9章 デジタル金庫の真相-6
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/11/25 11:45
しかし金庫からの反応はない。雅樹がじれて取っ手に手をかけるが、ビクともしない。和子夫人によるといつも彰人氏が金庫を開けるとき、ガチャンと廊下にも聞こえるほど大きな音がしていたようなので雅樹渾身の閃きもハズレのようである。
「ハズレかよ、これだと思ったのにな。」
ガッカリなのは他3人も同じである。
「一度休憩にしましょうか、皆さんにお出ししようと思って今日は多めに昼食を作りましたの。召し上がっていって。」
和子夫人がそう言いキッチンへ向かうと、のり子がアタシも手伝いますと言い後をついていった。
おそらくだが、と前置きし忠司が口を開く。
「雅樹の発想は間違ってはいない。あの画像の12時の妙な位置にある小さな丸、あれと組み合わせて記号が成り立つアルファベットは℃くらいだ。なんだろうな…さっきから俺が引っかかるのは、アルファベットがなぜ10時でスタートしていることなんだ。」
雅樹は実はオレもと相槌を打つ。
「普通は頂点の12時から時計回りにABC…としますよね。別に℃にしたいならその並びにして2時のところにあの小さな丸をつければ良いだけですし。10時の位置からアルファベットがスタートしていることに何か意味があるんでしょうか?」
一方お手伝いについてきたのり子は、和子夫人に頼まれてテーブルを拭いたり食器を並べたりしていた。和子夫人がビーフシチューを作ってくれていたのである。火をつけ温まってくると湯気が立ち、食欲をそそる良い匂いがあたりに漂う。
暖房も入れるように頼まれてのり子が空調のリモコンを押すも反応しない、何度かスイッチを押してようやく電源が入った。温度表示の文字がかすれているし、恐らくリモコンの電池が切れかかっているのであろう。めっちゃいい匂いすると言いながら男性陣がやってきたところで、のり子は雅樹に一つお願いする。
「八重島さんか雅樹くん、どっちでもいいんだけど帰る前に電池買ってきて。空調のリモコンの電池が切れかかってるみたいなのよ、アタシは食事の後片付けを手伝うつもりでいるから。お昼まで用意してくださってるのに知らんぷりはできないでしょ?」
のり子の言葉に忠司がうなずく。
「いいだろう、俺が行こう。ちょうどコンビニのコピー機でさっきの画像を印刷したいと思っていたところだ。画像を見るためにいちいちスマホを取り出すのが面倒くさくてな。」
そんな二人のやり取りを聞きながら、しげしげと電池の切れかかった空調のリモコンを眺める雅樹だった。




