の素材だい?何時もみたいにいい物頼むぜ。」
「ああ、これがそうだ。」
そう言って、ポーチから素材を取り出してジーナスの前に差し出した。
「ブルーアリゲーターの皮にバルーンラビットの耳に・・・・こ、これは!」
驚くのも無理はないだろう。最後の素材は―
「フェニックスの涙じゃねぇか!よくもまあこんなもんを。」
フェニックスの涙とはフェニックスより稀に取れるレア素材である。
効果はHP・MPそれに状態異常の全回復だ。
MPとはゲームでお馴染の魔法を使う時のポイントである。
状態異常は麻痺や毒やなんやら、とにかく沢山のステータス異常である。
「意外とあっさりと取れたぞ。」
「おめぇはいつも思うが、運がいいな。」
「それよりも屡架の方も換金してやってくれ。」
「ああ、分かった。」
そう返事をすると、屡架の方へ向かって行った。
俺の手には換金された2万ジェルが置かれた。
ジェルとはこの世界での通貨の単位である。
「よし、そろそろ行くか。」
「カズ、またフィールドに行くのか。」
「ああ、当たり前だ。」
「少しでもLvを上げて、7剣神を倒さないと。」
7剣神とは、この世界から出る鍵でもある存在だ。
それぞれ特有の『剣』を持ち、とても強力な存在だ。
しかし、7体全員を倒せばこの世界から出られる。
7剣神は何処にいるか、どんな姿なのかも定かではない。
「無茶ばっかりしてると、死ぬぞ。」
「だからこそ一刻も早く、この世界から出ないといけないんだ。」
「でも、お前がやらなくても・・・・。」
「ふん。じゃあ、誰がやるんだよ。」
「・・・・。」
「待ってても仕方が無いんだ。自分でやらなくちゃ。」
そう言って、俺はフィールドに向かう為に大通りに出た。
そう、俺は生きてこの世界から出ないといけない。
必ずあのバカ親父を探し出して、ブッ飛ばさねぇと。
俺には家族は・・・・いない。
全員親父に殺された。
俺を残して・・・・。
理由は定かではない。
理由があろうとなかろうと、殺したことには変わりはない。
絶対ブッ飛ばす。
゜・*:.。..。.:*・゜゜・*:.。..。.:*・゜
「このフィールドも久しぶりだな。」
俺が来たフィールドは、辺りには砂しかない砂漠のフィールドの『フレリス砂漠』だ。
元の世界の砂漠にある様な仙人掌は見当たらない。その代わりに青くぶにょぶにょしたものが見られる。
このぶにょぶにょした物体は『リフレッシュスライム』といって、その中に入ると体の水分が回復するという優れたものだ。いわば自然の産物だ。
「それにしても、ここは熱いな。ヒー。ヒー。」
「そういえば、昔は酷い目に合ったな~。」
その酷い目と言うのは、もう熱すぎて『リフレッシュスライム』ばかり使っていたら、水分が多すぎてそれこそぶにょぶにょのちゃぽちゃぽになってしまった。
「お、思い出したくねぇ~。」
「さて、独り言も程々にして行きますか。」
「―っ!!」
「カ~ズナ君♪」
「何だよ、ユヅキか。」
「何だよじゃないよ~カズナ君。」
こいつの名前は、『桜花邑月』。
顔は丸っこく卵の様な形で、鼬の様な栗色をしている。翡翠の様な瞳は「綺麗」と感嘆の声が出そうなほど、高貴な光を放っている。神様が精魂込めて創ったとしか考えられない閑静な顔立ちである。それに純粋な水の様に透き通った声をしている。
昔、あることがきっかけで知り合った。
そのきっかけとは、『ツガイリュウ』の殲滅作戦。
『ツガイリュウ』とは、夫婦2匹で行動する竜のモンスターである。
その『ツガイリュウ』が大量に発生した時に町や村等に危害が加わらない様に殲滅しようという作戦の時に知り合ったのだ。
