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第7話 柚希の休日

私は嘘つきだ。


私は私を守るために、嘘をつく。

本当の自分を知られてしまったら、嫌われてしまいそうで、怖い。

自己中心的で、利己的で。

そんな私のことが、私は嫌いだ。


日曜日の13時の駅前は、買い物や遊びに出かける人で賑わっていた。

みんな楽しそうな表情を浮かべている。


私もいつか、嘘じゃなく、本当に心の底から笑ってみたい。


今日は中学の頃の友達2人と、駅前のファミレスに期間限定のパフェを食べにいく約束をしていた。


"高校入っても仲良くしようね"


そんな言葉を盾に、高校で友達がほとんどいない私は、"いつものメンバー"で今日も遊ぶ。


それにしても今日は暑い。雲ひとつない空に、丸い太陽がひとつ。


太陽にとっては、自分を隠してくれる雲がなくて、恥ずかしいのだろうか。それとも、素の自分を出せて、嬉しい?


そんなことを考えながら、私はワンピースの生地をいじっていた。


太陽と今の自分を比べ、劣等感に浸る私の元に、私が大好きな2人がやってきた。


「ごめーん、前髪決まんなくてさー」

そうお茶目に言ってくるのは、滝本美和(たきもとみわ)。中学の頃は2年から同じクラスで、美術部も3年間一緒だった。


「もー待たせすぎ、腕とか焼けちゃったんですけどー」

冗談めかして私が言うと、2人は笑ってくれた。


「行こ行こ!」

もう1人の、背の高い女の子は、三野(みつの)せつな。彼女は女子の中では身長が高い方で、中学2年時に同じクラスになった時は、男子にも負けないくらいの背丈の持ち主だった。


彼女がそう言うと、私たちは灼熱の屋外から退避するため、ファミレスに向かって歩き始めた。


駅から少し歩けば、4階建てのビルに着く。ここの2階にファミレスがあり、そこが私たちの目的地だ。


ドアを開け、中に入ると、文明の利器のありがたみを私は体感した。


「混んでるねー」

「どうする?並ぶ?」

「とりあえず座って並んでようよ、涼しいし」


15分くらい外にいた私は、とりあえず涼もうと、そう提案した。


私たちの後に、またお客さんが入ってきたので、私たちは順番待ちの客向けの椅子が並ぶスペースに足を向けた。


店員さんに呼ばれるのを待っている間、私たちは高校での話をし合っていた。




私は嘘つきだ。




高校での楽しい話なんか、ないようなものだ。


一縷(いちる)の望みにかけて、1つ2つくらいはあるだろうと探してみるが、どうにも思いつかない。


それでも、私は楽しい高校生活を送る、"普通の"女子高生を演じて、2人と言葉を交わす。


「それでね、男子が言うわけよ」

美和が呆れた感じを出しながら語り出したその時、


(ブフーーッ!)

誰かが吹き出す音が響いて、私たちは一斉にそちらを見た。


私は息を呑んだ。

息を呑む音が、2人に聞こえていないか不安になるほど深く。


(南條くん…だよね…なんでいるの!?)


「え…」

「何…噴き出したの?」

隣の二人は、困惑した様子で、若干引いていたが、私は別の理由で困惑し、動揺してしまっていた。


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