9章 デジタル金庫の真相-5
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/11/25 10:10 世田谷区 菊地さん宅
先日とは逆に、居間に通された3人に和子夫人がコーヒーを出した。その香りにのり子が反応する。
「うーん、なんか挽きたてって感じのすごい良い香り~。」
思わず口にすると、和子夫人がそうでしょうと答える。
「夫は役員でしたので、ディスプレイに使った機械なんかを引き取ったりしてきて。これは最新のやつより一つ前のコーヒーメーカーですけれど、十分おいしいですわ。」
引き続きのり子が夫人と話を続ける。
「ところで、すごい偶然というか運命ですね。菊地さんが菊池電機だなんて。地と池が違うことに気づくのに少し時間かかりました。」
「主人は大変だと言ってましたけどね、何せ役員・社員・果てはパートさんまでキクチって苗字が多かったみたいで。誰を呼んでるのか分からなくなるーって、社内メールもよく間違えがあったみたいよ。」
夫人が話し終えてから、雅樹が切り出す。
「ところで奥さん金庫の件ですが、あのあとオレたちも考えてみましたがどうにもヒントが少ないというか。何かこう彰人さんが言ってたこと、思い出せませんか?些細なことでもいいので。」
そう言われてもねぇ…と少し黙った夫人だが、一つだけ気になっていることがあるという。
「『俺と一緒に暮らしているお前ならいつか閃くかもしれないな』と言われました。何のことやらさっぱり…。時計はアナログ式ってことくらいかしらね、他にこだわっているようなものもなかったですわ。」
時計、時計ねぇ…壁にかかった一際大きなアナログ時計を見ながらのり子がつぶやく。すると彼女はあることに気が付いた。
「ねえ、あのパソコンの画像。12時を指していてちょうど針が重なっていたじゃない?たぶん針の下に何か文字が書いてあるのよ、小さい丸も見えてたでしょ?」
忠司がいつの間にか自分のスマホに転送していたようで、その画像を開きみんなの前で見せる。
「まぁ確かに、重なった針の左上に小さい丸のようなものが…。だがこれが一体?」
次に二人の会話から閃いたのは、雅樹である。
「分かった!10時のAから順番に、時計回りにアルファベットを当てるんですよ。デジタル時計は勝手に数字が切り替わるが、アナログ時計は時計回りに針が動く。そういうことなんだ、それを当てはめるとこうなりますよね?」
⑩⑪⑫①②③④⑤⑥⑦⑧⑨
ABCDEFGHIJKL
引き続き雅樹が言う。
「これなら10時がAで4時がGなのも辻褄が合う。そしてあの位置の小さな丸の位置はCにつく、つまり温度を表す記号 ℃ になるんだ!冷蔵庫やエアコンを扱う電機メーカーだ、℃の記号は入力候補にあるはず。さっそく入力しましょう。」
一行は故・彰人氏の仕事部屋へ行くとそこに金庫はあった、確かになかなかの大きさである。そして雅樹がはやる気持ちでパスワードを入れる。
「O3-℃ …これでどうだ?!」
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後に改行)➤過去投稿分も一斉手直し完了。
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