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無気力転生者の怠惰な暮らし  作者: ふぇりちた
無気力転生者、うさ耳族と出会う
15/18

5



「え~っと、ハルトです。こっちは、クロ」

「リーザよ。ごめんね、名乗りもせずに。

とにかくお礼しなきゃっ、と思って」

「いえいえ。クロの分までご馳走になって、ありがとうございます」

「いいの、いいの!

命の恩人なんだからっ」



 うさ耳美少女リーザさんは、エディンバラを拠点に活動しているソロの冒険者らしい。

14歳から始めて、今は17歳。

なんて危ない人生を送ってるんだろう。

何故その職業を選んだのかと、14歳のリーザさんに聞きたい。



「すごいですね。パーティー組まずに大変じゃないですか?」

「んー。私の場合は色々あって、まあ1人の方が気楽なの」

「なるほど?」



 冒険者というデンジャラスな職業を選ぶ人の心理は、わかるまい。

生い立ちとか、金銭的なものがあるのかもしれない。

だが、俺には関係ないし、推測してもわからないからいいや。



「……ねぇ、ステーキ残ってるけど、食べられそう?」



 食べる為に、今必死で細かく切ってるんです。

噛む回数を減らせる様に。



「もちろんです」

「無理しなくていいよ。私が食べるから」



 私が食べるだとっ。それって間接キ………はい、違いますよね。すみませんでした。

 爪が痛い。やめろ、クロ。

そもそもお前が、肉のスープが食いたいって言うからだな。



「あの、本当にすごく美味しいんです。

ただ胸焼けがどうしても」

「若いのに情けないわね。

お皿ちょうだい。食べてあげる」



 15歳、食欲旺盛、至って普通の若者ですが。

 リーザさんと2つしか違わないからね。

種族か? 種族の問題なのか?



「すみません」

「君ぐらいの子は、みんなペロッと食べてると思ってた。

口直しにデザートでも食べる?」



 獣人族の話だよな? 頼む、そうだと言ってくれ。

 あと、デザートは別腹派の人じゃないです。



「嬉しいんですが、やめときます」

「そう? 

おっちゃん、消化促進のお茶あったよねー」

「あるには、あるが……まさかリーザが飲むのか?!」

「いやいや、彼に」

「ああ」



 店員の驚きっぷりからの、俺見て納得。みたいな落差は何。

そこまで酷いのか。俺のもやしっぷりは。



「ほらよ、カミさん直伝の煎じ茶だ」

「ありがとうございます」



 香りだけでムカつきがスッキリする感じがする。

 世のサラリーマンにぜひ常備させてあげたい。



「あ、飲みやすい」

「うそ。すごい薬草臭いよ、それ」

「そうですか?」



 あっさりしたハーブティーっぽいけど。

 やっぱ、鼻が良いのかな。

クロも鼻隠してるし。



「それで、いつ立つ?

私、今依頼受けてないから、いつでも大丈夫よ」

「わあ、行く前提だ。

……気持ちだけで十分です。

ご飯も奢ってもらってますし」

「ダメよ。それじゃお礼にならないわ」



 シンプルにお金がない。察してくれ。



「クロもいますし」

「でも獣魔じゃないんでしょ?

それに馬車代も自分の分は出すわ」

「んー、そんなに持ち合わせがないので、荷馬車にでも乗せてもらおうとしてたんです。はい」



 つらい。馬車代も払えない田舎者だとバレてしまった。

 俺だって、可愛い女の子には見栄張りたい。

そういう年頃だから今。二度目の思春期迎えてるからさ。



「なんだ。だったら尚更私と行こう。

馬車は任せといて。道中の食事だって全部持つわ」



 何その大盤振る舞い。貴女は神か。



「護衛料って」

「バカね。お礼なのに、お金取るわけないでしょ」

「貴女が神か!」



 見栄とか何それ。

快適な旅に勝るものなし。ありがとうございます。

クロが冷たい目で見て来る気がするけど、気にしない。

お前だって、荷物と一緒に縮こまるより人と運ばれたいだろ。



「じゃあ決まりね!

早い方がいいなら、この後手続きしに行くけど」

「ぜひお願いしますっ」



 貴女の気が変わらないうちに!

 煎じ茶をぐいっと飲み干し、立ち上がる。



「ふふ。決まりね!

ギルドに報告して来るから、そうね~1時間後に広場で待ち合わせとか、どう?」

「了解です」

「食料とか必要そうな物は、用意しとくから」

「何から何まで、ありがとうございます!」



 さて、どうするか。

 至れり尽くせりすぎて、やる事ないしな。



「宿戻って、とりあえず身支度するか」

「身支度も何も、荷物全部持ってるじゃないか」



 しょうがないじゃないか。父さんが、荷物は全部まとめて移動しろって言うから。



「一応、今夜も泊めてもらうかもって言って出たから、一言伝えに行く」

「律儀だな。別に気にせんと思うが」

「いいんだよ。それに宿の人が、クロの事気に入ってただろ? サービスしてもらったんだからお礼言わないと」



 そう。昨日の夕飯に限らず、朝は有料のお湯までサービスしてくれたのだ。

おかげで、朝から顔も洗えて快適だった。

桶を渡してくれてるのに、1回もこっち見なかったけど。

視線はベッドのクロ一直線。逆によく溢さずに運んでくれたものだ。

 きっとお湯も、クロ見たさ50%、クロに朝風呂させてあげたい50%だったに違いない。

「洗顔用のお湯どうぞ」なんて言うから、違うんだろうなと思いつつ、言葉通り使ったよね。

 もちろん、自分の顔を洗うより先にクロの手入れをしたけど。

ホットタオルを作って毛並みに沿って拭いてやればこの仕上がり。



「む。なんだ、ジロジロと」

「ツヤツヤだなと思って」

「ふん、当然だ。その締まりのない顔をやめろ。気持ち悪いぞ」



 その高級毛並みは俺のおかげだろうが。

 どんなに疲れていてもブラッシングを欠かさない俺は、褒められて然るべきだ。






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