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無気力転生者の怠惰な暮らし  作者: ふぇりちた
無気力転生者、村を出る
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6




──────────

──────



 俺がクロの毛並みを堪能している間、父さん達の方は進展があったらしい。


 魔物だ何だと騒いでいた兄さんが、今度は顔面蒼白でクロに土下座をかましている。



「……………兄さん?」

「申し訳ありません! クロ様!

どうかオレ、いえ私の命だけでお許し下さいっ」



 その後ろでは、父さんが爽やかな笑顔で親指を立てていた。

 いったい何と言って説得したんだろう。



「クロ、兄さんがブラシを買って来てくれたんだ。

今日はそれでブラッシングしような」

「む。安物ではなかろうな」

「まさか。こんな田舎じゃ買えない代物だよ。

兄さんが王都で見つけてくれたんだ」

「…そうか。気に入ったら許してやろう。

だが、普段のブラシの方が良かった場合は、新しい物を買うように」

「だってさ、兄さん。もう頭上げなよ」



 気に入らなかったら許さないんじゃないんだ。

───ハッ。これが俗に言うツンデレ………!!

いや違うか。デレてはないな。うん。

どちらかと言うと、映画では優しくなるジャイ◯ン現象に近い気がする。



「ありがとうございますっ! クロ様!」

「うむ」

「………なあ、そのクロ様ってやめない?」



 俺の提案は即座に却下された。

 父さん、兄さん、クロの全員からだ。


 なんか恥ずかしくね? 

見た目だけは、ちょーラブリーな子ライオン擬きに大人が様付けって。

ペットに「でちゅね~」的な、赤ちゃん言葉をつかうタイプだよ。もしくは、下僕タイプか。


 俺、嫌だよ。ご近所さんから生暖かい目で見られるの。





「それで用事は終わったのか?」

「「「あ………」」」




「いや~、クロ様直々に案内して頂けるなんて、光栄です」

「終わらんとカリナのメシが食えんからな」

「あ、そういう。ハハハ」

 


 驚くことに、父さんの記憶は正しかった。

 本来は、小さな洞窟内に祠があるらしい。あくまで人間の感覚的にはだけど。


 クロ曰く、大昔に村の先祖達が山神様を祀る祭壇を作ったらしい。

ちなみに、先祖達が山神様と呼んでいたのが、クロの先々代だとか。

 定期的に村人が供え物をしていたが、徐々に減っていき、やがて祭壇を壊して祠に建て替えた。

まあ、管理の楽さとか、頻度とかの都合があったんだろうな。

 祭壇を気に入った先々代は、異空間を作り、祠と洞窟を拡げたんだそうだ。


 今回は、クロが俺に気付いて異空間に招き入れたらしい。



 クロったら、そんな高度な技術を使える子だったのか。

知らなかった。



「着いたぞ。此処がお前達の言う、祠だろ」

「そうです!」



 お宝的な物もアイテムむ落ちてない。

 キョロキョロと見回してみるが、それらしい物はない。

あるのは、祠だけだ。



「父さん、何もなさそうだけど?」

「そんなはずは………」



 周りはゴツゴツした岩だけで、何か隠せそうな場所なんて1つしかない。



「祠を開けたいのか?

構わんぞ」

「え、まじで?」



 俺が祠をガン見していたからか、クロが気を利かせてくれた。

 罰当たらないかな。

 恐る恐る手を伸ばして開けると、中は空っぽだった。



「何もない。御身体的なやつもない」

「当たり前であろう。我は生きてるからな」

「ええー」



 でも作った時は、クロの先々代だったわけだろ?

祀ってるのは先々代のことなんじゃ。



「むっ、あるではないか!

誰だ、こんな物を入れたのはっ」

「うそ、さっきは何もなかっ…………手紙?」

「手紙だな」



 クロが口に咥えて取り出したのは、黄ばんでボロボロの手紙だった。

 父さんが言う御告げってコレ?

いや、でも人様の手紙なんて取って良いのか?



「たぶんそれじゃないから、戻してくれ」

「そうなのか? ハルトが言うならそうしよう」



 そのまま戻そうとする俺達に、父さんが待ったをかけた。



「ちょっと待ったー!」

「うわ、なに」

「それ以外に、それらしき物がないのであれば、一度調べるべきだろう」

「人の手紙を?」

「う、や、しかしだな。御告げが」



 倫理的に罪悪感を抱いたのか、父さんの言葉は、だんだんと勢いを失くしていく。

 だと言うのに、このまま押し通せそうな雰囲気から一変、事態は急展開を迎える。

 横から手紙をちらちら見ていた兄さんが、あることに気付いたからだ。



「でもコレ、王家の印章が押されてるぜ。父さん」




 それは、ダメでしょおぉぉぉ─────!!


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