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無気力転生者の怠惰な暮らし  作者: ふぇりちた
無気力転生者、村を出る
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7




 ふっるい手紙にグロウリア王家の印章なんて、絶対曰く付きだよ。

 100%関わらない方が良い。



「そもそも兄さん、何でこの封蝋が王家の印章だって分かるんだよ。おかしくない」

「言われてみればそうだな。カルロ、何処かで見たのか」

「学校で見た。近衛騎士の合格者が持ってた書類に押されてたから」



 それは、認めたくはないが、モノホンだ。きっと。

 近衛騎士は王族直属だもの。



「父さん、見なかったことにしよう」

「ああ。そうだな」

「無駄な足掻きはやめておけ、ハルト。父さんもだぞ。

一応報告はすべきだと思う。領主か、もしくは騎士学校の総長に渡して、後はお任せすればいい」

「じゃあ兄さんがやってよ。誰でもいいから」

「いや、だが場所が場所だから、クロ様をどう伝えるかが………」



 祠に挟まってました。で、よくね?

正直に話しても、頭沸いたと思われるから。

 農民には荷が重いって。領主とか無理。泡吹く。



「兄さんが見つけたって言えば大丈夫」

「オレが? どうやって」

「祠を掃除しに来たとかさー。

いくらでも言いようがあるじゃん」

「まあ、クロ様の話をしても、呆れられるか、捕らえに来るかのどっちかだしな。

宿舎に戻ったら、先生経由で渡してもらうわ」

「うんうん。それが良い」



 兄さん最高。全部やってくれるってさ。

そうぬか喜びした俺はバカだ。

だから、フラグは立てちゃいけないんだよ。



「ふむ。

中身は読まぬのか? ハルト宛だろう」

「「「…………………はい?」」」

「ほれ、宛名を読んでみろ」



 え~、なになに?


──『女神に選ばれし、同志(社畜)へ』──

 

 うん。違う。

まず俺、子供だから。社畜になりようがないのよ。

にしても、なんか懐かしさを感じる字だな~。



「なんだ、脅かすなよ。全然違うじゃん」

「おかしいな。この紙から、ハルトと似た気配を感じたんだが」

「いやいや、気配って」

「「………」」



 ん? 父さん達、静かだな。

 さては、今さらこの手紙のヤバさに気付いたのか。

王家はないよね。分かる。だってそれ、物語の主要人物の役目だし。村人Aには、荷が重すぎる。ヘタしたら、その場で打首もあり得るパターンだよ。恐ろしい。



「それにな、クロ。この手紙は明らかに古いんだよ。だから、手紙の相手もその時代の人だと思う」

「言われてみれば、そうだな。しかし、残存する魔力が似ているのは何故だ」

「気のせいじゃない?」

「むむ。我の感知能力を疑うのか!」



 知らんがな。 



「おい、ハルト。本当に知らないのか?

あるいは、お前がイタズラで隠したんじゃないだろうな」

「ナニソレ、心外なんですけど。

父さんは息子のことを何だと思ってるわけ」

「ほれみろ。父親もハルトを疑っているではないか。

やはり我を誤魔化すなど、100年早いわっ」



 クロは黙っとけ。

ドヤ顔がムカつくな、おい。



「その、父さんは別に疑ってるわけではないんだ」

「今、イタズラとか言わなかったっけ?」

「それは、まあ、そうなんだが」



 そうなんじゃん。兄さんまで、微妙そうな目で見るなよ。

可愛い弟だろ、俺。生まれ変わって10年も経つと、精神年齢だって子供に適応してきたし、暮らしにだって馴染みすぎてるぐらいじゃいっ。



「何? モジモジと気色悪い」

「読めないんだよ」

「何が」

「父さん達には読めないんだ。その手紙の宛名が」



 読めない? グロウリア語なのに?



「だから、てっきり外国語だと思ったんだ。

それなのにお前があっさりと読むもんだから、父さんは混乱している。

いつ外国語を習ったんだ?」

「何言っんだよ。俺が字を習ったのは、母さんからで。

別に他の言語なんて、なあ? 兄さん」



 これが外国語なわけないだろ。

村から出たことない俺が、違和感なく読めるのに?



「少なくともオレは知らない。それにシャチクって何だ?

シャチクという名前なのか?」

「社畜ってのは、会社に尽くしまくるっていうか、ブラック会社の働きバチってい………う、か」



 まてよ、確かに変だ。

 宛名なのに人名は書かれていないし、女神に選ばれたって、意味不明だ。


 そうだ、おかしい。

()()()()()読めたって何だよ。

グロウリア語だったら違和感を感じるわけがない。

前提が間違ってる。



 頭が無意識に拒否しようとして、ガンガン頭痛がする。



 それでも、もう一度手紙に目を落とせば、答えは簡単だった。



「これ、日本語だ」





───パアァァッ



 ぐ、眩しいっ。急に何が!



「うっ」

「「ハルトっ!!」」

「………ほう」



 瞬間、手紙が閃光を放ち、視界はブラックアウトした。

必死な声で父さんと兄さんが俺を呼んだ気がしたけど、眩しすぎて見えんかった。ごめん。



「う~目がチカチカする」

「そう。でも慣れたのではなくて?」

「は」



 何でこの人がいんの。



「ずいぶんと幼くなったのね、アサバ ハルト」

「かみ、さま」

「仮にも我に(まみ)えた身でありながら、教会に一度も足を運ばないとは。嘆かわしい」

「え? あ、え?」

「お陰で何の力も持たぬ、お前の父に神託をする羽目になったじゃない」



 マジで理解が追いつかないんですけど。

何で神様がいんの。

もしかして俺、また死んだ?

 


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