10章 出題者のり子、その景品は?-1
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
22/12/05 8:30 のり子自宅
9時営業開始に変更になった事務所へそろそろ出発する時間である。だがのり子は自宅の戸締りを確認しながら、とあることを企んでいた。
(なんか最近、毎回なぞなぞ系は雅樹くんがクリアするのよね。まぁ彼の得意分野だから当然っちゃ当然なんだけど、ここら辺で一回ギャフンと言わせたいわね。)
恐らく愛里と合流とした日に2連続で負けたことも根に持っているのだろう、今回はそんなのり子の逆襲計画である。
22/12/05 9:15 事務所
いつものようにパソコン前に座ってネットニュースで情報収集の忠司、彼は今日マダムとのスポーツジム同伴が13時から入っている。雅樹はと言えば、年末年始に向けて忠司の隣で資料整理を任され奮闘している真っ最中である。普段パソコンへの記録や収支情報の打ち込みを一手に担当している忠司と電話応対や受付業務を一手に引き受けているのり子と違い、雅樹には決まった担当がないためとりあえず何か作業があるときはまず雅樹が始めることになっている。便利屋内の便利屋、つまり雑用係である。
そんな二人にのり子がにんまり笑いながら近づき、お二人さんちょっといいかしらと声をかける。よほど勘のニブい人間でなければ、まず何かを察するだろう。案の定雅樹が声をあげる。
「なんですか、オレ今忙しいんですよ。それに領収書とかレシートとか小さいし、無くならないように依頼書と貼り合わせるの大変なんですから。」
「そんなもの、依頼終わったら『貼ってから』保管すればいいだけでしょ。毎回無造作に保管箱に突っ込むからそうなるのよ。」
のり子は飽きれながら正論で反撃するが、雅樹は言葉半分にしか聞いておらず作業に必死だ。忠司が代わりに声をかける。
「なんだ川島田、ニヤニヤ笑って。どうせ何か企んでるんだろ。」
「ピンポーン、さすが"所長"は鋭いわね。マダムのご依頼も午後からみたいだし、なぞなぞ対決やりましょうよ。」
昼飯が景品なら俺はパス、と忠司はすかさず拒否。最近のマダムはジム後に食事もごちそうしてくれるということで、わざわざ勝負に参加する必要はない。雅樹も手を付けた作業をできるだけ早く終わらせたいため、また暇なときにと言い珍しく乗り気ではなかった。
「なによつまんないわねー、でもいいのかしら?今回の景品は"合コン参加権"よ?」
「合コン?!」
雅樹が大きな声を出し、パッと顔をあげてのり子を見る。
「そうよ、昨日の夜に西城さんから連絡があってね。西城さんの知人が合コンを開くんだけど、どうも乗り気じゃないらしく自分の身代わりに男性を一人出せないかって。つまり勝った方がその合コンに参戦できるってワケ。」
以前から彼女がほしいと騒ぎ立てている雅樹のことだ、食いつくに決まっている。こういうところでのり子の計算高さが発揮されるのである。
「景品が合コンとなれば参加しますよ!忠司さんもオレのためにこの挑戦、受けてくださいよ!ハイ決まり。」
案の定、雅樹はさっきの態度とは打って変わって参加表明をした。忠司は雅樹の勢いに負け、仕方ないといいつつ参加することになった。
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※西城はもちろん7章に登場した愛里ちゃんのお父さん、西城正俊さんのことです。