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無気力転生者の怠惰な暮らし  作者: ふぇりちた
無気力転生者、村を出る
1/18

プロローグ


 

 王都の片隅にひっそり佇む屋敷。

 家主を失ってから200年余り。人々はその屋敷をこう呼んだ。

『賢者サファリンの遺産(おくりもの)』と。






────────

─────

───





「陛下! こちらをご覧下さい!」



 3ヶ月後に、建国400年の式典を控えたグロウリア王国の中枢は、慌ただしかった。

 隣国との打ち合わせを終え、グロウリア王が一息つこうとしたその時、入室の許可も待たずに扉は開けられる。

 


「何事だ、ローゼン」

「賢者のっ、賢者の後継者が現れました!」

「………なんだ、まだおったのか。その様な御伽噺を信じるペテン師が」



 200年前に他界した変わり者の賢者、サファリン。

 彼は生涯でたった3人しか弟子を取らなかった。

いずれも大成し、後世に名を遺す偉人となったが、彼等は知識と技術だけを後継するに(とど)まった。

 サファリンとその弟子達が、叡智の結晶だと言った屋敷。そしてサファリンが書き記したとされる、沢山の書物。

それらはまだ、誰も継承する事なく、誰も触れる事なく、ただ静かに新たな主人を待っている。


───『いつか私の全てを継ぐ者が証を持って現れるだろう。証は最も尊きお方に預けた。

全てを継ぐ者よ、それを持って王を訪ねるといい。君の助けになるだろう』───


 サファリンの遺言は、弟子達によって国内外に広められ、我こそはと名乗る人々によって、王都は溢れかえったという。

 やがて挑戦者は減り、50年もすれば人気の寝物語として語られる様になっていった。

 今では、年に1人2人居るか居ないかのペースである。



「いいえ、陛下っ。ペテン師と決め付けるには、時期尚早かと! こちらをご覧下さい」

「何を……───っ?!

馬鹿なっ、これは王家の印章ではないか! まさか本当に実在したのか。賢者サファリンを継ぐ者が」

「ええ。俄には信じ難いですが、王家の印章は代々の王のみが継承する物です。複製など不可能。つまり──200年を経て、あの屋敷が開放されるかもしれません」



 父であり、先代のグロウリア王でさえ信じていなかったというのに、まさか自分の代で。

 グロウリア王は逸る鼓動をそのままに立ち上がった。



「良かろう。偽物であったとしても、この書簡は見逃せまい。

その者を()()()()()。但し、見届け人として騎士を同行させる様に」

「承知しました。では、第2騎士団長を同行させましょう。彼は、信じる派でしたからね。賢者の御伽噺(ゆいごん)を」

「なるほど。適任というわけだな」








 立派な馬車に揺られながら、ハルトは緊張していた。

 明らかに身分の高そうな騎士に、道中ずっと見られているからである。


 目的地に着くと、騎士は興奮した様子で声をかけてきた。



「でっでは、入ってみてくれ!」

「あ、いいんすか。……じゃあ失礼して」



 どんよりした古い洋館の門に手をかければ、あっさりと開いた。

むしろ重みを感じなかった事に、彼は首を傾げる。


 

「門が……開かずの門が開いたっ」



 ハルトは思った。騎士のこの驚き様からして、もしや幽霊屋敷の類いではないかと。



「? そりゃ門ですからね。見た目程、錆び付いてもないですし」

「違うぞ! この門は幾多の人を払い退けてきた、伝説の様な物なのだっ」




「………やっぱ要らないので帰って良いでしょうか」

「出来るか、馬鹿者っ!」

「え~」




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