第八十三話 「援軍」
お知らせ。
作者の都合により、今日(1月5日)から2月後半までの約2か月間の投稿を全作品でお休みいたします。
馬車はグリバの街が見える丘の上に止まった。
俺とツェネガー教授は、燃え盛るグリバの街を前に言葉を失った。
「……グリバの街が……」
城壁の向こうには、赤黒い煙と崩れ落ちた塔。
瓦礫の隙間を、ヴァルデリア軍の旗がいくつもはためいていた。
「これはまずいのぉ……。完全に制圧されておる……」
ツェネガー教授は難しい表情でこう言った。
ガサッ。
すると、後ろの森から物音がした。
「教授、下がってください!」
ヴァルデリア軍か?
俺が教授を庇って森に向かって魔術を打とうと手を向ける。
「おい、グレイス!待て!」
聞き覚えのある声。
茂みの中から現れたのは、サヴァ達とランスターだった。
「なんだ……。サヴァ達か……。大丈夫だったんだね」
俺は胸をなで下ろすと、ランスターが険しい顔で言った。
「ヴァデリア軍が1日で侵攻してくるなんて……」
「はい。グリバの街がこんな風に……」
「俺が見たところ、ヴァルデリア軍は約50~60万の超大軍で来ている……」
「そんなに!?」
思わず声が裏返る。
ランスターは唇を噛みしめるようにして続けた。
「本気で潰しに来ている。率いているのは、おそらく『破壊のロージョン』だ」
「……あの、ランスターが戦った将軍か」
「国境の警備を、1つの爆発で完全に崩壊させていた。ヴァルデリア軍最強クラスの将軍だ。」
絶望的な戦力差。
だが、ランスターの瞳にはまだ光があった。
「だが、絶望するのは早い。そろそろ、我がグリバッツ国の本隊も到着するはずだ」
その言葉を裏付けるように、地平線の向こうから巨大な砂煙が舞い上がった。
「ランスター様ではありませんか!」
駆け寄ってきた先遣隊の兵士が声を上げる。
「皆様、ここは戦場になります。速やかに避難を! 我々はこの丘に陣を敷きます」
すると、ツェネガー教授が一歩前に出た。
「わしは避難せん!わしらは戦うぞ!」
一瞬の沈黙のあと、サヴァが叫んだ。
「……そうだ!」
と一致団結した。
俺は内心で冷や汗を流したが、勢いに流され、俺も賛同した。
俺たちの勢いに押され、兵士も
「わかりました、共に戦いましょう!」
と承諾し、俺たちは軍に合流することになった。
本陣が展開され、グリバッツ国の守護者、ラミネ将軍による軍略会議が始まった。
「会議を始める。目的はただ一つ。グリバッツの領土からヴァルデリアの賊を一匹残らず殲滅し、グリバの街を奪還することだ!」
勇ましい宣言。
だが、続く副将の状況説明は冷酷だった。
「敵兵は約六十万。対するこちらの総力は、かき集めても約二十万程度です」
説明が終わると、ラミネ将軍はふっと肩の力を抜き、苦渋に満ちた声を漏らした。
「正直に言おう。わしはこれまでの軍歴で、十万を超える大軍を指揮した経験がない。……この戦い、勝算はほぼ皆無だ」
「えっ?グリバッツ国には将軍がいないですか?」
俺が疑問をぶつけると、隣のランスターが首を振った。
「十万以上の兵をに操れる大将軍は、この国にはいない。それどころか、現役の将軍も今はラミネ将軍だけだ」
「それじゃぁ無理じゃないですか!!」
俺がそういうとみんなが黙りだした。
「そうじゃな……」
もはや誰も話さなくなってその時だった、本陣の後ろがやけにうるさくなってきた。
「なんだ?敵襲か!?」
俺たちが後ろの方を振り向くと大きな砂煙が立っていた。
「報告! ラミネ将軍! 聖ロース帝国より約三十万の大軍、および膨大な物資が到着しました!!」
「なにっ……!?」
軍勢の先頭、漆黒の騎馬に跨り、深紅のマントを風になびかせる一人の男が現れた。
その男が放つ威圧感だけで、周囲の空気がビリビリと震える。
「聖ロース皇帝の勅命により参じた。俺の名は聖ロース帝国大将軍、レイブだ」
レイブ将軍は鋭い眼光を放ち、言い放った。
「これより合同軍の全指揮権は俺が預かる。これは、グリバッツ国と聖ロース帝国がつい先ほど結んだ軍事協定によるものだ。異論はないな?」
その瞬間、絶望に沈んでいた兵士たちが一斉に歓喜の声を上げた。
「これでおれたちも五十万……! しかも帝国の大将軍が指揮を執るのか!」
「勝てる……これなら勝てるぞ!!」
さらに、後方の豪華な馬車から、見慣れた姿が悠然と現れた。
「あら? グレイスじゃない。こんなところで奇遇ね」
「カーミラ!? いや、こっちのセリフだよ。なんでここに……」
「私はただ、ヴァルデリア国の属国の元ヴァンパ国の王の娘として呼ばれただけよ。ヴァルデリアの内政には詳しいからね」
彼女は不敵に微笑む。 すると、馬上のレイブ将軍が俺を見下ろし、口角を上げた。
「お前も来ていたのか、ならば話は早い。――直ちに会議を始めるぞ! 」
こうして、絶望の戦場に最強の援軍が揃った。
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