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無気力転生者の怠惰な暮らし  作者: ふぇりちた
無気力転生者、賢者の遺産を手に入れる
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 空から見る王都は、想像以上の大きさだった。

 圧巻の城郭都市と言えるだろう。

綺麗な八角形を描いた城壁に囲まれ、中心に向かっていくつかの道が真っ直ぐ引かれている。

 ただ、残念な事に感動に浸る間もなく、メルちゃんが急降下したせいで、死ぬかと思った。

 

 いやー、本当にこんな短時間で王都に着くとは。

 1週間かかると踏んでたのに、まさかの2日目で到着ときた。

 エディンバラからは、あと2つ街を挟んで王都だったはず。それを30分でショートカットするなんて………やっぱ、ワイバーンは恐ろしい。



「ほほ。今日は空いてる様だな」

「みたいね」



 門に向かって伸びる長蛇の列。

 貴族が乗っているであろう、超立派な馬車の列と、商人や冒険者らしい人々が並ぶ列がある。

当然、俺は後者なわけだけど、これで空いてるのかぁ。

さすが王都。スケールが違いすぎる。



「わしは戻るから、達者でな」

「ありがとう」

「ありがとうございました」



 御者のお爺さんは、降り立ってすぐ、メルちゃんとエディンバラに戻って行った。

最後の最後までぷるぷるしてたけど、身体は大丈夫なんだろうか。



「リーザさん。今更なんですけど、通行証とかって必要ですか?」

「通行料払えば大丈夫よ。私はギルドカードがあるし」

「なるほど」



 ギルドカードは、一種の身分証明書代わりになるって事か。

俺も作っておくべきかな。けど、手紙渡したら帰るだけだし……手間がかかるだけだからやめとこ。



「あとは、貴族の印影が押されたものとか」



 貴族の印影ねえ。

それなら、()()もそうじゃないか?



「例えば、こんなのとか?」

「そうそう。そういうやつ」

「おおっ。なら通行料は浮いたな。ラッキー」

「……待った。何でハルトがそんなもの持ってるの?

まさか本当に貴族の印影とか言わないわよね」



 正確に言えば、貴族じゃなくて王家ですけど。



「一応、そんな感じのです」

「騙されてない?

怪しい奴に頼まれたんでしょ。そうでしょう?」



 リーザさん首が痛いです。

 彼女が俺の肩をガクガクと揺さぶるもんだから、答えるどころじゃない。



「リーザさん、前見てください。列進んでます」

「ああ、そうね。

っじゃない! いったいこんなものどうしたの!」



 さて、どうしたものか。

 リーザさんは、この印影が王家のものだとは知らないらしい。

 この反応からして、信じてもらえないだろう。

つまり、門番の人もそうじゃないか?

貴族用の列ならまだしも、ただの農民が見せたところで、捕まるだけかもしれない。

 印章の贋作作ったとか言われたら、死ぬ。

 ここは、無難に通行料を払おう。

そして、兄さんに相談してから手紙を届ける。うん、この流れが安全だ。



「預かってるんです。その方は、名のある方なので大丈夫ですよ」

「(だから、それが騙されてるんじゃ……何も知らない若者を騙すなんて許せないわ!)」

「何ですか、その顔は。

わかりました。とりあえず、この手紙は出さずに通行料払いますから」

「絶対それが良いわ。

なんなら、そのお金も私が出すから」

「さすがに、そこまでしていただかなくて大丈夫です」



 リーザさんの中で、俺の立ち位置が変わった気がする。

命の恩人から騙された田舎者的なやつに。



「その手紙については、あとで聞くとして。

今はご飯食べちゃおう」

「今ですか?」

「そっ。おやつ的な感じ。あと1時間くらいかかると思うし、王都のご飯屋は混んでるから」



 もしかして、エディンバラで言ってた「食料用意する」って、これの事か。

ワイバーン乗るなんて知らなかったから、荷物少ないなと思ってたんだよ。



「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」



 バケットに挟まれた、もりもりのスライス肉と野菜。

高級なパン屋で売ってるサンドウィッチみたいだ。

すげー美味そうっ。



「クロのは、どうする?

魔物用のおやつ買ったんだけど、パンも同じのあるよ」

「魔物用など食わん」

「わ! またしゃべった。やっぱり夢じゃなかったんだ」



 腕の中で静かにしていたクロも、美味そうな匂いにつられたらしい。

 体勢を変え、食べる準備万端だ。



「良かったな、クロ。

ちゃんとリーザさんにお礼言うんだぞ」

「まあ小娘にしては、悪くないチョイスだ」

「クロ!」



 それはお礼じゃない。



「いいのよ。お眼鏡にかなったなら。

味も保証するわ!」



 天使だ。

 こんな憎たらしい態度しかとってないのに、優しすぎる!



「本当にすみません。ツンデレというか、口が悪くて」

「うん。なんとなくわかったから大丈夫。

それより、食べてみて」

「ありがとうございます。いただきます!」



 うまっ! 食欲をそそる香りに、かぶりつけば、あっという間になくなってしまった。

 リーザさんは、3口でいってたが、見なかった事にしよう。

 絶対、帰りに買って食べよう。



「すっごい美味しいです!

有名なところなんですか?」

「ふっふっふ。どこだと思う?」

「エディンバラの中心街にあるお店とか」

「ブブー」

「まさか、今朝ご馳走になったステーキ屋!」



 あそこなら、肉料理がメインだしあり得る。

 ステーキだって、朝っぱらじゃなければ最高に美味しかったはずだ。



「ざんねーん。

これはね、私達を送り届けてくれた御者さんが作ったの」

「……………はい?」



 え、あのぷるぷる爺さん?

 マジで?



「ふむ。ハルトよ、用が済んだら、あの鳥ごと引き取るぞ」

「やめなさい」



 なんて事を言うんだ、この獣は。

いくら小人サイズだからって、誘拐はダメだ。

あとメルちゃんは、頼まれても引き取れない。







 家に連れて帰るとうるさいクロをなだめていたら、ついに俺達の順番が来た。



「えーっと、そっちの君もギルドカード出して」

「ただの農民なので、カードは持ってません」

「ん? テイマーじゃないのか?」



 だから違うんだって。自称神獣なんです。



「相棒です」

「そうか、そうか。じゃあ、早急に獣魔登録するように!

よし、通っていいぞ」

「いや、うちのクロは違うんです!」

「はいはい、列つかえてるからね。

そうだ、君。登録されてない獣魔を連れて歩いたら、罰金刑もしくは、実刑だぞ」

「えっ」

「はい、次の人ー」



 今からクロには、ぬいぐるみのフリをしてもらおう。

それしかない!





今回から王都生活スタートです。


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