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第12話 一番星と、一等星

今日は久しぶりに誰かと帰った。

私は普段、午後の早いうちに1人で下校してしまうから、誰かと一緒に帰るのは久しぶりのことだった。


みんなと一緒に高校に入学してから1か月半。

私が保健室登校を始めてから、もう1か月が経とうとしているこの頃は、1人でいることに慣れてしまった。


保健室には、ほとんどずっと理子ちゃん先生がいるけれど、登下校は1人だし、シングルマザーとして、毎日頑張って働いてくれるお母さんは帰りが遅い。

だから、家ではたいてい1人だ。

夜になれば、お母さんが帰ってきて、一緒に晩ごはんを食べる。

近頃の親子の交流と言えば、その程度だ。


でも私は寂しいとは言えない。

仕事のことで精いっぱいのお母さんに、余計なことを言って疲れさせたくなんかない。


私は、お母さんの帰りはまだかと思い、リビングの窓から外を眺めた。

3階建ての小さなマンションの一室から見えるのは、街灯に照らされた道路と、たまにそこを駆け抜ける車、少し古びた街並み、それから少しの星だけだ。


私は何となく窓を開けて、狭いベランダに出た。

少し冷たい夜風が体に当たる。

手すりに手をかけて、ゆっくりと夜空を見上げた。


そこに散りばめられた星たちを見て、私は彼の横顔を想起した。

星を見る彼の横顔を。

初めてのものを見る子供のような目をしていたな。

それに比べて、私の星を見る目はどうだろう。

この世の中から、なんとかして希望という名の光を見つけ出そうとしている目かもしれない。きっとそうだ。


私はいつも誰かに期待して、自分では何もやろうとしない。

誰かがこんなにかわいそうな私を見つけて、この状況を打破してくれる。

そんな他人任せの自分が、私は嫌いだ。


今だって、広哉に勉強のことで頼って、成績を上げてもらいたいと願っている。

でも私は勉強が苦手だ。

だから、彼には迷惑をかけている。と、少なくとも私はそう思っている。


それを申し訳ないと思うのは、罪悪感ゆえか、それともまた別の感情ゆえなのか。

私にはさっぱりだ。


中学の頃から、可愛い可愛いと周りにはもてはやされ、3年間で10人くらいに告白された。

自惚れているのではない。これはあくまで事実。


でも私は誰とも付き合うことはなかった。

これもまた、事実。


誰かと付き合って、その人に頼りきりになる。

そしていつか愛想を尽かされて、私は捨てられる。

そんな未来が容易に想像できた。


つまり、私は誰かに頼ってばかりいるくせに、愛想を尽かされたくないと願う、自己中心的な人間なのだ。


人間は結局自分のことが一番大事。


どこかで聞いた言葉。

ほんとにそうだろうか。

私からすれば、私以外の全員が、周りのことをよく考えて、自分以外の誰かのために行動できる人に見えて仕方がない。


やめよう。

ここまで考えて、私はそう思った。

自己嫌悪はやめにして、今日あった楽しいことについて考えよう。


気持ちは前向きに、なんてきれいごとかもしれないけど、私は結構大切にしている。


今日は寝坊して、お昼過ぎに学校へ行って、理子ちゃん先生にちょっと怒られて。

放課後は広哉と勉強会をした。

理子ちゃん先生が途中で急にいなくなっちゃった時は、ちょっとドキドキした。

(いや!何もないってわかってたけどね!ドキドキしたのだって、ちょっとだけだったし!)

南條君は冷静だったけど…

でも顔に出てなかったか心配だな…

そのあとは、一緒に帰った。まだ見え始めたばかりの星を見た。一番星ってやつだよね。


なんだかあっという間の1日だった。

まぁ、寝坊して起きてる時間が短いからあっという間に感じるっていうのもあるのかもしれないけれど。


ふいに強めの風が吹いて、寒くなってきた私は、一番明るく光る星を最後に一瞥してから、家の中へと戻った。


タイトル良いと思いませんか…?笑

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