10章 出題者のり子、その景品は?-アンの証言
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
【被害者トーマスの妻・アンの証言】
私はその日、朝から友人の家に行きました。16時から同窓会がありましたから、お友達とショッピングとランチを楽しみ、早めに会場に行きました。同窓会の話は…別にいらないですわね。
20時すぎに解散になって、私は自分の車で自宅へ向かいました。ただその途中でセルフのガソリンスタンドによりまして、そこでお手洗いを借りました。ちょうど同窓会で連絡先を交換した級友からの電話がかかってきたりして、思い出話なんかもして結構長く居たかしらね?
家に入ってからのことはさっき話した通りですわ、警察の方からまだ犯人が隠れているかもしれないから、家の外に出て待機するように言われて自分の車で暖房をかけて待っていました。もちろん、現場や彼には触っていませんわ。電気のスイッチやドアノブくらいは触りましたけどね、そりゃ自分の家ですし素手ですわ。
彼の浮気については承知しておりました。とくに数年前にマスコミに発表されたマネージャーとの関係は、報道される前から気づいていました。ちょうど息子たちが出ていったのもあって、そんな彼と同じ寝室なのが気持ち悪くて部屋を分けたのです。凝りもせず、今のマネージャーともうわさが出たりしていましたけどね。
彼の方から私に離婚を切り出していたという報道もありましたが、事実ですわ。でも私は別れる気なんてなかった。なぜって、"浮気した男の望みが離婚なら、その望みは一生叶えさせない"ことが私なりの仕返しでしたから。それに世間は浮気を許した寛大な妻として私をもてはやしてくれるし、彼もファンの多い売れっ子俳優。離婚騒動でイメージダウンでもしたら私も彼も共倒れ…だから浮気は事実だが私は彼を信じていると記者会見し、私は努めて良い妻を演じていました。
彼なりに申し訳ない気持ちがあったのかしらね。生活費も私が無駄使いしたって余るくらい入れてくれたし、離婚するときは弁護士費用を含め慰謝料は30%上乗せするとも言ってくれましたわ。私は浮気男の言いなりになんかなりたくないから、離婚する気もなかったしお金だって必要な金額以外は貯金しました。
そりゃ憎んでいなかったと言えばうそになりますよ、二人の息子の手が離れようやく夫婦の時間だたと思ったら浮気という最低の形で裏切られたんですから。疑われて当然ですよね、でも刑事さん?
もし私が犯人だというのなら、凶器はどこへやったのかしら?自分の家の包丁を使うなんて、まず真っ先に疑われるのはこの家に住んでいる私。それに私は車の中でずっと待っていましたよ、まぁカメラとかで撮影してたわけではないから、証明はできませんけどね。
その後の警察の捜査で彼女の寄ったガソリンスタンドは監視カメラが故障中だったことが分かり、これでは完璧なアリバイにはならない。ただし彼女の車はガソリンが満タン近くあり、旧友との電話も20時40分~21時20分通話記録が確認されている。
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22/12/14 誤字脱字を訂正。