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無気力転生者の怠惰な暮らし  作者: ふぇりちた
無気力転生者、うさ耳族と出会う
12/18

2




 ハルトが屋台の誘惑から逃れ、宿でぐったり休んでいる頃、リーザは徐々に倒れた時の記憶を思い出していた。


 ソロ冒険者として活動する彼女は、兎の獣人だ。

 高い跳躍力と細身からは想像出来ない脚力を活かし、短剣1つでBランクまで昇り詰めた有望株。

そんな彼女をスカウトするパーティーも多々存在する。

しかし、どのパーティーも、1週間と経たずに勧誘を取り下げていく。

 彼女が孤独を愛するのか、性格に難があるのか。

新人冒険者達は今日も、理由について噂に花を咲かせる。




「うん。寝たら回復したわ。

先生ありがとう。もう帰るわ」

「ええっ! もうかい?

最低でも3日は様子を見るべきだ。魔力欠乏症を侮ってはいけない」



 ハルトに託された憲兵によって担ぎ込まれて3時間。

一時的とはいえ、危険な状態であった彼女の回復力は、脅威的である。



「大丈夫。もう魔力は戻ったから」

「馬鹿な。早くて1週間はかかるはずだ。

それをたったの…………戻っている。そんなはずがない!」



 魔力欠乏症の為に作られた、魔力量感知器を手に、医師は驚愕した。

元の保有量もさることながら、リーザが言う通り、魔力が戻っていたのだ。



「ね? だから言ったでしょ」

「あり得ない。奇跡だ!

いつもそうなのかいっ? もしや遺伝か?」



 新発見とばかりに、医師が矢継ぎ早に質問をする。

一方リーザは困り顔で、申し訳なさそうに答えた。



「その~、元々魔力は多い方で。

魔力量だけなら、魔術師にも負けないんだけど………アハ」

「魔術師クラスの魔力を!

なるほど。しかし、それほどの器を持ちながら何故?

まさか、大魔法でも使おうとしたのかい!」



 想像通りの医師の反応に、彼女は少しヘコむ。



「ファイヤーボールを」

「は?」

「ファイヤーボールを練習しようとして、ちょっとミスを」

「ファイヤーボール。初級魔法の、ファイヤーボール。

微量な魔力でも行使出来る、あのファイヤーボール?」



 医師が不思議そうにファイヤーボールと口にするたび、リーザはみるみる萎れていった。

見えない刃が、彼女を滅多刺しにしたのだろう。



「うぅっ。そうよ、初級魔法のファイヤーボールよ!」

「改良して威力を上げようとしていたとか」

「初級だって言ってるでしょ!」

「…………君はひょっとして」

「言わなくても分かってるわっ」

「恐ろしいノーコン……」

「分かってるって言ったじゃない!

何よ、悪い? 魔法がちょっと下手だからって何よ!」



 リーザはベッドに泣き崩れ、ドンドンと拳でマットを殴った。



「ちょっと?」

「うるさいっ!」



 子供が1番初めに習う魔法を、果たして「ちょっと下手」で済ませて良いものか。

医師は驚きを隠しもせず、終いには憐れんだ目で肩を叩いた。

 まあ、笑えない話である。

 本来必要な魔力の50倍の量を込めて失敗し、魔力が足りなくなったのだ。

致命的と言えよう。



「内容がファイヤーボールだったから、すぐ魔力も戻ったんだろうね」

「うう゛」

「とにかく、命に別状がなくて良かったじゃないか」

「ちくしょおぉ~っ」

「こら。女の子がそんな汚い言葉を使うんじゃない」



 短剣使いのリーザ、またの名を「宝の持ち腐れうさぎ」

 彼女が泣き止み、診療所を出たのは、それから1時間後だった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 あ~っ、ふかふかベッド最高。

 今なら1日寝られる気がする。



「ハルト、いつまでそうしている気だ」

「ん~ごめん。あとちょっと」

「それは30分前にも聞いた」

「ちっ」



 仕方ない、起きるか。お腹も空いてきた頃だし。 

 節約のため屋台か自炊がメインだが、今日はクロのご機嫌取りを兼ねて、宿の夕食を予約した。

1泊銀貨3枚。夕食付きでプラス銀貨1枚。

くうぅっ。買い食いだったら銅貨5枚で済んだのに!



「よし、ご飯食べに行こう」

「メシか!」

「宿のご飯だから、いつもより豪華だぞ。たぶん」

「何をボサっとしておる。早く行くぞ!」



 食べるの好きだねー。美味しいものあげるって言われても、絶対ついて行くなよ。

信じてるからな。



 宿の女将さんに声をかけると、10分も待たずに熱々の料理が出てきた。



「「おお~っ!」」



 メインは、ビーフシチューだろうか。まあ、()()()なのかは定かではないが。

このスープは何だろう。コーンスープより色が濃くて、カボチャより薄い。

パンも見た目は柔らかそうだ。

ん? サラダがないのか。あまり生野菜は食べない食文化なのかもしれないな。



「はあ~、美味そうな匂い。

いただきます」



 んんっ。

 うっまい!!


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