「こんな所で何してるの?カズナ君。」
「修行だよ。」
「私も手伝うよ。」
「いや、いい。俺は1人の方が都合がいいし。」
「ぷ~、いいじゃない。これでも『ゲームクリア推進組』の一員なのよ。」
「フフフ、そこまで言うなら手伝ってもらおうじゃないか。」
「あそこにいる『ネバープラント』を倒してもらおう。」
『ネバープラント』はそこまで強くないが粘々している。とにかく粘々している。
「ひゃわっ!酷いよ、カズナ君。私がああいうの苦手だって分かってるくせに。」
我ながら、酷いとは思う。
しかし、今の「ひゃわっ!」が聞けたからそんなことはどうでもいい。
「冗談だよ、冗談。」
と、微笑しながら言うとユヅキは「もー」と膨れてしまった。
「じゃ、俺はそろそろ行くな。」
「あ、待ってよ~。」
何か同行されることになった・・・・。
ムムム、ま、いっか。
そして、ある人影に気づいた。
「あ、あいつらは!?」
「む、どれどれ?」
俺達の前方に軍人の様な隊列で歩く者達がいた。
「あれは、『メビウス』の連中じゃないか?」
「うん、そうみたいだね。」
『メビウス』とは、『ゲームクリア推進組』とは別のクリア団体だ。
それぞれ、特徴的な空色の鎧を着ている。
「何でこんな所に?」
「分からないわ。」
そう話していると、『メビウス』の連中は『フレリス砂漠』の真ん中にある、ピラミッドの中へと消えた。
「何故、あんな所に行くんだろうか。ついて行ってみよう。」
「そうだね。」
そう言って、『メビウス』の連中に気付かれない様に後を追って、ピラミッドの中へ入った。
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(前に調査隊の言った通りの構造だな。)
調査隊とは、フィールド、ダンジョン等の地形、構造の調査をする部隊である。
(ム、あいつら壁を触って何をしてるんだ?)
壁にある赤い紋様を回したかと思うと、壁は音を立てて開いた。
((か、隠し扉!?))
驚くのは当たり前である。調査隊の報告には、隠し扉の事など一切言っていなかったからである。
(でも、何であいつらは知っているんだ??)
謎は謎を呼ぶばかりである。
そんなことを思っている間に『メビウス』の連中はサクサクと隠し扉の奥へと進んで行った。
「ユヅキ、行くぞ。」
「オッケー♪」
隠し扉の奥は、不思議な光景だった。
中は部屋になっており、違う次元に来たかの様に思わせるようだった。
実際にこの次元だけ、拒絶されているのである。
辺りは無数の粒子が飛び交っていて、空間がねじ曲がっていた。
「な、何だここは!?」
「ここ凄いね、カズナ君。」
凄いどころではない、異常だ。
そこで、ふと引っ掛かった。
「『メビウス』の奴らは何処だ?」
「う~ん、見当たらないね。」
ユヅキが言葉を発した直後、俺達の背後に何かが現れた。
顔は体の隅々まで覆っている紫色の鎧で見えない。いや、顔は無い。鎧の中は空洞だ。
そして、奴はこう発した。
「我ワコノ世界ノ『7剣神』ガ1人『幻惑ノ剣』コト『Sword of dazzle』ナリ。」
「し、7剣神だと!?」
ユヅキも驚きの表情だった。
その『Sword of dazzle』はこう続けた。
「我等ハソレゾレ特有ノ剣ヲ持ッテイル。」
「我ワソノ中ノ『幻惑ノ剣』ヲ持つ者ナリ。」
「我ハ幻ヲ見セル者。」
「まさか!さっきの『メビウス』の連中は幻!?」
「それだったら、説明がつくね。」
くっ、ぬかった。俺が幻如きに騙されるとは!
