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無気力転生者の怠惰な暮らし  作者: ふぇりちた
無気力転生者、うさ耳族と出会う
14/18

4

 


 誘われるままにテーブルについたが、さてどうしたものか。

 向かい合う形で座ったから、どこを見てれば良いのか分からない。

無難に額……いや、眉間? いっそ壁?

困った。容姿が良過ぎる!

 まんまるな桜色の瞳に、ふさふさなキャラメル色の垂れ耳。

シルクシフォンの様な素材の服は、彼女の可愛いらしい雰囲気に合っている。

………ゴツい短剣はそのままだけど。



「さっ、何でも頼んでいいわよ。この店、ステーキが美味しいの」

「ありがとうございます。

とりあえず、こいつ用に肉のスープをお願いしたいんですが」

「あら、スープでいいの?

ガッツリ食べなきゃ、ご主人様を守れないわよ」



 朝からステーキは、ちょっとキツイかもしれない。

 ああっ、クロの機嫌が。苛立ちながら、尻尾をベシベシ打ち付けてくる。

当然、クロは俺の膝の上だから、被害は俺にくるわけで。



「まだ起きたばっかりなんで、スープにしときます」

「そうなの? じゃあ、貴方は食べるよね。

おっちゃん、煮込みスープとステーキ2枚!」

「はいよっ」

「えっちょっと」



 俺もステーキ食べんの?

というか、うさ耳のお姉さんも食べるの? 朝から。

あれ。うさぎって肉食だったっけ。



「はいよ、お待ち」

「きゃーっ美味しそう!

ねっ、早く食べて食べて」



 これ何グラムあるんだ。

400gはあるんじゃないか。

 まって、ドン引きじゃん、クロ。

お前も手伝えよ。見た目ライオンなんだから。 



 結論から言おう。

うさ耳のお姉さんは、肉食だった。しかもフードファイター系の。



「全然減ってないじゃん。ステーキ苦手?」

「や、美味しいんですけど、朝からは重たいと言うか」

「ええっ? そういうものなの?

私、もう1枚食べようとしてのに。やめとこうかな」

「ゲホッ。も、もう1枚!

すごいですね!」



 まだ俺、1/3しか食べてないぞ。

 肉を噛むことに必死で気がつかなかったが、彼女のお皿はほぼ空だ。



「食べないと身体大きくならないよ?」

「………そっ、すね」



 女の子に。可愛い女の子に小さいって言われた。

どーせもやしですよ、俺は。

これでも171cmはあるのに!



「ぷっ」



 おいクロ。笑いやがったな、コラ。



「ねぇ、その子って君の獣魔なんだよね?

何て魔物なの?」

「いえ、コイツは相棒なんです。種族も分からないですけど、子供の頃からずっと一緒で」



 言うて5年ちょっとだけど。



「へえ~そうなんだ。

見た事ないからレアな魔物なのかなって」

「あはは。まあ、そうなのかもしれないですね」



 尻尾攻撃やめい。俺に当たるな。

 魔物扱いが相当お気に召さないらしい。爪が太ももに食い込んで地味に痛い。

 

 そうだ。獣魔といえば、まだ太陽ギルドに行ってなかったな。門番の人には悪いけど、長く滞在するわけでもないし……。まあ、行かなくていいか。



「それで君は、テイマーを目指してるの?」

「いや、違います」



 魔物とか分からん。なんせ田舎は平和だから。道中だってクロがいれば問題なし!

……たぶん。



「えっ、そうなの?

私ったら、てっきり」

「いやー、ただの農民なんで。今回だって、王都におつかいがあるから、ココに寄っただけなんです」



 王都に向かう商人か誰かを見つけて、乗せてってもらうつもりだ。

徒歩とかマジで無理。さすがに魔物も出そうだし。

 自慢じゃないけど、スライムにさえ遭遇した事ないね。

自慢じゃないけど!



「そうなんだ。テイマーの才能ありそうなのに」

「冒険者は、ちょっと」



 うさ耳さんは、何やら悩んでいる様子だ。

 もしや、ステーキ2枚目を?



「王都に行くんだよね」

「はい」

「そっか。わかった」



 何が?

 めっちゃ良い笑顔で頷いてますけど、こっちはさっぱりなんだが。

というか、ステーキどうしよ。腹一杯になってきた。

クロ~、食べてくれてもいいんだぞー。

 クロに目で訴えてみたが、プイと逸らされた。

ですよね。うん、わかってた。



「私も一緒に王都へ行くわ」

「は?」



 突然何を言い出してるの、この人。

思わず咽せちまったじゃねーか。



「だって君、冒険者ってわけでもないんでしょ。

だったら危ないから、私が護衛するわ」

「え? いや、え?」

「大丈夫。これでもBランクよ。君1人なら、無事に王都へ送り届けられるわ」



 ぜんっぜん、話が飲み込めない。

 うちのクロだって、ポカーンと口開けて驚いてるじゃん。

可愛いな、おい。



「えっと、大丈夫です」

「何でっ?! 私、本当にBランクよっ!

ほら、見て、ギルドカード!」



 Bって言われても、ランクの仕組みとか知らない。

 だいたい、馬車に乗るお金ケチって、商人に頼み込もうとしてるんだ俺は。

護衛料なんて絶対払えない。帰りの路銀叩いても無理。



「そもそも、貴女の名前まだ知らないですし」

「………………あ」



 だよね。俺達自己紹介まだだよね。

良かった。名前聞いたのに、ど忘れしたのかと一瞬悩んじゃった。





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