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無気力転生者の怠惰な暮らし  作者: ふぇりちた
無気力転生者、うさ耳族と出会う
16/18

6



 何かお土産をと思ったけど、結局ギリギリまで宿屋に時間を割いてしまった。



「いたいた、ハルト~!」



 いきなりの呼び捨てだと!

 手をブンブン振りながら、リーザさんが駆けて来る。

何それ。耳までピクピク動いてるじゃん。可愛すぎて辛い。



「顔が気持ち悪いぞ、ハルト」

「いや、だってアレ見ろよ」



 やべ、ニヤける。

 なんだ、クロ。うさ耳リーザさんに嫉妬か?

 安心しろ、1番可愛いのはクロだから。たぶん。

あー、リーザさん可愛いっ。



「お待たせ!

なんか大荷物だね。買い物したの?」

「ああ、コレは貰い物です」



 リーザさんの視線の先には、両手いっぱいの布袋。

 実はコレが、宿屋で時間をとった原因である。



「え、誰に」

「宿の人とお客さんに」

「君、昨日来たばっかりなんだよね?

しかもお客さんって何。君の?」



 いえ、宿屋の宿泊客とご飯食べに来た人です。

 ぜーんぶっひっくるめて、クロへの貢物。

残念がる声も、別れの挨拶も、全てクロに対してだった。

お金払ったの俺だし、メインの客も俺なはずだけど、どうやらそうではなかったらしい。解せん。



「みんなクロにメロメロで。

たくさん貢物をもらいました」

「貢物って……、そうね。確かに可愛いもの」



 ちなみに、ふわふわの高そうなタオル(クロ用)、綺麗なリボン(クロ用)、雨ガッパ(クロ用)、小さなクッション(クロ用)、魔物用のおやつ、魔物用の塗り薬、魔物用の………etc。


 面白いほど#人間__おれ__#用がない。

すごく有難い事なのに、何故だろう。このモヤモヤ感。



「とりあえず、行こっか」

「はい。お世話になります!」



 人混みを抜け、森林の方へ歩いて行く。

 あれ、馬車乗り場の看板、あっちにあるけど。

いくつか乗り場があるんだろうか。



「着いたわ。さっ、荷物乗せるから貸して」

「…………」

「どうしたの?

持ったままじゃ重いでしょ」

「いやいやいや、えっ、ちょ、え?」

「ハルト?」

「えっ、ま、ええ?!」



 馬車じゃない。そもそも車体部分がない。馬いない。

めっちゃ怖そうな何かが、こっち見てるんですけど!

ギョロついた目が恐ろしすぎるっ。

 ムリ、絶対ムリ。俺死んだかも、てかリーザさんに騙されてたのかっ?



「何呆けてるのよ。早く乗る!」

「ののの乗るって、何に」

「はあ? 何って目の前にいるじゃない」



 やっぱりいるんですね! 幻覚じゃないんだ。

それ何なの。俺は餌なのか?



「見えない、見たくない。死にたくないっ」

「死ぬって……もしかしてハルト知らないの?」



 何が? 何を?

 パニックなんですけど。



「今から乗るのは、ワイバーン。超高速な移動手段よ!」

「ワイバーンって何。そのいかつい魔物ですか?

ムリです。それこそ馬車一飲みで食べれそうじゃないですか!」

「一飲みはムリよ」



 いや、そこじゃないっ。そんな冷静に返さないでくれ。



「ハルトよ、さっさと乗らんか。

ただのデカい鳥だ」

「黙っとけクロ。あんなデカい魔物の機嫌を損ねたらどうなるか!」

「だから、ただの鳥だ」

「バカか、お前は! あんなデカい鳥がいてたまるか。どっちかっていうとドラゴンだ!」



 ん? 何で急に静かになったんだ。

 まさかクロの失礼発言のせいで────



「うそ。クロってしゃべるの?!」



 そういや、リーザさんの前でしゃべってなかったな。

 心なしかワイバーン様も驚いている様な。

というか、怯えてる様な?



「うちのクロは、しゃべれます」

「いや、そっちの方がおかしいから!」



 そんな事言われたって。

 しゃべるんだから仕方なくね?



「俺、馬車を手配してくれるって言ったリーザさんを信じたのに」

「でも馬車よりワイバーンの方が速いのよ?

20~30分で王都に着くわ」



 速すぎて恐い。息吸えんのそれ。



「もし落ちたら」

「落ちない落ちない。速くて安全だから!

馬車の3倍はするのよ? ハルトの為に奮発したんだから」



 リーザさんの厚意が素晴らしすぎる。

だが恐いものは恐い。



「ほほ。乗るのかの? 乗らんのかの?」



 誰、このお爺さん。どこから出て来た。

急に第三者の声が聞こえたかと思ったら、ワイバーンの口の横にいるではないか。

 ぷるぷると震えている、小人サイズのお爺さん。

そこ危ないですよ。



「あっ乗ります!

ほら、ハルトも覚悟決めなさい」

「あのお爺さんも乗るんですか?」

「当たり前じゃない。

御者がいないと飛べないもの」



 パニックになりすぎて、耳までやられたらしい。

 あの小人の老人が、このクソデカい魔物を乗りこなすはずがない。



「ほほ。メルちゃんは優しい子での。

乗り心地も抜群じゃよ」

「だってさ。良かったね、ハルト」

「メルちゃんって」

「グルルル」

「ひぃっ」



 そうですよね。俺なんかに名前呼ばれたくないですよね!

恐い。やめて、謝るから唸らないで。



「おや、よかったなぁ。名前で呼んでもらえて」

「グル」



 違う。絶対そうじゃない。

 もう情報量が多すぎてわからん。



「さっ、メルちゃん。お客さんにご挨拶して」

「グルグルルルグア!(じぃじ、あの人間は危険だよ!)」

「ほほ。どうしたんだい? いつも大人しいのに珍しい。

って、あれ。お客さん? お客さん、大丈夫かね!」

「ハルトっ?!」



 メルちゃんの大迫力のご挨拶で、俺の恐怖メーターは振り切ったらしい。

キュウっと視界が回って、暗転した。
















「う゛」

「良かった! 気がついた?」



 冷たい風がビュウビュウ吹いて、寒い。

 瞼を開ければ、リーザさんの顔面ドアップ。



「へっ、あ」

「もうっ、あの後急に倒れたから心配したんだよ」

「す、すみません。えっと……」

「医者に見せるにしても、王都に行った方が早いと思って」



 え。王都?



「…………まじか」



 父さん、母さん。俺今、ワイバーンに乗って空を飛んでます。

 どうりで寒いわけだ。



「どうする? 起きれそう?

辛いならこのまま寝てて良いよ」

「…………すみません、このままでお願いします」



 クロに前足でベシッと叩かれたけど、気にしない。

 だって、リーザさんの膝枕というオプション付きなんだもん。

 メルちゃん最高! ワイバーン最高!



「ほっほ。もう着くぞい。少し揺れるから気をつけておくれ」

「はーい」



 目覚めたばっかなのに?

 メルちゃん、もう少しゆっくり飛んでくれて良かったんだぞ?






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