「汝ハ我ト戦ウコトヲ望ムカ?」
「何を言って―」
いきなり、俺の頭上に剣が振り下ろされた。
「ーーーーっ!!」
俺はユヅキを抱いて横っ跳びをし、辛うじて避けた。
奴の剣の刀身は床に突き刺さった。
その刀身を見てみると、驚いたことに刀身から霧が吹き出ていて、刀身が全く見えない。
霧=惑わせる
と、いったとこだろう。
俺は起き上がると、相手の頭上に表示されるLvを見執った。
頭上には、HPバー、MPバー等も表示されている。
Lvを見た途端、俺は驚いた。
「Incapable measurement(測定不能)だと!?」
「カズナ君、あいつ相当やばいよ!」
今まで、測定不能なんて聞いたこともない。
出口も塞がれてるし、どうすれば・・・・。
ま、答えは出ている。
「ユヅキ!何処か隅っこへ行け!」
「どうするの!?」
「やるだけやってみる!」
「私も援護するよ!」
と、言うと腰に差していた細身の剣を取り出した。
『セイント・リシッティアーズ』というらしい。
「頼むぞ!」
そう言うと、俺は背中の鞘から2本の愛刀を抜いた。
どちらも剣である。
「いくぞ!」
言い終わらないうちに、俺は突進を仕掛けていた。
この世界では、技名を叫ぶとそれに反応して体が勝手に技を繰り出してくれるという便利なシステムがある。
「Night Destruction!!」
そう叫んだ瞬間、閃光の様に俺の剣が輝いた。
俺の2刀による46連撃が繰り出される。
脇腹
腕
頭
足
胸
首
へと向かい、俺の斬撃が飛ぶ。
しかし、奴は鎧に少しかすり傷を負っただけであった。
「何だと!?」
「我ニハ勝テン。」
「くっ!」
「デハ、我カラモ攻撃スルトシヨウ。」
そう言うと、奴の剣から今まで以上の霧が吹き出た。
そして、奴の体を包んだ。
「き、消えた!?」
「後ろだよ、カズナ君!」
「なっ―」
と、驚いた瞬間奴の剣が俺を貫いた。
HPバーがかなり減った。
「カ、カズナ君!!」
ユヅキが叫んだ。
もう・・・・キレた。
「あ~もう本気でいく。」
そう、力のない声で言うと背中ではない腰に差してあった2本の剣も抜いた。
「ユヅキ、ちょっと離れてろ、危ないぞ。」
「う、うん。それより大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。このくらいはな。」
「じゃあ、ちゃんと離れてろよ。」
そう言ったら、ユヅキは離れて行った。
「・・・・いくぜ。」
俺は普段は2刀流だったが、本気になった俺は―
「4刀流!!!」
そして、4本の内2本を宙に投げた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
そう言って、俺は奴に詰め寄った。
「フン。何ヲスルカト思エバ―」
俺は奴の言葉を遮るほど、すさまじい攻撃を浴びせた。
まずは最初の様に2本で攻撃を仕掛ける。
「Night Bullinger!!」
先程よりもすさまじい連撃を浴びせる。
そして、先程宙に投げた2本の剣と手の2本を交換する。
これで、4刀流の完成だ。
「Night Force Crusher!!!」
「クッ、我ガヤラレルナド!?」
「フッ、これで終わりだ。デジタルに戻りな。」
「我ガ我ガ我ガ我ガ我ガ我ガ我ガ我ガ我ガ我ガ我ガ我ガ―」
そう言って、スッと消えた。
「ふぅ~これで終わった。」
「やったね、カズナ君。」
ユヅキが飛びついて来た。
「ああ、何とか終わった。」
「それじゃ、ここから出よ。」
「でも、どうやったら―」
言い終わらないうちに俺達の体も光に包まれて、何処かへ飛ばされる感覚がした。
そして、『レグリス』の前に降りた。
「意外にあっさり着くのな。」
「そうみたいだね。」
「まずは傷を治さないとな。」
「かなりやられたもんね。」
そう言って、『レグリス』の町の中に俺達は消えた。
『初めまして』ですね。初投稿になります。
展開が自分でもよめませんww
でも、楽しんでいただけたら嬉しい限りです。