友人たちと悪意ある人を弾く魔道具を作ったのだが
「やっと、試作品が出来たわ!!」
徹夜明けでぼろぼろになった状態で私――リッカと親友のマイア。同じく親友のケイルは歓声を上げる。
魔道具作りの専門家として有名な三人は、先日王族直々の依頼で、悪意を持つ者を弾く魔道具を作ることになったのだ。
「それにしても妃殿下も考えたわね。昨今、王族含む関係者を乙女ゲーム?とか攻略者?と意味不明なことを言ってハニトラを仕掛けてくる存在がいて、それに迷惑しているからそんな輩を近付けさせないようにしようと考えるなんて」
「仕方ないわよ。隣国はそんな輩のせいで国家転覆の危機だったんだし……」
「あの時、隣国から逃げてきた民で我が国も混乱したからな……」
当時の騒ぎを思い出して溜息が出る。どさくさ紛れで我が国を奪おうとする国の間者とか。元凶の自称ヒロイン?という輩とか。いろんな人が大挙して、やっと落ち着いたと思ったら悪役だと騒がれた令嬢の行いは冤罪だったとか。ヒロイン?が王族でも何でもない貴方が好きだと宣言したのに王子じゃないあんたは価値無いと怒鳴ったので王子は自信喪失して自殺したとか。
そんな騒ぎが起きたら対策もしたくなるというもの。
「悪役だと言われた令嬢に罪を被せた取り巻きが多かったのも原因の一つだったらしいし」
「実際には、件の令嬢は王子妃教育の他に生徒会。後、実は実家で不遇な立ち位置でそんなことする暇もなかったというしね」
世も末だ。
と言うことでそれを防ぎたいからの制作だったが、これが思ったよりも大変で、どうやって悪意とそれ以外を区別するのかという問題から始まっての制作。
何とか物にはなったが、あくまでまだ試作品だ。
「とりあえず、試作品を数点作ったからそれを何人かで実験してみましょう」
「当然、俺らも持つってことで」
マイア、ケイルが試作品を手にする。
「実際どの形状が一番便利かも調べないとな」
腕輪型の試作品をケイルは手にして告げると、
「そうよね~。ちなみにそれぞれの形状で別の機能も付けたからそれを試したいし~」
首飾りの形状を着けながらマイアも告げる。
「そんなの私聞いていないけどっ⁉」
初めて聞かされた機能に突っ込みを入れると、
「「徹夜のハイテンションで作った」」
と異口同音の言葉が返ってきた。
「勝手にそんなことして……これだからマッドだって言われるんだよ……」
ストッパーせざるをえない私のことを気遣ってほしいとぼやきながら耳飾りを装着する。
「「ストッパー…………」」
不思議そうな顔で二人してこちらを見ている。
「何よ。何か文句でもあったっ⁉」
「ストッパー言いながら、予算が足りないと判断したら関係者に脅しを掛けに行く人がストッパー」
「弾くだけじゃ飽きたらずぴーーとかぴ――とかしちゃわないととか平然と言っちゃう輩がストッパー………」
「煩いわねっ。ストッパーと言えばストッパーなのよ!!」
失礼だとぷりぷり怒りながらとりあえず解散――もとい試作品の実験のために研究所を出ることにする。
それにしても久々に研究所から出た気がする。確か、前に家に帰れたのは一か月前……。独り暮らしのアパートに入って、久々の家を堪能……できたらよかったが、久しぶりだからあちらこちらに埃が積もっているのが目に入ったので、掃除用魔道具を操作して、掃除をしてもらう。
「これもオートで出来るように改良しようかしら……あっ、駄目か。魔力補充しないと」
掃除用魔道具の活躍を眺めながらそんなことを呟いて、また仕事モードになっていると反省する。
「それにしてもずいぶん汚したわね……。メモ用紙の山にも埃が……」
流石に机の上はごみと必要なメモの区別がつきにくい物ばかりなので魔道具に頼れないと自分で掃除をしていると、
「あれっ?」
確かメモは関連している物はまとめてクリップに止めていたのにクリップが外れてバラバラになっている。
「おかしいな……」
バネが弱っていて外れたんだろうか。
新しいクリップで纏め直して、しばらくのんびりしていたらガチャガチャとドアにカギを差す音がして扉が開かれる。
「やっと、開いた!! って、ドアチェーンがしてある!? と言うことはリッカ。帰ってきてたんだな!!」
玄関から騒がしい声がすると思ったら婚約者のマルゴットの姿。
「久しぶりマルゴット。なんで合鍵もっているの?」
渡した記憶がなかったので首を傾げると、
「ああ。ラスティアが貸してくれたんだ」
妹の名前が出てきて、それで合鍵を持っていたのかと納得しかけたが、合鍵は実家の母に念のためと渡してはいるが、妹に使っていいとは言っていない。母は合鍵を使う時は事前に連絡をしてくれるから構わないが、妹が使うにしろ貸すにしろ私に一言もない。
「どうでもいいが、中に入れてくれ。チェーンで入れないんだ!!」
文句を言いながらガチャガチャしているので近所迷惑になるなとドアに近付くと、
「あべしっ!!」
…………婚約者がいきなり弾けるように飛んでいった。
「マルゴット?」
「なっ、何だ、何をしたんだ!! こんなことしていいと思っているのかっ⁉」
反対側の壁にぶつかっていったマルゴットが怒りの形相でこちらに向かってくるが、
「ひでぶっ!!」
………また飛んでいった。
「あっ」
