9章 デジタル金庫の真相-1
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/11/23 16:30 事務所
依頼から帰ってきた男性陣二人、このシーズンは冬のボーナス時期に合わせ家具を買い替える人が増える時期だ。それぞれ別の家だが、テレビや冷蔵庫の運び出しに駆り出されていた二人が帰ってきた。そんな二人に声をかけるのり子。
「今日、警部さんからの依頼があるわよ。さっき連絡があったから。」
17:30
のり子の宣言通り、警部はやってきた。いつものようにのり子が来客用ソファに座る警部にお茶を出し、反対側に3人が揃って座ると警部が話を切り出した。
「今回も例によって情報を漏らさぬよう頼みたいんだが、世田谷区で財産狙いの殺人事件が起きてな。被害者は菊地彰人さん76歳の資産家で、この人は昔自分が大金を預けていた銀行が潰れて一部しか預金が返却されなかったことがあって以来、銀行嫌いで有名な人だった。もちろんご近所でも多額の現金を自宅に持っているとみんなが噂していた。」
「この前みたく、その犯人は誰かってことですね?よっしゃーまたオレの手柄にしちゃいますよ!」
雅樹が意気込むが警部は首を振る。
「いや殺人の件は解決済みだ。彼の孫が犯人でな、彰人さんの持つ金を奪おうとミリタリーナイフで刺し殺したんだ。彼は外部犯に見せかけようと外から窓を割ったり自分と違うサイズの靴で足跡を付けたりと偽装工作をしたようだが、結局聞き込みや道路に設置してある見守りカメラなどの情報から孫が浮上。凶器の購入ルートなども割り出され観念して自白したってわけだ。」
それを聞き今度はのり子が不思議そうに聞く。
「あら、事件は解決してるじゃないですか。じゃあ何なんですか、アタシ達に頼みたい件があるって言ってたのは?」
「君たちに解決してほしいのは、彼が所持していた金庫だ。捜査の過程で脱税していた疑いも出てきたため、金庫の中も調べたいのだがパスワードがどこにも書いていない。突然殺されてしまったため当然遺書が用意してあるはずもなく、彼の奥さんやお子さん夫妻も何も聞かされていないんだ。脱税しているとすれば、ごまかした帳簿や領収書の類も金庫に入っていそうなんだが、どうにも困ってな。そこで君たちの出番ってわけだ。」
「なんだ殺人事件じゃないんですか、がっかりだなー。」
露骨に肩を落とす雅樹。
「まぁかかわる事件が殺人ばっかりで、もはやアイツらが死神だ!なんて言われても困るけどな。」
忠司が肩をすくめながら言った、殺人よりは暗号解きの方が気負わず楽なのだろう。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後に改行)
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