表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無気力転生者の怠惰な暮らし  作者: ふぇりちた
無気力転生者、村を出る
7/18

5



 嫌な予感というか、フラグは立てたら負けっていうか。



「父さん、俺達帰っていい?」

「何言ってるんだ。せっかく此処まで来たのに。

もうすぐだぞ~、ほら見えて来た。あの洞窟の中に祠があるはずだ」



 鍾乳洞だって、ライトアップされていなければ恐い思う。

 それなのに魔物が存在する世界の洞窟とか………怪我しに行く様なもんじゃないかっ。


 不気味な空気が漂ってるんですけど。お家帰りたい。

戦闘力ゼロだよ。だって戦闘スキルなんて、お願いしてないもん。普通に田舎で暮らして、老衰で死ぬつもりだし。物騒なスキル要らねーもんっ!

 そもそも、衣食住のスキルすら本当に貰えてるのか分かんねー。

 なんたって田舎の村だからね。スキル鑑定出来る場所なんてねーからっ!



 しかし、俺がぐだぐだ考えているうちに洞窟は目の前に。



「無常だ」

「……お前、たまに渋い言葉つかうよな。カリナに教えられたのか?」

「父さん、ハルトは昔からジジ臭いよ」



 いや。おたくら何で平気なの。 

 出るって、絶対なんか出るって。絶対なんか出るやつだよ。アレ!



「よし、じゃあ入るぞー」



 ギャア───!! 

 父さん行っちゃったよ、おい。

せめてもっと武装してから進んでくれ。



「はあ~めんどくせっ。俺達も行くぞ」

「えっ、兄さんマジで? 勇者なの?」







 帰りたい帰りたい帰りたい。

 マジで恐怖しかない。ひんやりした空気がより恐い。



「ん~、おかしいなぁ」

「どうしたんだ?」

「たしかこの辺に祠があったはずなんだが………」

「父さんの記憶違いだろ。

あと10分探してなかったら戻ろう」



 ナイス兄さん。10分と言わず、3秒で戻ろう。

 あと父さん、帰ったら母さんに告げ口してやるかんな。



「仕方ないか、様子も少し変だしな。

ふぅ~。この洞窟は祠用で、こんなに広くは作られてないはずなんだが」



 もう15分は歩いてますけど?

 驚きの広さだよ、この洞窟。様子が変どころじゃないじゃん。別物って言うんだよ、それは。



「入る洞窟を間違えたんじゃない。ハルトもそう思うだろ?」

「そうだね。帰ろう、今すぐに」



 首をブンブン振って全力で肯定したけど、ウチのバカ親父は聞く耳を持ってくれない。



「いや、洞窟は此処で間違いない。

いったい誰が拡張したんだろうな。祠まで移動させるなんて。ハッハッハ」

「「っんなわけねーだろっっ!!」」



 知らなかった。

まさか父さんが、ここまでバカだったなんて。

 この村生まれ、村育ちのくせに、今に至るまで気付かないわけがない。



「──ハルト、何してるんだ?」

「何って、父さんのバカさ加減をだな……って、え?」

「ハルト! 下がれっ!」



 物凄い勢いで襟を引っ張れ、俺は兄さんの後ろで尻もちをつくはめになった。



「よせっ! 剣を下ろすんだ、カルロ」

「何言ってんだ、今ハルトが襲われかけたんだぞ!」



 んん?

 殺気立って俺を守ろうとしてくれる兄、イケメン。

誰だか分かってる父さんは、冷や汗かいてるけど。



「クロ、何でこんなとこにいるんだ?」

「ハルト、逃げ………は、え。くろ? くろって、あのクロ?」



 話しかけて来た相手はクロだった。

まさかすぎる。だがホッとした。ありがとうクロ!


 兄さんっ。3ヶ月越しに念願のクロに会えたのに………ファーストコンタクトがこれは酷い。つら。



「我の寝床に無断で入って来たのは、お前達の方だろう」

「ここに住んでたのか?」

「まあ寝る時はな。それで何用だ。我に会いに来たのか」



 ふっふっふ。尻尾が揺れているぞ、クロ。可愛い奴め。



「父さんに連れて来られた」

「…………そうか、我に会いに来たわけではないのだな」



 あっ。尻尾が下がった。



「そうだ、クロ。兄さんを紹介するよ!

前に王都の騎士学校に通ってるって言った、兄さんのカルロだ。

で、兄さん。この偉そうなのが、クロ」



 あれ。兄さん固まってる。

 とりあえず、剣を下ろそうか。危ないから。



「兄さん?」

「あー、ハルト、しばらくそっとしてあげなさい」

「??」



 固まる兄さんを見て、父さんは「やれやれ」みたいな感じで肩を叩いてくる。

 ナニ。この俺だけが分かってない感。



 体感5分後。兄さんは、ブツブツ言いながら復活した。

 でも剣は下ろさない。何故だ。



「兄さん、剣がちょっと危ない。クロが恐がっちゃうだろ」

「フンっ。我がこんな小物を恐がるものか!」



 こらクロ。くだらない意地を張っちゃダメだぞ。

剣なんて向けられたら恐いだろ?

俺だったらチビるね。



「なあ、兄さんってば。父さんも何か言ってよ。クロが可哀想だ」

「そうだな。カルロ、下ろせ。命はないぞ」

「んん? 何その物騒な脅し!

兄さん、いったん下ろそ?」



 父さんに同意を求めたら、想像の100倍ぶっ飛んだ言葉が出てきた。

 そして兄さんは、頑なすぎる。意味が分からん。



「無礼な小僧だ。ハルトの血縁でなければ八つ裂きにしてやったものを」



 はい、アウトー。今の発言は拙かったねー。



「黙れ。ハルトに近付くな! 魔物が!」



 って、あれー?

 ちょっと兄さん?



「なにぃっ!?

我が魔物だとっ! 無礼にも程があるぞ! 小僧っ!」

「あばばば。やめろ、カルロ。すぐ謝るんだ!」

「父さん! 何を言ってるんだ!

あんなヤツとハルトを今まで放っておいたなんて!

どうかしてるっ。桁違いの魔力が漏れて………化け物だ。Aランク、いやSランクの魔物だ。すぐに応援を呼んで、何とかしないとっ」



 わあ、パニック。てか、カオス?

しかも、えらい言われようなのに欠伸してるお前って……



「あ~クロ? 兄さんがゴメンな。

今日は母さんにお願いして、クロの好物を作ってもらうから」



 2人をよそに、クロの側に行って謝る。

するとクロは、スリッと足下に寄って来た。

そのまま抱き上げて、お尻をかいてやるとご機嫌だ。



「肉だな。肉が食いたい。

ブラッシングもだぞ。昼寝もするからな」

「はいはい、仰せのままに」





 そう言えば、俺達、何でココ来たんだっけ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