そういえば、悪意がある人を弾く耳飾りを着けていたな。まさかその影響だろうかとスイッチを一度切ろうと耳飾りに触れるが、
『何しやがったんだこのアマ!! これじゃ中に入れないじゃないかっ!!』
変な声が聞こえた。
「マルゴット……?」
今のはマルゴットの声にそっくりだった。
『ったく、これって、あれか。こいつの作った魔道具の効果というやつか? 天才魔道具技師と煽てられているけど、きちんと実用性のあるものも作れるんだな』
声はまだ続いている。
『使えない魔道具のメモばかりで役に立たないと思ったが、こんなものも作れるのかよっ!! これなら、こいつとさっさと結婚して金だけ集めれば遊べるじゃねえか』
(………もしかして、これが形状ごとに違う機能を付けたというものなんだろうか)
耳飾りなだけに本音が聞き取れる機能とか安直だと思うがもしそれが実際の機能だとしたらかなりショックだ。まさか、婚約者がそんな悪意のある存在で私に対してそんなことを思っているなんて……。
い、いや……、まだ試作品だし。これが心の声だとは限らないし……。
「マルゴット……。何しに来たの……?」
「あっ、ああ。久しぶりにお前の顔をな………」
「私がいると思っていない流れだったよね」
ドアのカギをいじっている時とかチェーンがあるという時点で、思っていないよね。
「そんなことどうでもいいだろう。せっかく久々の再会なのに」
さっさと入れてくれと言われて、
「ちょっと待ってね」
と言いつつも、取り敢えず、鍵を貸し出したラスティアと母に連絡をしてみる。
勝手に鍵を持っているので貸したことに関しての苦情を言いたかったし、この魔道具が失敗作じゃなかったら婚約者が私に対して何か悪意があると言うことになってしまうので、相談したかったのだ。
「リッカ。急にどうしたのよ」
「姉さんいきなり呼び出し……きゃあぁあぁぁぁぁぁぁ!!」
母と妹のラスティアを呼び出したらラスティアが吹っ飛んでいった。
「ラスティア!!」
母がびっくりして声をあげているのを見て、耳飾りが失敗作で全員吹き飛ばすわけではないと母を見ていたら判明したが、まさかラスティアも吹っ飛ばされるとは思わなかった。
「いったい何が……」
「お母さん。実は……」
耳に着けている魔道具の説明をして、合鍵をマルゴットが持っていたのを報告する。
「えっ⁉ 合鍵は無くさないように預かっていたわよ。ほらっ」
母がカバンから合鍵を取り出す。それは確かに私の家の合鍵だけど、それならなんでマルゴットが持っているのか。三本目など作っていないのに。
「あっ!! そういえば」
母の視線は弾き飛ばされたラスティア。
「あの子が勝手に人のカバンを漁っていたことがあったわね……」
何をしているのかと思っていたけど、とりあえずその時は何か無くなったという痕跡もなかったのでそのまま忘れていたわ。笑って告げる母に、笑って言うことじゃないでしょうと思いつつ、
「ラスティア」
名前を呼んで近付こうとしたら弾かれた。
「「………」」
そういえば、まだ耳飾りの機能オフにしていなかった。
「ラスティア」
「知らないわよっ!!」
近付かないで名前を呼ぶとラスティアに怒鳴られた。と同時に、
『姉さんの研究したものを私のものにすれば一気に金持ちになれるっていうから合鍵を作って持ち出そうとしたのに』
などと言う声が聞こえてきた。
「…………自白魔法使ってもらいましょう」
普段は天然でポヤポヤしている母だが、何か感じ取ったのかあっさりそんなことを言いだして、警察に連絡する。
ちなみに自白魔法は警察含む許可を得ている人しか使えない厳しい魔法だ。
そこで分かった事実。
マルゴットとラスティアは付き合っていて、私という邪魔者がいるから結ばれない悲劇の恋人たちだと思い込んでいて、私の研究を盗んで金持ちになれば結婚出来るとマルゴットが唆して合鍵を作ったとか。
うん。そんなこと全く知らなかったよ。
婚約者だけど、家同士のことだし変更も出来るのに何でそれをしようとしなかったのか。
「お前の稼いだ金で贅沢するために決まっているだろう!!」
自白魔法でそんなことを言っているマルゴットにひもになるつもりだったのかと呆れてしまう。まあ、仕事が忙しくて家に帰る時間も少ないから結婚したら実際そんなことになりそうだなとこんな事件が起きて認識してしまった。
ラスティアもラスティアでそんな男を縛り付けている私が憎いとか才女とはやし立てられている姉が嫌いだったとまで言ってきて、耳飾りの効果は抜群だと現実逃避しながら思ってしまった。
でも、効果が酷過ぎて心抉られる。
まあ、取り敢えず。この試作品は精神的負担が大きくて危険だと報告書を出すことにした。
「耳飾りはそんな結果か」
「他のものは?」
「ああ、腕輪は悪意があると思われる存在が近づいたら何か半透明な存在が出現して殴っていた」
過剰防衛過ぎるよなとケイルは疲れたように呟き、
「私も~。首飾りなら無害だと思ったのに無理に近づいて来ようとする相手に剣先のように変化して攻撃を始めたわ」
「………それ本来の役割忘れていない?」
近付かないための代物なのに無理やり近付いたら過剰防衛。耳飾りが一番マシかもと思えたけど、取り敢えず危険なのは変わりないから改良することにしたのだった。
当初は婚約者に失望して別の男と結婚させようかと思ったけど、無理でした