03_からかい
教室のざわめきの中、俺は机の前で、さっきの二人との約束を思い返していた。
三人と屋上でお昼を食べる――ただそれだけのはずなのに、なんだか落ち着かない。
「ねぇ、湊〜」
背後から元気な声が飛んできた。振り向くと、笑顔が眩しいクラスメイトの御薗彩葉が立っている。
「今日のお昼、誰かと食べるのかなぁ?」
肩を軽くつつかれ、思わず頬が熱くなった。
「白羽と紫乃、三人と屋上で食べる予定だよ」
それを聞いた彩葉は、ニヤリと笑みを浮かべる。
「へぇ〜、屋上で三人? なんだか楽しそうじゃん!」
その会話を隣で聞いていた友人の滝本誠が、耳打ちするように囁いた。
「お前、あの二人に好かれてんなぁ。で、実際どっちに惚れてんの?」
「何を言ってんだお前。屋上で昼飯を食べるだけだって!」
即答すると、誠は俺の肩を叩きながら笑った。
「お前やっぱ面白えなw」
その笑い声に、俺は不貞腐れながら言い返す。
「笑うなって。二人とはただの幼馴染で、そういう関係とかじゃないから」
できるだけ真面目に言ったのに、誠はニヤニヤをやめない。
「はいはい。じゃあ聞くけどさ。お前はどっち派なの?」
「どっち派って何だよ。意味わかんねぇ」
彩葉が机に身を乗り出して、ニコニコしながら覗き込んでくる。
「でもさぁ? あの二人、湊のこと結構好きだと思うけどな」
「距離感が幼馴染って感じじゃないし」
「いやいや、普通だろ。幼馴染ってそんなもんじゃん」
真顔で返すと、二人が同時に吹き出した。
「出た、湊理論」
「鈍感、ここに極まれり〜」
「うるさい。ほら、もう昼休み始まるぞ」
俺は弁当を手に取って立ち上がる。
からかうなら勝手にしてくれ。俺は昼飯を食いに行くだけだ。
背中に、誠と彩葉の声が追いかけてきた。
「あれで普通だってさ」
「湊ってほんと鈍感だねぇ」
「はいはい」
適当に返して教室を出て屋上に向かった。
「まったく、あいつらは……。」




