10章 出題者のり子、その景品は?-リンダの証言
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
【被害者の元マネージャー・リンダの証言】
ええそうよ。確かにあたしはトーマスのマネージャーだった頃から彼と浮気していたの。でも彼とあたしは火遊びなんかじゃなく真剣に愛し合っていたし、奥さんには離婚を切り出しているからと言ってくれていたのよ。不倫を始めてもう5年近くなるかしら…不倫して3年目の頃に不倫報道がテレビで流れたの。だけどそれでも良かった、奥さんに訴えられたらあたしが慰謝料を払ってでもトーマスと別れさせる気だった。それなのにあの女はいつまで経っても別れる気はなさそうなの、きっとトーマスとあたしを意地でもくっつけさせない気なのね。同じ女のあたしはそう直感したわ。
彼が殺された日のこと?その日は自宅で遅めの昼食を食べてから、シャワーを浴びて14時頃少し早めに着くように車で家を出たわよ。今日は同窓会で妻が夜までいないからとトーマスの家に16時に呼ばれていたからね。そして18時すぎまで一緒にいました、あたしはやっぱりトーマスに愛されている。彼と会っている間、その実感を得られることが何よりの幸せだったわ。
彼の寝室のテーブルに週刊誌が置いてあったでしょ、先週発売されたやつ。アレあたしが持って行ったのよ、"現マネージャーと怪しい関係!?夜道を歩く俳優と女"っていう見出しが気になってね。その報道の次の日にマネージャーさんがすぐ各社にFAXして、ただ仕事の打ち合わせをしてただけで誤解ですってコメントを発表していたけど信じられなくて。
「彼女の言う通りただ次のドラマの撮影日程を歩きながら打ち合わせていただけ、俺が愛しているのは君だけさ。」
そうトーマスはあたしに囁いてくれたわ。
暖房?アタシが行ったときはすでにつけられて部屋は暖かかったわよ?当り前じゃないの、じゃなきゃ寒くていられないわ。普通にピーって音がして、ちょっとしたら温風が出てきたから普通に動いてたわ。
18時すぎにトーマスの家を出て、そのあと隣町のホテルのレストランで会社の同僚と夕食を食べていたわ。割引クーポンの期限が切れそうだからって携帯電話に連絡が入ったの。ちょうどお腹もすいてたしオッケーしてすぐ向かったわ。20時に店に入って、少し経ってからコース料理開始。その後も同僚とラウンジでおしゃべりしていたわ、あたしは次の日お休みだったから時間は気にしなくてよかったし。
そうしたら警察の人から連絡がきてもうびっくり、つい数時間前まで元気だったのに…。
・その後の調査でリンダの行ったホテルのレストランは監視カメラがついており、ラウンジで話し込む姿まで映っていた。トイレには数回立ったようだが、いずれも5分もせず同僚の前に戻ってきていた。
・この時期のドイツは夕方16時頃には気温が0℃前後になってしまうため、リンダの言う通りトーマスが暖房をつけていたのは当たり前のことだ。
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