10章 出題者のり子、その景品は?-5
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
22/12/05 10:20 事務所
「次は事件の詳細よ。」
【警察が容疑者を3人に絞った理由】
・玄関を含めた窓などの出入り口はすべて鍵がかかっており、金品も盗まれていない。
・この日トーマス邸に出入りしたのが、足跡などからこの3人に絞られた。
・寝室に飾られている夫婦写真が割られていたことが判明したことで、夫婦もしくは被害者に恨みを持つ者の疑いが強い。
・彼の長男は病院に入院中、次男は一日中会社にいたことが判明している。
【第一発見者 アンが語る現場の状況】
私が22時頃帰って来た時、家の電気はすべて消えていて玄関も鍵が締まっていました。でも夫の車はありましたから、きっと暗くなる前に居眠りでもしたのだろうと思いました。まずリビングに行きましたが寒くて暗くて、ここにはいないと直感しました。その次に書斎にいきましたが同じでした。最後に彼の寝室へ行きました、子供たちがそれぞれ社会人になってからは部屋が余ったので寝室を分けていたんです。彼は俳優で生活リズムがバラバラでしたから、お互いに気を使った結果です。
寝室に入ったとき、ほんのり他の部屋より暖かいなと感じました。暖房は消えていたけれど晴れていたから、お昼間の太陽の温かさが残っていたのかしら?ともかく月明かりの中、毛布をかぶった彼の姿がベッドにありました。ところが、今帰りましたよと声をかけても返事がありません。彼は自分が出演する番組を必ずチェックするクセがあり、この日はもうその番組が始まっている時間でした。あとでなんで起こさなかったんだと不機嫌になると思って、電気をつけつつ近づくとシーツが真っ赤だったんです!私は大声で悲鳴をあげて、それなのに彼はピクリともしなくて…これは大変だと思ってすぐ警察とレスキューに電話したんです。
暖房のコンセントは部屋の奥にあり、本棚の後ろにあるんです。リモコンでONを押してもつかないなと思ったらコンセントから電源コードが抜けていました。他に気になったところは…彼は今日、ナーシャが次の作品の台本を届けにくると言っていたのに、それらしきものがなかったのは気づきました。いつもは新しい台本が届くと、脱衣所や寝室にまで持ち込んで読む人でしたから。その代わり、先週のスキャンダル記事が載った雑誌はテーブルの上にありましたけど。
あと本棚の足元が少しだけ濡れていました。何かの本を探しながら水でもこぼしたのかしら…彼は冬場は喉が渇くのを嫌って必ずお水とコップを常備していました。俳優という職業柄、声が出ないのは仕事に差し支えるからと。本棚の前に彼のキーホルダー付き車の鍵が落ちていたから、それを踏んで驚いてこぼしてしまったのかしら?
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